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雪だるまと雪うさぎ

作者: ネココネコ

初めまして、ネココネコと申します。

他の方々の作品を読んでいたら何か書きたくなって書いてみました。

即興の作品ですので色々と稚拙なところがあるとは思いますが読んでくれたらうれしいです。

なかなか時間が取れないので、もし感想が来ていてもなかなか返信できないかもしれません。申し訳ない。



しんしんと雪の降るある冬の日、ある場所で、一体の雪だるまと雪うさぎがありました。


雪だるまは言いました。「やあ、雪うさぎさん。今年は会えましたね。」


雪うさぎも言いました。「ええ、雪だるまさん。今年は会えてうれしいです。」


二体は昔はよく一緒に作られていましたが、最近はあまり一緒になることがありませんでした。初めはよく一緒になる二体はお互いのことを気にしていませんでしたが、やがて一緒になることが少なくなると少しずつお互いのことを気にするようになりました。


雪だるまは言いました。「去年は僕しか作ってもらえてなくてさびしかったです。」


雪うさぎは答えました。「でも一昨年は、私だけだったので私もさびしかったですよ。」


二体は同時にため息をつき、言いました。


『ああ、昔みたいにいつも一緒に居られたらいいのに…』と


雪うさぎは言いました。「でも、最近は雪だるまさんばかり作られることが多いですね。私は昔と比べるとあまり作ってもらえなくて…」


雪だるまは言いました。「そうですね…。確かに最近は僕だけ作られることが多いですねぇ。やっぱり、作りやすいからでしょうか?」


雪うさぎは答えました。「そうでしょうねぇ。私は形を整えたりするのがあなたより面倒ですしね。」


二体の間に少しばかり暗い空気が流れますが、雪だるまはそんな空気をなくそうと明るく雪うさぎに話しかけました。


「…そんなことより雪うさぎさん!今年のあなたはずいぶんきれいにできていますね!体はつるつるして光ってるし、目もきれいな赤色です。ほんと、とてもきれいですよ!」


雪うさぎは照れながらいいました。「そんな、雪だるまさんこそ今年はきれいな玉の形しているじゃあないですか。でも、そう言ってもらえて、うれしいです…。ううっ、は、はずかしくて溶けちゃいそうですぅ!」


雪だるまと雪うさぎはその後も和気あいあいと会話をつづけました。二体はそんな日々を冬の間、毎日続け、いつしか春を迎える日になりました…。


雪だるまより小さな雪うさぎは、溶けかけているなかで雪だるまに言いました。


「あぁ、どうやらもうすぐ私は消えそうです…。雪だるまさん…また、……来…年も…会えたら……いいです…ねぇ……それ…では、また会いま…しょう。」


そうして溶けていく雪うさぎを見ながら雪だるまも言いました。


「はい、雪うさぎさん。僕もまた来年一緒に会えたら嬉しいです。お互いまた会えたら、お話ししましょうね」


溶けていく雪うさぎはどこか嬉しそうな声で一言言いました。


「…ええ……」


そうして暖かな日差しの中、雪うさぎは溶けていきました。雪うさぎが完全に溶けてから数日後、雪だるまもまた、暖かな日差しを受けて溶けていきました。


しかし、次の年は雪が少なく、雪だるまは作られず雪うさぎだけが作られ、その次の年は降った雪は多かったのですが、雪だるましか作られず、というように何年も何年も雪だるまと雪うさぎが一緒に作られることはありませんでした。

 

雪だるまも雪うさぎもお互いに会えず、いつしか二体は『さびしい、雪うさぎさん(雪だるまさん)に会いたいな』と冬の間中思うようになりいつしかそんな冬の年も百を迎えたころ、ついに二体はまた一緒に作られました。


二体は、それまでの会えなかった期間の寂しさ、悲しさを埋めるように自分しかいなかった冬の事やまた会えたことのうれしさをお互いに話し合いました。


しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、いつしかまた、春の暖かな空気に包まれる季節になってしまいました。


その日は、朝から雨が降り、二体の体はどんどん溶けていきました。


体の小さな雪うさぎがまた先に溶け始めた時、雪うさぎは、またずっと会えなくなるかもしれないと不安になり言いました。


「ゆ、雪だるまさん。私…溶けたくないです。またずっと独りぼっちになるかもしれない…。とても怖いです。あなたに会えなくなるのが怖い。ずっと一緒に居たいです。ずっと…ずっと…あなたと楽しく話していたいです。」


