ファーストステージ⑥
第七地区の公園――――
昼は子供達が遊んでいるが、夜は人間達の無法地帯となる。
今は夜。人間と死神の攻防が繰り広げられていた。
しかし、人間の方が優位で、死神は追い込まれていた。
人間数名に囲まれ、なすすべを無くしたニカは徐々に追い込まれていた。
「先生」
ニカはザンを呼んだが、それ所ではなく、倒れていった仲間の埋め合わせに手一杯だった。
「どうしよう……」
ランスを強く握ったが、とても心細い。
(先輩!)
ルイが来るのを何故か望んだ。
その内人間の1人が、ニカに向かい剣で斬りかかろうとした。
(もう、ダメ)
「竜神一刀流。守の太刀・包囲!」
声がしたかと思えば、バタバタと人間が一気に倒れた。
その人間の間から、日本刀を持ったルイが姿があり、ルイが人間を倒した。
『包囲』と呼ばれる技で、ニカに囲まれた人間達を高速で斬った。
対象の物や人を守る剣技で、その分威力も極端に低い。
その証拠に今にも立ち上がりそうな人間もいたが、ルイが頭を踏み地面にぶつけ、止めの一撃を与えていた。
「ニカ。無事か?」
「先輩。何でここに?」
「お前の先生と戦いたくなったからだ。所長。こっちの人間も頼む」
「はーい」
リフィルは鎌を出し、近くの人間に攻撃して、レンは銃を出し、遠くの人間を攻撃していた。
勿論、急所は外している。
その間ロウは死神の手当てをしている。
「おい、ザン。決闘をしようぜ」
ルイはザンに刃を向け、ザンもルイを見た。
「先輩。今はそんな場合じゃない!」
「知ったこっちゃねーな。俺はあくまで、決闘をする為にここに来たんだ。Bランク死神がどーなろうと、ぶっちゃけどーでもいいが、目の前で死んで貰っちゃ寝覚め悪いから。所長達連れて来た訳。さあ、始めようか」
「いいんだな。俺と戦っても」
ザンがルイに問う。
ザンも人間との交戦を中断して、ルイの所に来た。
「ああ、その為に来たからな。んかし、後悔するなよ」
ルイは刀を鞘に納めザンを見た。
「それはこちらのセリフだ」
ザンは風を纏い、ルイの周りを高速で進み、ルイの周りに風が生まれていた。
「ふうん。風の力か」
ルイは冷静に分析すると、居合いの形を取り、目をゆっくりと瞑った。
「所長、このままじゃ、先輩が」
ニカが心配していた。
「大丈夫よ。ルイは無駄に強いから」
リフィルはニカを護りながら、戦っていた。
「でも、相手はBランクで」
「いい、死神の社会でも才能があるのに、上に上がれ無い人は沢山いるのよ。まあ、ルイの場合は違うかもしれないけど、ともかく、ルイの力は普通のFランクの死神と格が違うから大丈夫よ。大人しく見守りましょう」
リフィルはニカを諭すように話した。
「それより、目の前の人間を何とかしないとね」
2人の目の前に5人の人間の男が2人を囲った。
「1人は、めちゃくちゃ、いい女じゃん。やっぱり、この世界はいいな」
明らかにリフィルを指し、ニカは眼中に無かった。
「分かっていたけど、堂々と無視するとは、むきー」
ニカは奇声を上げた。
「なあ、こっちに来ない?」
人間達はニカをいない物として話しを進めた。
「えー、でも痛い事するでしょう」
リフィルは今までニカに見せた事の無い猫なで声で喋り出した。
「しないしない。さあ、行こう」
「うーん、分かったわ。勝った1人が私といい事しましょう」
リフィルは困った顔を見せ、言った。
「本当か!!」
「ええ、私、強い殿方が好きだから」
「分かった。行くぞ」
5人は武器を取り合い、同士討ちを始めた。
「本当に男はバカばっか。私は無駄に強い殿方が好きなの」
リフィルは誘惑の技を使い、必要以上にリフィル自身を美化させ、男達が同士討ちを始めるように仕向けた。
その間にレンが背後に回り、5人の頭を順番に、棍棒で殴り、気絶させた。
「レン君。終わった」
「……うん。後はルイだけ」
いつの間にか、人間は全員が気絶し、床に伏していた。
レンは棍棒をしまうと、ポケットに入れていた携帯ゲームの電源を入れた。
ルイとザンの攻防は続いた。
(凄い。戦況が一気に変わった)
ニカは倒れている人間達を見て驚きを隠せないでいた。
