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名前のない人

「暑い」そうつぶやいても仕方がないことはわかっていた、しかし暑過ぎる。


アスファルトの道路は熱を発し、日光が頭をジリジリと焦がす、おまけに蝉のコーラ付きだ。

すぐ近くに自動販売機が見えた、

砂漠のオワシスならぬ都会のオワシス。


私は迷わずコーラを選ぶ、別に好きなわけではないのだが、とにかくさっさとを水を入れないと待ち合わせ時刻まで身体が持ちそうになかった、病室で「こんにちは」なんてごめんだ。


コーラを手に取りながら、日陰を探す

しかし、そんなもん無い、蝉の暑苦しい声は聴こえるが木一本も無い、

あるのは、電信柱だけである。

最近の蝉は樹脂の代わりに電気でも吸い取ってんのかと思いながら、一本前に進む。


いや、進むというのは前に動くから進むのだ

しかし私は前に進まずアスファルトへと飲み込まれて行った。


なんてこった、熱で溶けたのか!だとしてもこの右手に掴んだコーラは離さないぞ。


私の身体はぬるりとアスファルトの地面に飲み込まれていき悲鳴も挙げる暇もなく私は落ちてしまった。


暗いそして涼しい。案外アスファルトの中は涼しいのだな。

私の身体は重力にそって加速しながら終わりなく落ちて行く。

私は思う、地面が無い今、私を止める存在は一体なんなのか。。私は今まで地面に感謝したことはなかったが、地面にガムを捨てたり、ツバを吐き捨てたりしたことはないはずだ。それなのにどうしてだ。こんなの終わり方は酷い。


私は思い出した、ニュートンの万有引力をつまりこれは決して地面が無いというわけではないのだ。ありがとうニュートン

希望の光が見えた、いや、実際遠くの方に光が見える。


どんどん、光に近づいて行くその時

「助けて」

と少女か少年のような声が一瞬聞こえた、

私に驚く暇を与えず光は私の身体全身を多い私は空中に飛ばされた。

体が回る、世界が回る、私も回る。

地面に頭からぶつかる、幸い草がクッションになっていてあまり痛くはなかった

それに今ここには地面がある、思わず地面に接吻しそうになったが

人に見られるとまずいと思い周りを見た

木だ、木木木もう森でいいじゃないかという程木がある

しかし森は山にあるから森だ、ここは、草原。木原といったところか

おかしなことに、人の声もしない建物もない、虫の声はあるそれも蝉だ

私のばあちゃん家もここまで酷くはない。

いったいここはどこなんだ、あの声は何なんだ急に身体が寒くなった。


「おい」

うしろから子供と思われる声がした。

よかった人がいたのかと思いながら振り向くと、そこには幼い少女がいた

しかし普通ではない、髪が青く短く切ってあり青と白のかき氷を連想させる制服を着ておりさらに背中からは半透明の楕円型の羽が四枚ついている。


私は口をパクパクさせなが少女見た、

少女はどことなく偉そうな顔をして私に言った

「おい、あんた何であたいの領地にいるんだい」

「その、ええ、わかりません」

喉がカラカラで声が出ない。

「人間にしては、見たことない格好だ、そういえば、人間を捕まえれば甘いお菓子をあげるって吸血鬼が言ってたっけなあ」

私は震えた、頭に「捕まえられる」「吸血鬼」「喰われる」と言う単語が交差する

ふと、右手を見ると破裂しそうなぐらいに硬くなったコーラの缶があった

「お嬢ちゃん?お菓子なんかよりもっといいものがあるよ」

何とか声を震わせないように言った

「いいもの?」

「そうだよ、すごく甘いんだ、もうちょとこっちにきたらあげるよ」

さながら、どっちが誘拐犯なのかわからない、

幼い誘拐犯が頭がくっ付きそうなくらいに近づく、近づくと涼しい。

「なんだい、それ」

私は缶を幼い誘拐犯の顔の前にあげ

「よーく、ここを見ててね。瞬きしちゃダメだからね」

「わかった」

やっぱり子供何だなあ安心した。さらにこの幼い誘拐犯はコーラを知らない

缶を一気に開けると同時に全力で走る

後ろ見ると、幼い誘拐犯はチロチロ舌で缶を美味しそうに舐めていた、

失敗した全然破裂しなかった、しかし、結果オーライである、

子供見方コーラよありがとう!


