大罪の対価②
ニカが事務所に入って4日目の夕方過ぎ――――
事務所にて。
「所で皆さんはどんな武器を使い、特技があるんですか?」
ニカが各々自由にしていた時に尋ねた。
特技とは死神の特殊能力・必殺技の事である。
武器は死神ごとに違い、自由に創造し作り上げる事により出来る。
武器もそうだが、死神はそれぞれ違った特殊な力、必殺技を持っていた。
パラダイス・ワールドにおいて、人間はあらゆる事が実現する。それが悪質な物でも例外は無い。死神はそれに対抗する為に組織されたが、人間と違い創造した物が現実になる訳では無い。創造で造り出せるのは武器位である。
しかし、人間に対抗出来るのは、武器と特殊能力、そして人間よりも高い身体能力を持っていたからだ。こうして、死神は治安を乱す人間に対抗していた。
「私はランスが武器で、特技は武器を消す事です」
ニカは笑顔で答えた。
「へー、そうですか。私は斧を武器にしています」
と、始めに話したのは、ロウだった。晩御飯の支度をしながら話を聞いている。
ロウは人数分のサラダをテーブルに置くと、満面の笑みを浮かべながら、ニカの目の前で斧を出した。
「へー。特技は?」
「特技ですか? 恥ずかしながら、私は回復術を遣います。傷の手当てなら任して下さい。あっ、でも、なるべくならケガはしないように、健康が1番ですからね」
「そっ、そうですね」
ロウの笑顔にニカも釣られて笑う。
(顔に似合わない特技だ)
ロウのギャップには驚きっぱなしだ。
初めて事務所に足を運んだ時とそれは変わらない。
まだ、あの大きい体と、少し怖い顔に慣れないでいた。
「レンさんは?」
「……僕?」
レンはニカを一瞬見て、又、携帯ゲームをしていた。
ずっとゲームをしていて、話を聞いてなさそうだが、実際聞いていた。
その証拠にニカの目の前で魔法陣を出現させ、ドサッと音を立て、大量に武器を出した。
その音と量にニカは驚いていた。
「……これ」
「これって」
ニカは出てきた大量の武器を見た。銃にナイフ、スタンガンに警棒まである。
「全部使うんですか?」
ニカは半信半疑でレンに聞き返した。
「これ一部。まだ沢山ある」
それ以上は口を開こうとしなかった。
レンは本当に必要以上話そうとはしないし、少し話せば毒舌ではあったが、悪い死神では無いのは分かる。
しかし、割と喋る事が好きな、ニカとは相性が悪かった。
「もう、ちゃんと説明しなきゃ分からないでしょう」
今までルイと追いかけっこをしていたリフィルが言う。
会話の内容は永遠「一緒に映画館行こう?」と、リフィルが誘い。「嫌だ」と、ルイが断る会話であった。
よくも飽きずに続けられると、ニカは呆れていた。
リフィルもレン同様、話しを聞いていないように見えたが、実際は聞いていたようだ。
「レン君の得意な戦法は銃撃戦だけど、特技はこの大量の武器を出し入れ出来る事なの」
実用的かどうかは置いといて、戦いにおいて、武器で困る事は無かった。
「へー。所長は?」
「私の武器は鎌よ。特技は幻術で、惑わすのが得意よ。特に男の子はね」
鎌を出し、頭上で回して見せた。
「へー」
(そりゃ簡単だよな)
リフィルの美しさを見れば、男は大概引っかかる。
例外がルイやこの事務所の面々なのだ。女でもその美しさに目を向けるだろう。
実際、ニカも胸がドキドキおり、リフィルの特技には納得出来た。
「でも、ルイには効かないんだよね。何でだろう?」
リフィルは深く考えていた。その姿も又美しかった。
(ってか、仲間に使うなよ)
こんな呆れる程のアホに、使いたい理由も分からなくは無いが……。
色気と幻術を使い、彼女なりに誘惑しているようだ。
「所で先輩はどうなんですか?」
「あん。何が?」
ソファに座りずっと本を読んでいる。
リフィルに邪魔されながらも、軽い身のこなしで避けていた。見た目以上に身軽な体である。
そんな邪魔者がいなくなり、今は落ち着いて読んでいた。
リフィルと違って、ニカの話しを聞いていない。元より興味が無いようだ。
「特技と武器です!」
「さあな」
ニカが改めて聞いたが、やはり、興味が無く適当に断って、又、本を読んでいた。
「ルイ。いいじゃん。教えて上げなさい」
「面倒くさいなー。俺は複数の特技を使う。何か1つとかは言えないよ」
本のページをめくった。
「へー、珍しい。じゃあ、回復術遣えるんですか?」
ニカはロウの術を聞いて見る。
「威力は大分劣るが、切り傷擦り傷位ならな。まっ、ここにいりゃ、大ケガ何かそうそうしないからな。威力を上げない」
「まあ、確かに。じゃあ、武器を沢山出す事もですか?」
今度はレンだ。
「出来るよ。チェンソー出したり、ドリル出したりしただろう? まあ、必要が無いから、大量に出したりして戦わないが、レンが沢山の武器を出すのはレンに合った戦術があるから、それは俺とは全く違うから必要無いんだ」
「確かに。じゃあ、幻術は?」
「3日前、お前もかかっただろう? 忘れたのか?」
「あっ」
「はあー、お前、本当にバカだな」
「それはすみませんでした。それで武器は何ですか!?」
「さあな」
「教えて上げなさい。減るもんでも無いんだし」
リフィルがまた怒鳴った。
「ああ、うっせえな。ちょっとだけだぞ」
ルイが文句を言いながら、魔法陣が現れゆっくりと武器が出て来た。
「日本刀ですか?」
「ああ、よく分かったな」
「ええ、武器の名前は覚えました」
「そうか」
「抜いていいですか?」
「いいよ。抜ける物ならな」
「へっ?」
全て出来て、ニカが鞘を持つと魔法陣は消え、ニカが自力で持つ形になった。
「これ、重いし、長い」
「そうだよ。何たって六尺あるから」
「えーと、一尺が」
ニカは指を折り計算を始めた。
「180cmちょっとだ。俺の身長に合わせて創ったから、それだけ、重量もある訳」
「先輩、そんな刀使って、戦えるんですか?」
ニカは疑っていた。
「この事務所じゃ戦わないから、そもそも武器その物が必要無いだろう?」
「そー言えば」
「護身用だよ。要は抜けば、相手は怯むんだ。その隙に逃げるなり何なりすればいいんだよ」
ルイはニカが持っていた刀を取り上げ、右手で鞘を持ち、左手で刀をゆっくり抜いた。
「こいつが俺の武器だ」
「キレイ」
その日本刀は刃こぼれ1つ無い、光り輝く刀であった。
ニカはその刀に胸を熱くさせた。




