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十三章 温もり

いやぁ、お久しぶりです。

これから更新頻度が上がると思いますので、展開に注目ください

 駆けて行く。

 静かな廊下を駆けて行く。募る思いに急かされるかのように、ラヴィニアは走っていた。

 ――哉徒!

 心配だった。ずっと、気掛かりだったのだ。

 死にたがりな哉徒。でも、優しかった哉徒。気軽に話せて、親しい男の子だった……特別な、存在。

 高宮時雨と名乗る人物から場所だけ聞いて、走ったのだ。必死に、必死に走った。

「哉徒!」

 ドアを開けると、そこにはベッドに横たわる彼の姿があった。

「……ラヴィニア!?」

 哉徒はその声を発したが、起き上がろうとはしなかった。いや、起き上がれないのか?

「哉徒……どうして、寝転がったままなの? それに、薬って……!?」

「……時雨から聞いたのか。あの野郎、割と口軽いな。それとも、あのときの意趣返しか?」

 哉徒は、ジークリンデになりきっていた時、正体をフランに伝えた事を思い出していた。時雨は、報復を絶対に忘れない。これがそうなのかは分からないが、言い訳できない状況にいるのは確かだろう。

「薬ってどういう事ですか! 哉徒!」

「……オレはね、ラヴィニア。自分の意思で、薬を飲んだんだ」

 瞬間、思いっきり引っ叩かれる。病人であろうとも、容赦なしだった。

 頬にジンジンとした刺激がくるものの、喋れなくなった訳ではない。言葉を続ける。

「オレは、守りたいと願ったんだ。絶望の淵で喘いでいたオレに、光をくれた女の人をね。その為には、力が必要だった。いや、力そのものにならなきゃダメだったんだ。だから、新薬の投与を受けた。利剣になれるなら、怖くなかったよ。おかげで、軍務の時は、守ってこられたんだ」

「誰が……誰が、そんなことの為に身を犠牲にしろと言いましたか! 自分を大切にしない人に、心配される言われはありません!」

「そう、これは自己満足。……ラヴィ」

「こ、こんな時に、その呼び方……! か、哉徒……泣いてる、の?」

 哉徒の瞳からは、涙が零れ落ちていた。

 再開を懐かしむ。そのことだけでも、感動的になっていて……おのずと、感情が溢れるのだ。

「ははっ、涙腺まで緩くなってるみたいだ……。オレも、ずっと気になってたんだ、ラヴィのこと。生きててくれて、よかったよ」

 弱弱しく笑う哉徒を、ラヴィニアはゆっくりと抱き寄せた。

 ――久しぶりの、哉徒の匂い。胸が締め付けられて、でもそれが心地いい。

「……会いたかった、哉徒」

「オレもだよ、ラヴィニア……」

 ちなみに、だが。

 こっそりと携帯電話が点滅していた。さも、不満そうに。



「おえっ……甘っ」

 時雨はコントロールルームで哉徒達を見守っていたが、あまりにも馬鹿馬鹿しくて消してしまった。甘い空間をみているだけで、胸焼けがしそうだ。いらんっつの。他人のイチャコラなんざ、見たって面白くないし。

 監視カメラから視線を外し、眺めたのは……鮮烈な赤い色をした、少女。

「んで、お前さん……クトゥグアだな? 炎の神性ってヤツ」

「ん……。少しは話ができそう。……何か、食べ物ない?」

「ほらよ」

 昼食だったハンバーガーをくれてやると、特に表情を変えず、包みごと食べ始めた。

「……この外側のヤツ、美味しくない」

「包みはとれよ。中身だけを食うんだっての」

「そうする」

 もぐもぐとやってくれる間に、考えを整理する。

 クトゥルフ神話におけるクトゥグア。コルヴァズという星に封印されている説を俺は信じていたのだが、どうなのだろう。

 見た目の通り、炎を操る。特性として、ニャルラトホテプの天敵だとされていた。

「クトゥグア。俺に加勢してくれないか?」

「……何で?」

「敵に、ニャルラトホテプがいるかも知れねぇ」

「分かった」

 流石、即決だ。

「俺は高宮時雨。時雨でいいぜ。お前はあの女と契約してんだろ?」

「うん。呼び出されたことで、コルヴァズから抜け出せたの。クトゥグアは義に熱い」

「厚いじゃね?」

「炎だけに。上手い?」

「あーはいはいそーねー」

「流された……」

「ま、ともあれ……だ。俺は、神を殺す。その為に、準備が要るんだ。お前らが乗ってきた機体……『名無し』を作ったあのテクノロジーを手に入れれば、何とかなるかも知れねぇんだよ」

