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黒の章  作者: 叢雲ルカ
第2章
19/26

大罪の対価⑧

 ニカとロウ、そしてレンが街中を歩いていた。

「所長、大丈夫ですかね?」

「大丈夫。ルイがいるから」

「まあ、そうですが、あの落ち込みようは多分、過去に関係があると思いまして」

「あのー、所長に何があったのですか?」

「ニカさんは、私達がどうしてここにいるか知らなかったのでしたね」

「うん。ザン先生は所長が死神を殺したって言っていましたが」

「正確には幇助、手助けをしたのです。昔付き合っていた男の方に、私達は全員罪人です。償いようのない過ちを私達はしました」

「そんな。あのー、何をしたか聞いていいですか?」

「私は構いませんよ」

 3人は喫茶店に入り、飲み物を頼んだ。

 レンは又、ゲームを始めていた。

「レンさんは?」

 ロウはレンの姿を見て苦笑いを浮かべた。

「嫌だ」

 レンは表情に表さなかったが、機嫌が悪かった。

「だ。そうです」

「はあ」

 ニカはレンに聞く事を諦めた。

「さて、私ですが、作戦を無視して、隊を全滅させました」

「そっ、そんな」

「私1人で隊を何とかなる作戦では元々無かった。作戦自体が不当な物でしたから、しかし、執行機関は体裁を保つ為、私に全ての罪を被せたのです」

「そんな酷い。でも、何で無視したんですか?」

「死ぬのが怖かったからです。先程言いましたけど、隊を全滅に追い込む程の任務でした。そんな任務を受けて死ぬのが嫌だった。元々、戦うより家事をしていく方が好きでしたから」

「そして、私はアンダーグラウンドの配属が決まりました。事実上の死刑です。死神の盾となれ、そう言われました」

「でも、何で」

「ルイさんのお陰ですよ」

「先輩の?」

「ええ、ここに着た理由を話す前にルイさんとの出会いを話す必要がありますね」

「そー言えば、先輩、ずっとあの事務所にいたって聞いてます」

「ええ、ちなみに私は元Bランク死神です」

 ウェイターがコーヒーと一緒に、サンドイッチが運ばれて来た。

 レンが頼んだのだようだ。レンはゲームをやりながら、黙々とサンドイッチを食べた。

「やっぱり、ランクが違いますが、どうやって出会ったんです?」

「そこの噴水公園ですよ」

「えっ?」

「今でも可笑しな巡り合わせだと、笑ってしまいますよ」

「そうなの」

「ええ、私はあそこで悩んでいました。私は見た目これですが、昔から戦いが嫌いで家事が好きでしたから。でも見た目のせいで、最前に立たされました。それで悩んでいる時にルイさんに出会いました。ルイさんはゴミを拾っていたのですが、私の目の前で倒れましてね」

「たっ、倒れた! 何で?」

「話しを聞くと、ルイさん食べていなかったみたいなのです」

『大丈夫ですか?』

 ロウの目の前で倒れていたルイを心配して声をかけた。

『お腹減ったよ』

 ルイのお腹が鳴りだした。

『はあ』

 ロウは吐息を漏らした。

「何で?」

「リフィル所長の前の所長がとてもダメな死神でしてね。いえ、決して悪い人では無いのですが、賭事や豪遊を繰り返していた死神で、給料日や事務所の経費を配給前に、全て使い、ルイさんのお金も使ったみたい何です」

「あはははっ、そりゃ先輩が可哀想だわ」

 ニカは苦笑いをした。

「レンさんは、私が来る前にいましたが、大丈夫でしたか?」

「逃げた」

「そうでしたか、それで野垂れ死にそうになった所で私に出会ったのです」

『うーん。美味い』

 ロウの作ったお弁当に下包みをうっていた。

『本当に大した事無いのですが、良かったのですか?』

『うん。いい。3日振りの飯で、それが、これで生き返った~最高だよ。ありがとう。あっ、名前まだ名乗って無かったな。俺の名前はルイ。Fランク死神だ。ここで掃除してた』