息が切れるまで走る、だが景色は木木木である、見たことない程大きな木に寄りかかりヘタれる

「はあ、疲れた」

風が涼しく汗を乾かす、嫌に涼しい気がする

「もう疲れたの?」

汗が冷や汗に変わる

追いつかれた。思えば幼い誘拐犯には羽があった。

「あれ、お菓子なんかより何倍もうまかったし甘かった!また、ちょうだいよ」

「もうないよ。で、でも、どこにあるかは知ってる」

危なかった、用が無いと気が付かられたら吸血鬼に売り飛ばされるところだった。

「どこに、あるの?」

「自動販売機」

「じどうはんばいき?」

まずい、こんなとこに自動販売機何かあるのか、

私は慌てて

「でも、どこに自動販売機があるかは名前も知らない人には教えられないよ」

これでいい。

「あたいはチルノ。どこにあるのか教えて」

駄目だった

「名前だけではまだ、チルノちゃんのことはわからない。。だって、同じ名前の人だってこの世に何にもいる」

ひどい言い訳だ、しかし、チルノは納得している。

「最強!あたいは最強なんだこの幻想郷で」

幻想郷、聞いたこと無い地名だ。

「最強なら、この幻想郷を一瞬で端からはしまで移動できるはずだ」

とにかく、最強と言うところをついて見る

チルノは少し焦りながら

「そんなの朝飯前よ」

「じゃあ、やって見て」

「今日は調子が悪いんゲッグウ」

チルノがゲップを吐き出す、コーラの事を思い出した喉が痛いぐらい渇く、こんなことになるのなら人生の最後にコーラを飲んでおけば良かった。

突然、風が木々を揺らす。

「うわ!マリサだ」

「マリサ?」

そう言い終える前にチルノははるか彼方に飛んで行った。

「よう、人間さん」

威勢のいい声だ、しかし、振り向くのに躊躇する、

あの自称最強チルノが慌てて逃げるほどだ一体どんな化け物かわからない。

恐る恐る振り返る

「なにビビってるんだ、私は人間だぜ」

見ると、人間であった、角も羽もない

しかし、見た目は変だ黒白の服にとんがり帽子に箒

髪は腰ぐらいまであるブランド

魔女だ

「ああ、良かった吸血鬼に売り飛ばされるところだったんだ」

「吸血鬼?そりゃ大変だったね。私は普通の魔法使い霧雨魔理沙だ、あんたは?」

よかった、まともで涙が出そうだ、

「自分は普通の人間です、名前は。。えっと忘れました」

思い出せない、何故だろう。魔理沙はゲラゲラ腹を押さえて笑っている

「あははは、名前を忘れた奴なんて始めて見たぜ、でも、名前なんて重要じゃないさ、また、見つければいいこの幻想郷で」

確かに名前など重要ではない

私は私それさえわかればいいのだ

「幻想郷って何処なんですか、聞いたことないです」

「ああ、まああんたは外の人だから分からないだろう。それにここで話すのも何だ、涼しいとこにでも行こう」

「そうですね、もう、暑くて喉がカラカラなんです」

「じゃあ、行こう」

といいながら魔理沙は箒に乗る

そして私にロープを投げる

「悪いな、これ1人ようなんだ」


吊るされながら、幻想郷を見回したあたりに村や神社が見える、決して何もないわけではないようだ。

「あの神社に私の友人がいるんだ、小銭はあるか?」

「小銭?十円玉くらいならあった気がする」

「それならいい、神社についたら賽銭箱にいれてやってくれ」

「魔理沙さんの友人はお金に困ってるんですか?」

ちょと失礼な気もする

「あはは、まあ困る程じゃあないだが、あの神社、参拝客が年中無休で来ないんだ、だから喜ばしてやりたくてさ」

参拝者が年中無休でこないってどんな神社なんだろう

そんなことを思っていると神社についた。


想像してたより全然綺麗な神社だった

とにかく、人工物を見れて何だか安心した

私は手水舎で手を洗う、そして口を洗いながら水を頂く、ああ神様ありがとう、ありがとう神様。

「おおい、霊夢生きてるかぁ」

私は賽銭箱に5円玉を入れる、

カランコン景気のいい音がする。

鈴を鳴らそうとしたその時何かが飛んできた

「ついに、ついに、きた452日ぶりのまともな参拝客」

見ると私の横に目を蘭々と輝かせている巫女がいた、

しかし服装が少し違う、脇と肩を露出させた袖の服に頭には大きな赤いリボンで美しい黒髪を留めてある

「おお、霊夢そこに居たか」

「あら、魔理沙じゃない、彼は誰」

「彼は、えーと名無しだ」

「名無し?」

私の方を凝視する

「名前を忘れたんです」

「あっそう、お気の毒ね」

五円玉に狂乱し名前を忘れた人を見ても特に気にしてない、何だか変わった人だ

「チルノ探してたら見つけたんだ」

