「何処だ。」
「何処だ」
と言った先に見えたのは城をバックにした銀髪とちょんまげだった。ここが何処なのが理解できるまで少し時間がかかった。
━━━━━・・・あの時もう少し落ち着けばよかったなぁ・・・・。
やはり帰らなければ、と思って振り向けばこの世の物とは思えない速さで次元空間が逃げていくのが見えた。笑顔が凍りついた。帰れなくなってしまったのだ。
吸い込まれることを期待して、空間があった場所に石を投げてみる。
石はストンと乾いた地面に落ち転がっていった。
数時間前。
中学生のミチ・マチコ(ありきたり)は某有名学者の研究室に忍び込んでいた。
朝の新聞にこの某有名学者が時を移動できる機械、所謂「タイムマシン」を完成させたと発表したからである。父親と母親が共に科学者のマチコは世の中のメディアより先にこの情報を入手していた。無駄に好奇心旺盛なマチコは研究所に(一人で)忍び込む計画を練った。一般人が体験する前に自分が体験してしまおうと考えたらしい。
マチコは頭がよかった為に計画が上手く行った様で、忍び込むところまではすんなり成功した。問題はその先である。
研究室の防犯システムが作動してしまったのだ。忍び込んだのは夜中だったからか、昼よりもシステムが強化されていたからだった。
「やばい」
と思ってからではもう遅かった。警視庁が近かった所為で数分後には我先にと大量の警察官が建物の中に入ってきたのである。
そこで一つ、ミチコは思いつく。
━━━━━━━━━ソウダ、別ノ時代ヘ飛ンデイッテシマヘ。
急いでスイッチを入れる。そばにあるマニュアル等は無いも同然、触れもせず、何処にいくかわからないままにキーを打ち込む。
「飛んで行け!」
叫んだ瞬間に体が浮き上がったかと思うと急に眩暈がしそのまま失神してしまった。
目を開けてみれば見たことも無い草原と、大きな城。ふらつく足をしっかり立たせつぶやいた。
「何処だ。」と。