『私はロウ。一応Bランクです』

『そうか、死神だったか。ロウね。しかも上司だし、悪いな。弁当食っちまって』

『いえ、いいんです。私はあまり上下関係を気にしませんから』

『そうか、それはありがたい。しかし、これ、めちゃ美味いけど、手作りか?』

『はい。私、戦うより家事をするのが好き何です』

『へー。凄いな』

『笑わないのですか?』

『何で?』

『こんな体に顔をしているんですよ』

『関係無いよ。好き何だろう? 堂々とすりゃいい。俺は美味い飯が食えただけで幸せだしな』

 ルイはお弁当を残さず、キレイに食べた。

『うーん。美味かったご馳走様。いやー、一時はどうなるかと思ったよ。地獄に仏ってこの事を言うんだな。いやさ、ウチの所長が俺の金全部使ってさ』

『それは災難でしたね』

『初めはそう思ったけど、そうでも無くなったよ。ロウの飯が食えたしな』

 ルイは満面の笑みを浮かべる。

『そこまで喜んで頂けるなら、晩御飯も作りましょうか?』

『えっ、いいのか?』

『ええ、給料日は明日でしょう? それに心から喜んで頂けるのなら、私はそれで幸せです』

『やりぃ。ありがたい。ロウ、お前、いい奴だな』

 ルイは握手を求め、ロウはそれに答え、握手した。

『そう言って貰えると、私も嬉しくなります。ルイさん何が食べたいですか?』

『ルイでいいよ。えーとね。オムレツかカレーか、あっ、鶏の唐揚げも捨てがたいな』

『分かりました。任せて下さい』

 ロウは立ち上がった。

『おう、任せた。俺、もうしばらく、この辺掃除するから、準備出来たらこれに連絡してくれ』

 ルイは死神手帳に携帯の電話番号を左手で書き、ロウに渡した。

『分かりました』

『んじゃあ、宜しく頼むよ』

 ルイは手を振り、その場を後にした。

「それが出会いです」

「確かに可笑しいかも、あっ、でも先輩らしい。それでここの配属とどう関係があるんです?」

「この1週間後に私は命令を無視しました。公園で悩んでいたのは、そんな理由からです。ルイさんとは、あの夜以来会っていなかったのですが、意外な所で、再会しました」

『本当にありがとうな。晩御飯だけじゃなく、朝食まで貰っちゃって』

 ルイはロウの家で晩御飯を食べ、明日の朝食用のお弁当貰っていた。

『いえ、いいんです。久しぶりに私も楽しみましたから』

『そうか、なら、これは遠慮しないで貰うよ。ロウ。この恩はずっと忘れない』

『恩だ何て、大袈裟です』

『大袈裟なもんか、俺は救われたんだぞ。ロウ。運が良かったら、又、会おう。そん時、俺はこの受けた恩を返すから、絶対に、だから忘れるなよ』

『はい。分かりました』

 ルイの言葉を素直に聞き、ロウはルイを見送った。

 それから10日後、ルイとロウは再会を果たす。

 ロウは取締委員の決定を聞き、絶望していた所であった。

 決定が執行されるまでの間、ロウは牢屋に幽閉され、時を待っていた。

『おい、出ろ』

 牢屋の見張り言われ、ロウは出る。

 ロウに面会人が来た、勿論覚えの無い面会である。

 何せ仲間は全員消滅して、会ってくれる友も仲間もいない、だが、間違いだとすぐ気付いた。

『よう。ロウ』

 ルイが軽く挨拶をする。

『ルイさん』

 ロウが驚いたのは言うまでもない。

『だから、ルイでいいから』

 呼び捨てを希望しても、ロウはつい『さん』を付けてしまった。

 その癖は未だに抜けていない。

『まあ、いいや』

 ロウとルイは席に着いた。

 ロウとルイの腕には、プロテクターを付けられていた。

 この中で暴れて貰っては困るので、武器や特技を使えなくしていた。

『どうしてルイさんがここに? それにここは、Fランク死神は出入りが禁止されているはず』

 下位の死神が足を運べない場所は多い、この牢獄もそうであった。

『まあ、伝手を利用したんだ。気にしないでくれ』

『伝手、ですか?』

(どんな伝手でしょう)

 この時、ロウはまだ、ルイの正体を知らなかった。

 ロウは腑に落ちないまま、ルイが話しを続けた。

『ロウ。ミスったんだって?』

『ええ、でも、私は納得していません。あの命令もこの罰も』

『島流しを食らったんだもんな。だが、逃げ出したのも事実だろう?』

『はい。怖くなりまして、死にたく無かった……』

『ふうん。そうか』

『ルイさん。私は死ぬのは嫌です。可笑しくありませんか? 死神だって心はあります。なのに命を無駄にするはどうでしょう?』

『そうだな』

 ルイはタバコをくわえ、火を点けた。

『まあ、ルイさんに言ってもしょうがありませんよね。私はこのまま』

『なあ、ロウ。俺がどうしてここに来たか分かるか?』

『いいえ』

『再会を果たしたら、恩を返すとも言った。まあ、これで恩が返せるとは到底思えないけどよ』

 ルイはロウに紙切れを渡した。

『これは?』

『誓約書だ。俺はロウを失いたく無い。あの飯、本当に美味かったんだ。又、食いたいんだが、このままじゃいなくなるだろう。俺はそれが惜しいんだ。だから、誘いに来た』

 それは1枚の誓約書。ルイはFランクに誘い入れようとしていた。

『そうでしたか、しかし、これ1枚で覆す事が可能なのですか?』

『ああ、可能だよ。そんな細かい事は気にするな』

(全然、細かく無いのですが、寧ろ1番重要な所なのでは?)

