第十八話世界を繋ぐ刃
王都地下工房。
赤熱する炉。
呼ばれたのは王国最高の鍛冶師。
ドワーフ族長。
「聖銀鋼で魔王用の包丁だと?」
「ああ」
「正気か人間」
「料理の話だ」
「なおさら分からん」
アレンは設計図を描く。魔力逃がし溝。二重芯構造。
導魔紋様。
「力を制御できないなら、刃が制御すればいい」
ドワーフは目を細める。
「……理屈は通る」
王も立ち会う。
「これは外交だ」
「失敗すれば戦争だ」
「成功すれば」
「三勢力均衡」
リシアは静かにアレンを見る。
「三十日だ」
「ああ」
「戻るのだな」
「約束した」
「魔王と?」
「料理人としてな」
炉に火が入る。
聖銀鋼が溶ける。魔力が走る。ドワーフが打つ。
アレンが魔力の流れを調整する。王が静かに見守る。
騎士団が周囲を固める。これは武器ではない。
だが、世界を左右する。刃が形を成す。白銀に淡い紅の紋。魔力が流れ、逃げ、循環する。完成。静寂。
「……できた」
アレンが刃を持ち上げる。重い。だが安定している。
王が問う。
「持っていくのか」
「ああ」
「戻る保証は」
「ない」
「信じるか」
「王だろ」
数秒の沈黙。
「行け」
王は言う。
「世界を繋げ」
リシアが一歩出る。
「私も――」
「駄目だ」
「なぜだ」
「今回は料理人同士の話だ」
彼女は悔しそうに歯を食いしばる。
「……戻れ」
「努力はする」
前にも聞いた台詞。
だが今回は、消えない。 アレンは振り向かず城を出る。
残り、二十五日。
魔王領へ再び。




