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君と僕の生きたしるし  作者: 感無量
運命の日
2/12

2

時は流れ現在21歳の僕、日下部くさかべ とおるは特に変わることの無い日常を淡々と過ごしていた。

今まで自殺を試みるも全てがことごとく失敗、死ぬことが許されないとさえ思うようになって諦めている。

教会に入った頃から地道に勉強をやっていたおかげでそんなに大きくはない普通の食品加工会社に務めている。

朝起きて飯を食い会社に行きヘトヘトになって帰り風呂に入って寝る。

ただこれのローテーション、休みの日は特にすることもなく部屋を片付けてネットサーフィンに明け暮れる毎日。

平凡で凡庸でなにもない、そんな日々だ。


「行ってきまーす、って誰もいないのにな。まだ教会にいた頃の名残が残ってるのかな」


誰もいないのに行ってきますなんて、本当に悲しいな僕は。

いつもの満員電車に乗り、痴漢に間違われないように両手を上げて電車に揺られる。

両手を上げるのは自分の保身のためであって過去に間違われたことがあるからとかそういう理由ではない。

やっぱり8月の後半でも暑いものは暑い、クールビズなんて殆ど意味をなさない。

やっとの思いで会社に到着、経費削減と省エネでクーラーをつけずに扇風機で我慢、どんだけケチなんだ。

でも結局のところ僕は外回りと言う地獄に向かわなければならない。

でも他の会社の方が涼しいのでこれだけは最高だ。

別に下げたくもない頭をぺこぺこ下げて作り笑いをする、そのせいで笑顔がなんなのかがわからなくなってきそうだ。

外回りを終えて昼食、給料日前でお金がないからコンビニで安い弁当をかって済ます。

今日もサービス残業のオンパレードだ。


仕事を終えて電車に揺られる、最終電車は人がほとんどいない、ここでは両手をあげない分疲れない。


「ただいまー、って誰もいないけど」


とりあえず明日も早いから風呂に入って飯にしよう。

飯を食い終わると夜中の2時になっている、缶ビール一本のんで寝るとしよう。

夏の夜というのは涼しい、教会にいた頃は周りが森だったので虫の声が鳴り止まないうるさいところだったが今ではそれが懐かしい。

窓を開けて風を入れる、窓辺にぶら下げている風鈴が風に揺られ心地よい音色を奏でる。

僕は夏が嫌いだ、だけどこれは悪くない。

夏はパジャマなんてものは着ない、やはりトランクスとランニングがベスト。

部屋の電気を消して缶ビールを片手に窓枠に腰掛けて夜空を見上げる。

教会にいた頃の夏の夜空は星一つ一つが眩しくて綺麗だった。

まるで夜空の星々がすべて異なった、それでいて調和のとれた宝石箱のように思えた。

都会に来ると星の輝きはあの頃よりも薄れている。

それは都会の空が大気汚染されているのもそうなのだが一番は僕の心に余裕がなくなったからだろうか。

そんなことを考えながら風に当たってビールを飲む、これこそが僕の疲れを癒す唯一の方法なんだろう。

だが明日も早い、僕はビールを一気に飲み干して寝ることにした。


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