「あっチルノ捕まえられなかったの!」

霊夢は頬を膨らませながら魔理沙に詰め寄る

「まあまあ、そう怒るなよ、代わりに参拝客ゲットってことでさ」

「確かに、参拝客は嬉しいけど、チルノがいないと夜暑くて寝ずらいのよ」

チルノが近くに居ると涼しかった事を思い出した。

「なら、代わりに名無しに団扇で扇いでもらえばいいじゃないか」

ニコニコ笑いながら魔理沙はそう言う

「せっかくの、参拝客に仕事をさせるってダメに決まってるでしょ」

しかし、私を見る霊夢の目は薄っすら期待の色が見て取れた。

「いやあ、その自分今日留まる宿もないのでもしよかったら、何でも仕事しますので泊めてくれませんか」

私は四十五度の礼をした、

「そうねぇ、さすがに外で寝かせるわけにはいかないしねえ、いいわよ泊まっても」

「ありがとうございます、しっかり働きます!」

私は九十度の礼をした、

「あはは、ほらな霊夢万事解決だ、じゃあ私はこれで失礼するぜ」

そういうと、魔理沙は礼をいう暇も与えず箒に乗り見る見る内に夕日に吸い込まれて行った、

「何でも仕事するのよねえ」

霊夢の顔はどこか怪しげであった。


今私は感動している、

目の前には煮干しとご飯とたくあんがある、

箸が動かない私を見て、

「今日は丁度食材切らしててね」

私は慌てて訂正する、

「いやいや、私は今感動してるんです、食事のありがたみというかなんというか」

そういいながらガツガツ食う、煮干しが喉に刺さる、

「昔は肉が手に入ったんだけどね、いまじゃめっきりみなくなったのよ、また食べたいな」

そういいながら霊夢さんは、ご飯を深く味わうように食う、きっと彼女のご飯の上には肉があるのだろう、

「でも、次の満月の時にに肉が食べれるのよ」

「へえ、どこで食べれるんですか」

「私の食べる量が減るから教えな〜い」

「えー自分も食べたいです」

そういうと、霊夢さんはケラケラ笑う

あんまり笑うので私もつられて笑う

そうすると、霊夢さんもまたケラケラと笑った。

霊夢さんの後ろの障子になにか光るものが見えた、

目だ、穴の空いた障子に何個かの種類形の違う目玉がこちらをじっと見ていた

私は驚き

「霊夢さん、目玉です、目玉が障子に沢山!」

霊夢はお札の様な物を懐から取り出し、目を一瞬細め札を障子に投げつける

流石巫女とも言うべきか

無駄のないシンプルな洗練された動き

思わず息を飲む。


「この辺、妖怪なんかが多くてねえ

なんで集まってくるんだろうかねえ

まあ、そんなに達の悪い奴らじゃないから安心してね」

泊まれず野宿で夜を凌ぐ自分を想像したら震えた、

「流石巫女ですね、しかし、今晩泊まれて本当によかった、ありがとうございます」

「さーてと、しっかり働いてよね」

「はい、もちろんです!任せて下さい

あと、言い忘れてたんですが、自分は元の世界に帰れるんでしょうか」

「心配ないわよ、たまに貴方みたいな人くるのよ、勿論無事帰れてるわ、でも、帰らずにここの人になる人も多いわね」

貴方みたいな人…どういう意味合いなのだろうか。

それに帰れると聞いて人安心したが、同時に少し寂しくもあった。

こんな刺激的なことは元の世界ではない。

それに何だかこの幻想郷には何処か惹かれる部分がある。

「おーい、ボーとしてないで早く働け」

霊夢の声が私を幻想から現実に戻す、

案外悪くない所なのかもしれない。


風呂焚きに神社の掃除やらなんやら、

どれも前の世界では経験したことなかったが、案外何とかなった。

蚊帳を挽いた部屋で霊夢を扇ぐ、

寝るまで扇げとは言われたものの、どう寝たか判断すればよいのか、

寝た人に寝たか?と聞けば起きる、そしてまた聞くそして起きる、そしてまた聞くこれの繰り返しになってしまうのではないかと不安になった。

霊夢さんの呼吸の一つ一つ、寝返りの一つ一つを観察する、

すると突然スースーという音が聞こえた

なるほど、これが寝息というものか、

私はこれで私も寝れると思い横になる、

今日一日を振り返る何だか色々なことがあり過ぎて疲れた、

「助けて」

まただ、あの声が聞こえた。

襖は霊夢さんが結界を作る為に閉じてあったが

それが、少しずつ少しずつ開いていっている

「助けて」

まただ。

冷や汗が出る、霊夢さんを起そうと体を動かそうにも動かない、

金縛りだ。

襖はさらに開き、中に夜よりも暗い夜が入ってくる。

夜が私の体を取り巻く。

「助けて」

私の声とあの声が重なる。


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