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それは1つの終わりであり始まり①
世界は1つではない。
世界はいくつもあり、描かれる物語はその断片に過ぎない。
この物語もまた、世界の断片である。
「類、ゴメンね」
女の子が涙を流して、謝っていた。
女の子の名前は平野美春。
黒い瞳に肩にかからない位の長さの黒い髪。眼鏡を掛けた普通の女の子であった。
美春の手にはナイフを持ち、美春の着る白い割烹着や、あらゆる所が血で真っ赤に染まっている。この血は美春の血ではなく、大橋類と呼ぶ、美春の目の前で倒れていた男の物だった。
美春が類を刺した。それが事の顛末である。
「うっ、ううっ」
類は唸りを上げ苦しみ、徐々に意識を無くしていく。
それでも類は、最後まで美春の顔を見続けていた。
その意識が消えるまでずっと――――