雪だるまも雪うさぎの言葉を聞いて答えました。


「雪うさぎさん。僕もです。僕も、あなたと会えなくなるのが怖いです。あなたと話すと楽しい、あなたと話しているとこの冷たい体に温かさがともるような気がしていました。だから僕もあなたとずっと一緒に居たいです。ずっと…ずっと一緒に…」


雪だるまが話している間にも雪うさぎはどんどん溶けていき、雪だるまの言葉が最後まで言い終わる前に雪うさぎは完全に溶けてしまいました。


雪うさぎが完全に溶けた後、雪だるまは雨の降る空を見上げながら祈りました。


『どうかまた来年も雪うさぎさんと会えますように…』と……


しかし現実は悲しいもので、次の年もその次の年もまた雪だるまと雪うさぎが一緒に作られることはありませんでした。たまに同じ年に作られても、同じ場所で作られることがなかったので、二体は結局会えないままでした。


会えない間、雪だるまと雪うさぎは雪の降る空を見上げながらいつも同じことを祈っていました。


『――――……神様、神様、お願いします。また雪だるま(雪うさぎ)さんと会えますように………できれば…できればずっと彼(彼女)と一緒に居られますように……―――――』


そうして会えない年の間、ずっと二体は祈り続けていました。そして、また会えない冬の年が百を迎えたころ、二体は再び同じ場所に一緒に作ってもらえ、会うことができました。


お互いの姿を見つけた雪だるまと雪うさぎはとても、とても喜びあいました。


雪だるまは言いました。「あぁ、ああ!雪うさぎさん、会いたかったです!!とても…とても……ほんとうに…また……会えてよかった………」


雪うさぎも言いました。「えぇ、ええ!私もです。雪だるまさん。ほんとうに……会えてよかった。ずっと、ずっと会えなくて寂しかった………でも、いまこうして会えてうれしいですっ!!」


雪だるまの声も雪うさぎの声もとても弾んだ、うれしそうな声でお互いに話しかけました。その声には、ずっと会えなかったことへの寂しさや悲しみ、また会えたことへの大きな…とても大きな喜びの感情がこもった複雑な声音こわねでした。


二体はまた、以前のように会えなかった間に見たこと、感じたこと、そしてまた会えたことへの喜びを和気わきあいあいとした雰囲気ふんいきで話し続けました。


二体はそんな風に楽しく話し合いながらも、心の中では、ともにまた会えなくなることへの不安感があったので、祈り続けていました……『ずっと、ずっと一緒に居たい』と……―――――――


そうしてまた、二体は楽しく会話しながら冬の間を過ごしていき―――――また、春を迎える時期となりました。


しかし今年はいつもと違い、雪うさぎの体は雪だるまに近いほど大きなものであり、また、雪だるまもいつもよりも大きな体であったので、溶けかけてはいましたが、二体はまだどちらも欠けずに残っていました。


