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第十七話死者帰還

王都。

中央広場。露店の匂い。人々の喧騒。

その中を、黒衣の男が歩いていた。

「……騒がしいな」

アレンは空を見上げる。

亀裂はない。循環は安定している。世界は、回っている。

「良かったな」

誰にともなく呟く。

その瞬間。

「……え?」

果物屋の少女が固まる。

次に、衛兵が目を見開く。

「お、お前……!」

ざわめきが波紋のように広がる。

「英雄……?」

「爆心地で消えたはずでは……」

「幽霊か?」

アレンはため息をつく。

「腹減った」

それが第一声だった。

数分後。

王城。

「……本人か?」

王は報告を受け、即座に立ち上がる。

「間違いありません」

「怪我は」

「軽度」

「拘束は」

「……しておりません」

王は小さく息を吐く。

「玉座の間へ通せ」

その前に。

城門で。

「アレン!」

銀の鎧が駆ける。

リシア。

足を止める。数歩の距離。言葉が出ない。

「……生きてたな」

アレンが言う。

「……馬鹿者」

拳が飛ぶ。鎧越しでも痛い。

「死んだと」

「死にかけた」

「戻らないと思った」

「戻る理由があった」

短い沈黙。

彼女の目が揺れる。

「三ヶ月は?」

「まだ途中だろ」

ほんの僅かな笑み。

リシアは深く息を吸う。

「陛下がお待ちだ」

「だろうな」

「王と再会」

玉座の間。重い扉が開く。アレンは歩く。王と目が合う。

数秒の沈黙。

「幽霊ではないな」

「腹は鳴ってる」

「生きている証拠だ」

王はゆっくり座る。

「龍脈核は?」

「回った」

「完全にか」

「一応な」

「代償は」

「俺が吹き飛んだ」

 王の目が鋭くなる。

「どこへ」

「魔王領」

ざわめき。

騎士団がざわつく。

「……なるほど」

王は静かに言う。

「それで戻ってきた理由は」

「包丁を打ちたい」

「は?」

「魔王用の」

玉座の間が凍る。

「説明しろ」

アレンは淡々と語る。

魔王の弱体化。

循環の乱れ。

魔王の料理への興味。

魔力制御不能問題。

「三十日以内に戻らなければ、攻めると言われた」

空気が変わる。

「脅迫か」

「取引だ」

王は目を閉じる。

「……面白い」

側近が慌てる。

「陛下!?」

「戦うより良い」

王は立ち上がる。

「つまり」

「魔王は“回す側”に立つ気がある」

「可能性はある」

「確証は」

「ない」

「だが賭ける価値はある」

王の目が光る。

「鍛冶師を呼べ」


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