 そう、あのめちゃくちゃな『名無し』を作れるだけの機械技術。あれがあれば、もうこちらは何も怖くない。

 が、こちらの思惑はどうでもいいのか、クトゥグアは片手を差し出してきた。

「なんだ? 友情の握手か?」

「お代わり」

「……ほらよ」

 時雨は苦笑交じりに、照り焼きバーガーを手渡したのだった。



 哉徒の病室には、気まずいムードが漂っていた。

 シャルロットは敵愾心をメラメラと燃やしながらラヴィニアを睨み、ラヴィニアも大人気なく睨み返す。

 そこへ、何故かフローレンスも加わり、三つ巴の状態になっていた。

「哉徒さん! この女の人は誰なんです!」

 シャルロットが頬を膨らませて、ラヴィニアへ指を差す。

 ラヴィニアも同じく頬を膨らませ、シャルロットを指差した。

「哉徒、このお嬢ちゃん、知り合いなの?」

「あなたもお嬢ちゃんじゃないですか!」

「私はこれでも三十台です!」

「じゃあおばさんじゃない! やーい、年増ー!」

「なっ!? し、躾のなってない……!」

「ええい、やかましいお前ら!」

 見かねた哉徒が止めに入る。

「えっとな、シャルロット。彼女はラヴィニア・ルー。オレの世界にいた頃の恩人で、上官だ」

「どんな関係?」

「……大切な人、だよ」

 言うと、鼻高々なラヴィニア。

「じゃあ私は!?」

 シャルロットに対し、

「守りたい人だけど……」

 突如、オレを引っ叩くラヴィニア。うん、今のは分かってた。

「……英雄は気が多いと申します。流石は私のご主人様」

「フローレンス……フォローなのか、それ」

「いえ、別に。ただまぁ、正妻は私ですし」

情報源ソースはどこだ情報源は」

 なんてやり取りをしていると、ラヴィニアに首元を掴まれた。ていうか、本当に容赦ないな。一応、病人なんだぞ。

「この際聞きます! 私のこと、好きですよね!」

「み――」

「ぶっぶーっ! みんな好きなんて認めません!」

 シャルロットに先読みされ、どうしようもなくなる。

 と、救いの手が来た。モニターに何かが映ったのだ。

 ちなみに……そいつは、あの馬鹿の顔だった。

『よぉ、哉ちゃん。修羅場ってんなあ~受けるぜ』

「おい……時雨」

『あ? 何だよ、人がせっかく助けてやろうとしてんのに。随分とまぁ、つれねぇな。切るぜ?』

「ま、待て! 頼む、何とかしてくれ!」

『オーケー。じゃ、上映と行こうぜ。VTR、スタート!』

 突如、編集された映像が流れ出す。

 素人とは思えない、手ぶれのない舞台の映像だ。題は、灰被り姫とある。

「ちょ、これって……!? おい、テレビを消せ!」

『無駄だ、諦めろ。俺、報復は絶対にするんでね』

 気付いた哉徒だったが、もう遅い。


 シンデレラ? シンデレラ~!

『はい、叔母様!』

 出てきたのは……金髪のウィッグと蒼のカラコンを入れられた、哉徒の姿だった。


「哉徒!?」

 ラヴィニアが驚き写真を撮って(おい)、

「うぇえええええええっ!?」

 シャルロットが自分と見比べて悲しそうな顔をし(何故)、

「あらまあ、女の子ですねご主人様」

 フローレンスがそんなことを呟いた(覚えてろよ)。

「ああああああああああああああああぁぁぁぁ…………」

 声にならない悲鳴を上げる。そうだ、オレは動けない。

 この公開処刑を、黙って見守るほか、ないのだ。

『ちなみに、これ……全国ネットだから』

「時雨ぇええええええええええええええええ――――――――――――ッ!!」

 怨嗟の声を発しようとも、もう遅い。



 この劇は――

「うそ、哉徒……?」

 シュバルツガルドにも、届いていた。

「来てるんだ……この世界に」

 劇には、時雨のメッセージが編集されていた。そいつにしか分からない、秘密の暗号。

「……哉徒」

 誰かが愛しそうに、その名を呼んだ。

 そう、シュバルツガルドの、誰かが――――。

ぃやぁ、久々に更新です!

ちょいと文章能力が下がりました。ブランクのせいですね、きっと。

さぁ、哉徒の恋愛話がようやく進んできた。


最近、ギャラクシーエンジェルというゲームをやりました。昔、一世を風靡したゲームらしく、楽しくプレイ中です。

アニメが有名だそうですが、ゲームもいいですよ! ヴァニラ可愛いよヴァニラ!


では!

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