暖かな日差しの中雪だるまは言いました。「雪うさぎさん、雪うさぎさん。今年はまだ一緒に居られますね。」


雪うさぎは答えました。「そうですね、雪だるまさん。今年はまだ一緒に居られてうれしいですよ。」


二体はお互いにまだ一緒に居られることに喜びながら、『ずっと一緒に居たい』と願いながらその最期の時を迎えるまで話し続けました。


そうして、話し続けていると、ポツ…ポツと雨が降り始めました。


雪だるまと雪うさぎはその雨を受け、『ああ、このままだともうすぐお別れになってしまう』と考えていました。


雨がだんだんと激しくなっていく中、雪だるまと雪うさぎはどんどん体が溶けていきます。


溶けていくなか雪だるまは言いました。「雪うさぎさん、このままだともうすぐまたお別れになりそうですね。とても寂しいです。」


雪うさぎも言いました。「はい、雪だるまさん。私も寂しいです。また、ずっと会えなくなるかもしれないと思うと、寂しくて…悲しいです。」


二体は溶けて、もうお互いの姿を見ることもできなくなっていました。


そうしてどんどん、どんどん二体は溶けていき、お互いに話せなくなるほど溶けて来たころ、突然雨が止み、雲の晴れ間から暖かな日差しが二人・・を照らし出しました。


そう、日差しの下には雪だるまと雪うさぎの姿はなく、かわりにその場所には二人の男女・・・・・の姿がありました。


二人は目を閉じていて、その場に立っていました。最初に体の異変に気が付いた男がゆっくりと目を開け、口を開きました。


「………あれ?…まだ、話せる……? ………そうだ! 雪うさぎさん、雪うさぎさん、まだいますか!?」


男は叫びながら、あたりを見回し、雪うさぎを探しました。


しかし、周りには雪うさぎの姿はなく、先ほどまで雪うさぎのいた場所には銀髪ぎんぱつで赤い目をした色白いろじろの人間の女性がこちらを驚いた表情で見ているだけでした。


男は不思議に思います。なぜなら、人間には自分たちの声は聞こえないはずだからです。


驚いた顔をしていた女性は、困惑した表情で透き通るような声で男に話しかけました。


「…………え、えぇと、あなたは私の声が聞こえますか?」


男は答え、女性に聞きました。


「はい、あなたも僕の声が聞こえるのですか?」


女性も答え、質問しました。


「はい、聞こえますよ。あの、すみませんが、どうしてあなたは私の名前を呼んだのですか? それと、雪だるまさんを見ませんでしたか? 私がまだ溶けてないので、彼もまだ溶けてないはずなんですけど姿が見えなくて…」


その言葉を聞き、男は驚きながら言いました。


「えっ!! 何を言ってるんですか!? あなたは人間じゃあないですか!! それに…雪だるまの姿が見えないって…雪だるまは僕ですけど……」


女性も驚きながら、ぶつぶつとつぶやき始めました。


「えぇっ!! …でも、あなたは人間…あれ、私もこんな人間みたいな手なんて……え、私、人間になってる?」


女性のつぶやきを聞いて、男も自分が初めて人間になっていることに気が付きました。そして、男も女性と同じように考え込んでいると女性が話しかけてきました。


「あ、あのっ!!」


男はびっくりして答えます。


「ひゃいっ!?」


一寸かんでしまった男の返事を無視して、女性は雪だるまのかぶっていたバケツと同じ灰色の髪で、色白の肌をした、黒目の男に話しかけました。


「あの…その……あ、あなたは本当に雪だるまさんですか?」


男は答えました。


「は、はい、そうです。あの…もしかして、そういうあなたは雪うさぎさんですか?」


女性は、満面の笑顔で答えました。


「はい!!」と…


その後、人間になった雪だるまと雪うさぎは、お互いに人間になったことに驚き、また、人間になったことで、溶けることなくお互いがこれからもずっと一緒に居られることに喜び、きっと神様が二人の願いを聞いてくれたのだと泣いて喜びあい、その奇跡に感謝し、その後は、二人は夫婦となり、いつまでも仲睦なかむつまじく過ごしましたとさ……


めでたし…めでたし………





…………………暖かい部屋のなか、ソファに座りながら一人の老婆がそう曾孫ひまごたちに話して聞かせていました。曾孫たちはその話を聞いた後も他の話を老婆にせがみます。老婆は微笑みながら、他の物語を話していきました。そして、曾孫たちがやがて眠りにつくころ、老婆もまた自らのベッドへとはいりました。老婆は目を閉じながら、先ほどの話を思い出し、昔を懐かしみました。老婆は、沈んでいく意識の中、亡くなった夫の事を思いながらつぶやきました。『ふふ、いつも私が先にいなくなってたけど、今度は私が後になりましたね。雪だるまさん、あなたがいなくなってやっぱり寂しいけど、今、私は幸せです……

きっと、またいつかあなたと会えると…そう信じられます。ああ…また、あなたとお話ししたいです………………』そして、老婆の意識は静かに沈んでいきました。






翌日、起きてこない老婆を起こしに来た曾孫たちは、老婆を何度もゆすりましたが老婆はついに目を覚ますことはありませんでした。ただ、その老婆の寝顔はとても満ち足りたような静かな微笑みを浮かべていたそうです…………



2000文字くらいにするつもりがどうしてこうなったし…

*2014/2/8少し修正というか、追加しました。

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