リフィル、レン、ロウの底知れない力を垣間見た気がした。
「どうした? 手も足も出ないか? そうだろう。そうだろう」
ザンは既に勝ち誇っていた。
「ふう」
ルイは大きく息を吐き出し、姿勢を低くした。
「これで決める!」
ザンはルイの背後に向かい、剣で刺そうとした。
「竜神一刀流」
ルイは目を開け、一気に刀を抜いた。
「奥義・竜の怒り!」
足のバネを上手く使い、刀を抜いた力を上手く使い、背後にいたザンの所まで、瞬間的に振り向き、刀の長さを利用し、ザンの剣が届くよりも遥かに速くザンを斬った。
刹那。ザンに何が起こったか分からなかったが、風は収まり、急に体が熱くなる。
そして、体を動かす事が出来なくなり、足がふらつき、そのまま倒れそうになった。
しかし、持っていた剣を地面に刺し、杖の代わりにして、何とか立つ。
「何故……?」
とてつもなく、熱い体を見ると、血が流れていた。
ザンはルイを見た。無傷に立っている。
「負けた」
ようやく、状況が分かり、力が抜けザンは倒れた。
「たかが風ごとき、竜に勝てる訳ねーだろう」
ルイは日本刀を一振りすると、ゆっくり鞘に納めた。
「先生!」
ニカはザンの所に急いで向かう。
ザンは「ううっ」と唸っていた。
「安心しな。峰打ちだから、ロウ手当てよろしく」
ルイは日本刀を消した。
「分かりました」
ロウは笑顔で返事をした。
「所長、そっちは終わったか?」
「ええ、もうとっくに。ねえ、レン」
レンはベンチの上に座り、ゲームをしていた。
「そうか、んじゃあ、後片付けするか。手伝ってくれるよな?」
Bランクの動ける死神達に聞いた。
「ああ」
死神達はコクコク頷いた。
「良かった。あっ、報告書はそっちで書いてくれるか? 手柄はいらんから。ってか、揉み消しでくれた方がありがたいな。いいか?」
「はっ、はい」
Bランク死神のリーダー格が頷いた。
「ありがとう。んじゃあ、始めるか」
ルイとレンは魔法陣を出現させ、大量のロープを出し、人間を縛り付けた。
「先輩!」
その途中でニカがルイの所に来る。
「どうした? あっ、忘れてた。今日でパシリ終わりだったな」
「違います!」
ニカは怒っていた。
「んじゃあ、何だ? ああ、お前の今後か? 好きな方を選んでいいぞ。行きたければ、又、ザンの所に行けばいい」
「行きません。私はここで働きます」
「そう。分かった。所長に言っておく」
「そうじゃありません!」
「じゃあ何だ」
「先輩はどうして、その力を隠していたんですか? 脅す為の武器何て嘘じゃないですか!」
「ああ、それか、それね」
ルイはこの真面目な新人死神に初めて困った顔を見せた。
「先輩だけじゃありません。他のみんなだって、何、隠しているんですか? 答えて下さい! 私には何だかよく分かりません。たった4人でこんなに戦況が変わる何て」
いくら不意を打ったとは言え、たかがFランク死神が一瞬で人間を倒す事は出来ない。
しかも手際もよく場慣れしていた。
「他の奴の事は本人に聞いてくれよ。知っていても俺の口からは話せらんない」
「じゃあ、先輩はどうしてですか?」
「俺か? 驚くなよ。実は俺、Sランク死神何だ」
ニカの耳元で話した。
「はははっ――――。先輩、こんな時にそんな冗談止めて下さい! エリートがこんな所にいる訳無いじゃないですか、真面目に答えて下さい」
一瞬笑ったが、ニカは余計怒った。真面目なニカの怒りの火に、油を注いでしまった。
Sランクの死神は死神の中でも最強の位で、能力のレベルが違った。
ニカも憧れていて、誰でも会える訳ではないし、何処にでもいる訳でもない。
ましてやこんな所にいる死神では無いのだ。
「まあ、そうだろうな。おいおい本当の事教えるよ」
ルイは苦笑いを浮かべた。
「おいおいって何ですか!」
「……ルイ、手が止まってる」
「ああ、悪い」
ルイはレンに言われるとレンの所に向かい、人間を纏めた。
「こら、惚けるな!」
ニカはルイを追い掛けようとした。
「ニカちゃん。こっちの人間を束ねるの手伝って、数が多いから」
リフィルが呼ぶ。
「あっ、はーい」
ニカはリフィルの所に向かい、ルイから正体を聞く機会を失ってしまった。




