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仕事に遅刻した僕は上司にこっぴどく怒られた。
遅刻の理由を説明しろと言われたがさすがに言えるわけがない、てか信じてもらえるわけがない。
とにかく平謝りでなんとかその場をやり過ごしてデスクワークを始めた
「君が遅刻なんて珍しいね」
僕の隣の席の先輩、田所 愛佳、仕事は早くて上司にも一目置かれている先輩だ。
すこし小柄で守ってあげたくなるオーラを放っている。
彼女の稀に見せる天然な部分が僕的には好きだ。
それにこの会社唯一の相談相手でもある。
「いや、まぁ…色々ありまして」
「君も大変そうだね、まぁ気を落とさずに頑張ろうよ。今日一緒に昼食でも行こう」
「あ、はい」
「よし!そうと決まれば早く仕事終わらせなくちゃ。資料を上司に提出してくるよ」
そう言うと席を立って上司の方に向かおうとしていた。
「相変わらず仕事早いですね…って!それ旅行のパンフレットですよ!」
「ん?あっ!またやっちゃったよ。ハハッ」
「しっかりしてくださいよ。これで通算20回目ですよ」
「いやー最近旅行に行ってなくてね。あぁ〜早く行きたいな〜」
そう言うと手に持っていたパンフレットと提出する資料を持ち替えて上司のところに向かった。
◇
地獄のデスクワークをなんとか半分片付けてやっと昼食の時間になった。
「んんぁぁ〜、さてどこで昼食にする?」
大きなあくびと目をこするその仕草、先輩というよりも娘を見ているみたいだ。
「ん?なんか失礼なこと考えてない?」
「いえ!そんなことは…」
この人エスパーかよ!とツッコミを入れたくなるところだが僕は朝の出来事の次くらいに真剣な悩みがある。
「そんなことよりどこで食べる?」
「僕、実は…、先輩に言わなければいけないことがあるんです」
「な!なんだってぇ〜!?」
「いや、まだなにも言ってないです」
「まぁそこはお約束というかなんというか、えへへ〜」
「はい可愛い。それでは本題に戻らせてもらいます」
「うん!どうぞ!」
「実は………、僕………、今月お金がないんです!!」
家賃の支払いや光熱費やお世話になった教会に送るお金で生活が苦しいのだ。
教会からは別に送らなくてもいいと言われているが今までお世話になったのに何もしないのは気がひけるから自らやっていることだ。
だけど給料日前になるといつも金欠状態になる。
「それは気にしなくてもいいよ。誘ったのは私だから奢るよ」
「ほ、本当ですか!?」
「て言うか奢るつもりだったし」
「ありがとうございます!」
「でも、その代わり今日遅刻した理由を聞かせてね」
嗚呼、彼女は天使の生まれ変わりなんだろうか。
いや、彼女こそがこの腐りきった地上に舞い降りた天使なのだ!
僕は田所先輩の行きつけの定食屋に連れて行ってもらった。