 見張りもこの事をほっとく事が出来ず、ルイを睨んでいた。

『最もこれは今の地位を全て捨てる事になる。名声もプライドも全て傷付き後ろ指指されるだろう。それでもいいならこれにサインをして欲しいんだ。ん? どうした、ロウ?』

 ロウは呆然と誓約書を見ていた。

『ああ、はい。ルイさん質問してもいいてすか?』

『ああ、構わねーけど』

『Fランクの配属になったら、料理してもいいですか?』

『ああ、いいよ。俺の為に作って欲しい。ついでに財布も握ってくれ』

『掃除は?』

『それも自由だ。ってか、俺からも頼みたい掃除してくれ。ウチの事務所、ズボラな連中しかいなくってな。掃除出来ない野郎しかいないんだ。んで、どうする?』

『ルイさん。是非お願いします』

 ロウは立ち上がり、お辞儀した。

『えっ、いいのか?』

『ええ、私に打ってつけの場所です。奉仕活動もするんでしょう?』

『まあな』

『Bランクなんかにいるよりずっといい。ああ、まさか、公園で出会った縁がこんな形になるなんて、ルイさん。ありがとうございます!』

『そこまで喜ぶとは思わなかったな』

『サインすればいいのですよね』

『ああ、してくれ』

 ロウは誓約書にサインをして、この瞬間に、ロウはFランクの配属に決まった。

 ロウがニカに話したのはここまでで、あえて話さなかったが、この後、誓約書にサインをしたのと同時に、死神の取締り委員がやって来て、ルイに職務質問を受けていた。

『本当に大丈夫何ですね』

『ああ、大船に乗ったつもりでいてくれ、こう言う時に権力は使う物だからな』

『ルイさん本当に何者ですか?』

『ああ、俺はな……』

 ルイが言いかけた時、取締役がやって来て、ルイに話しかけた。

『名前と死神ランクは?』

『ルイでSランクだ』

 そう言い、ルイは死神手帳を見せた。

『こっ、これは……申し訳ありません。ルイ様』

 目を大きくして手帳を見ると、二人の見張りと2人の取締委員は同時に頭を下げた。

『別にいいよ。気にして無いから』

 気にするのはロウである。

『ルイさん!!』

『ああ、隠していて悪かったな。もう誓約書にサインしたからいいな。俺は訳あってFランクにいるんだ』

 途中から周りに聞こえないよう、ロウの耳元で話した。

『じゃあ、私に嘘を付いたのですか?』

『いや、公にはFランクだ。Fランクの死神手帳も持ってる。でも、ロウを救う為だ。受けた恩を仇で返す程、俺も腐って無いよ。まあ、騙していた事には変わらんか、悪かったな』

『いえ、構いませんが』

 ロウはルイのようなSランク死神を見て、少し拍子抜けした。

 Sランク死神のイメージは、もっと厳格で真面目で冷たいイメージがあるからだ。

 しかし、目の前のルイを見て、少し安心した。

 執行機関は腐っていても、心のある上司がいたからだ。

「って、先輩って本当に何者何ですか?」

「ルイさんから聞いていないんですか?」

「聞いたよ。Sランクの死神だーって、嘘を付いてた。つくならもっといい嘘あるでしょう?」

「はあ」

 ロウは答える方法が見つからず困り果て、レンを見る。

 レンはサンドイッチだけでは物足りなかったのか、メニューを開きウェイターに頼んでいた。

「……ルイ、分からない」

「レンさんもそう思いますか?」

「うん」

「レンさん……」

 ロウはため息をした。

「真実。考えている事は分からない。あの人の正体が分かっても、僕達をそこに置く理由にはならない」

「まあ、そうですけど」

「やっぱり、先輩、私をからかっているんだ。んきぃー許せない!」

「はあ、レンさん」

「僕は嘘付いていない。ルイの胡散臭さは昔と変わらない」

「確かに、そうですけど」

「僕はルイさんの本当の目的が知りたい。それだけ、そして、倒す」

 レンは内に秘めた闘争心を燃やしていた。

「レンさん」

 ロウは困っていた。

「ん? レンさん。どうかしましたか?」

「来る。伏せろ」

 レンに言われ、ロウはとっさに伏せた。

 レンはニカを庇うように伏せ、その同時に、窓ガラスが一気に割れた。

「何々?」

 ニカは訳の分からないまま、混乱していた。

「レンさん」

 それはロウも同じだが、場数を踏んでいる分、ニカより冷静であった。

 レンは目の前まで来ているある物を指差した。

「逃げよう」

「少しは焦って下さい!」

 流石にロウも焦った。

 ロウが目にしたのは、徐々に世界が白銀、クリスタルに変わる姿であった。

 既に店にまでそれが侵食して、店にいた店員がクリスタルに変わり、粉々に砕け散っていた。

 ロウはニカを軽々と背負う。

 レンはいつの間にかバズーカを取り出し、いつの間にか天井に穴を空けていた。

「上から」

「分かりました」

 ロウとレンは軽々と屋根まで飛び、屋根伝いに逃げた。

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