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花少女  作者: tei
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 横たわった私の体の中で、何やら疼くものがある。と思うとすぐに、その感覚が血の管を一瞬にして駆け巡り、血液を養分にして見る見るうちに育ち、肥大化した。それは植物の根だった。私の体に、一つの、いや無数の植物が根を張っているのに違いなかった。しかし私は動くことが出来ずに、暗闇の中でじっとしている。体の中でその根を逞しくする植物に縫い付けられでもしたように、指先一つさえ動かすことが出来ない。私は只一つ自分の自由になるらしい眼球をせわしなく動かした。いつしかその眼球にも根が伸びてきているようだったが、それでも視力が損なわれることはなかった。私は依然呼吸を行い、生命活動を維持していた。

 眼球の運動を百回近く行った頃、次なる変化が訪れた。腕の辺りの皮膚が、微妙に痛みを訴えたのだ。それは痒みに極々近いものであり、痛みと言うにはあまりにも些細な、どちらかと言えばむしろ甘美な感覚であった。暗闇の中で、私は必死に目を凝らし、自身の腕があるだろうと思われる部分を見た。何が起こったのか把握しなければいけない。しかし次の瞬間、私は目を凝らす必要を失った。

 私の右腕上部から、一本の光の管が伸びていた。するすると、まるでカンダタが掴み損ねた蜘蛛の糸のように、暗闇の中で天に向かって伸びていた。

 私はしばし思考が停止すると言う言葉の意味を噛み締めていたが、やがてそれが自分の中に根を張る植物の茎であることに気づいた。茎はゆらゆらと揺らめきながら、自立していた。そしてそれは自ら発光していた。

 しばらくどうすることも出来ずにそれを見つめていた私の目に、その茎から葉が繁って来るのが映った。気がつくと、私の体のいたるところから、細い茎が姿を現してきていた。それらは最初の一本と同じように薄く緑に発光し、ゆらゆらと水底の草のように揺れた。私はそれを見つめながら、いつしか更なる眠りに身を委ねていた。

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