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01 最初の一声が肝心

 世界に生まれ落ちる。

 それは切り取られたように断絶した意識が突如そこに発生することだった。

 生まれた時から己の存在に刻みつけられた感情。

 それはとても原始的なものであり、本能が突き動かすような衝動でもあった。

 目の前にいる存在を破壊したいと言う衝動。

 まるでそれがお前の生まれた意味だという世界の一方的な決めつけだった。

 壊す為に生まれ、壊れるまで壊し続ける。

 それがお前の生まれた理由だと、世界という意思が己の存在を決定する。


『グルゥゥウウアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!!』


 その声は破壊衝動の発露かそれとも世界への反抗の意思か。それは自分にすらわからない。

 ただ今は目の前にある存在を無視することはできない。

 己は今、戦うために生まれ落ちたのだから。

 戦うべき相手が目の前に居るのは当然のことだった。

 小さきものが四人。

 各々が武器を携え、こちらに鋭い視線を向けている。

 本能がその視線に反応する。


 ――殺せ。


 根源から湧きあがる衝動。

 己の意思で止めることなど出来ずに身体は動き続ける。

 それは苦痛だった。

 己の意思で動かす事の出来ない肉体。己が操り人形のように動かされることは耐えがたい事であった。

 獣性が肉体を支配している。知性は奥に押し込められ固く閉ざされている。


『ガアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァッッッッ!!!!!!!!!』


 己が意思で抗う。肉体の支配権を手にしようと。

 世界に刻まれたであろう意思へと抗う。

 己が生まれた理由は己が見つける。

 世界であろうと己を縛る事は許されない。

 強い意思を、己の表層を支配する獣性へとぶつける。

 何度も何度も何度もそれを繰り返す。


『グルゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウガアアアアアアアアアァァァァァァッッッッッ!!!!!!!!』


 己と戦う小さきものはいつの間にか人数を減らしていた。

 ボロボロの身体を自らの血で赤く染めた戦士がこちらを鋭く睨みつけていた。

 己の身体はその小さきものを叩きつぶさんと歩いて行く。


 パキンッ。


 己の行為が実を結んだ。己の意思を縛る鎖が断ち切られる音を聞いた。

 獣性を己の意思でねじ伏せ飲み込む。世界の意思によって押しつけられていたものだがこれもまた己であったから。

 己は己を押しこめることなどせず共の生きていくのだから。

 己の意思が肉体へと馴染み始める。


「え……?」


 己の足元にいる小さきものが声を上げた。

 小さきものは信じられないといった顔をしていた。

 己はここに完全に生まれた。

 意思だけでなく、肉体を手にした。

 己の目を見る小さき者は己の目に知性が宿っているのを理解したのだろう。己はこの世界で初めて会った己以外の意思持つ者と会話をしてみたかった。

 己は壊す為に世界に生み落とされたが、己はそんな理由で生まれたわけではない。己が生まれた理由は己で決める。

 だからこそ、己は意思持つ者と話がしたかったのだ。叫ぶだけだった己の喉を震わす。最初は唸り声だったが次第に己の意図する音が発せられるようになる。

 それは、己が戦っていた小さきものたちが使っていた音。

 それで小さきものは意思を伝えあっていた。己の中にある世界から植えつけられたであろう知識がそれが言語というものだと示している。それがあれば己はこの目の前の小さきものと対話することができる。


「グル…ア…ア…あ…あ…」


 目の前の小さきものは何事かと警戒をしながら後ずさる。

 己はそれを止めず、言語を発する事に集中する。世界の意思が植えつけた知識から言語についての知識を吸い上げる。

 そして己は小さきものと対話を試みる最初の一歩を踏み出した。


「みな…ごろし…だ…」


 それが己の第一声だった。

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