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第十二話三ヶ月の同行者

王城、執務室。

「副隊長リシア、入ります」

静かな足取り。玉座ではなく、実務机に座る王。

「要件は分かっている」

「……」

「三ヶ月、奴と同行したいのだろう」

リシアは迷わない。

「はい」

「監視か」

「違います」

「ほう」

「理解するためです」

王は書類から目を上げる。

「何を」

「彼を」

短い沈黙。

「騎士としてか」

「……個人としても」

王の目がわずかに細まる。

「感情が入る」

「否定しません」

「それでも行くか」

「はい」

王は椅子に深くもたれる。

「条件がある」

「承知」

「三ヶ月、騎士団籍は保持。ただし命令権は私にある」

「はい」

「国家存亡級事態が起きた場合、即帰還」

「従います」

「そして」

王の声が低くなる。

「奴を守れ」

リシアは一瞬、目を見開く。

「……よろしいのですか」

「奴が死ねば国が死ぬ」

「監視ではなく?」

「保険だ」

王は小さく笑う。

「それと」

「?」

「報告書は簡潔に書け。料理の描写は不要だ」

 ほんの僅かな冗談。

「……努力します」

三日後。

街道の分岐点。アレンは岩に腰掛けていた。足音。金属の擦れる音。

「……来ると思った」

「許可は得た」

「へえ」

リシアは旅装に近い軽鎧。大剣も背負っている。

「三ヶ月」

「ああ」

「同行だ」

「監視か」

「理解だ」

アレンは肩をすくめる。

「好きにしろ」

「嫌なら拒否できる」

「……面倒が減るなら歓迎だ」

「減る?」

「野営中に襲われにくい」

「私は番犬か」

「強い番犬だ」

わずかに睨む。だが怒ってはいない。

その夜。

野営。アレンは魔猪の肉を処理している。

「血抜きが甘い」

「討伐したのは私だ」

「だからだ」

淡々と指示。

「次から首元を確実に」

「……善処する」

肉を薄く切る。香草を刻む。脂を溶かす。香りが立つ。

「匂いだけで腹が鳴るな」

「鳴っている」

「……聞くな」

皿代わりの平石に盛る。

「食え」

一口。リシアは目を細める。

「……戦場の携帯食とは別物だ」

「当然だ」

「なぜ国に入らない」

不意に問う。

「料理が死ぬ」

「なぜ」

「縛られると、余計な味が混ざる」

「余計な味?」

「焦りとか、義務とか」

焚き火が揺れる。

「俺は、腹が減った奴に出す料理が好きだ」

「王も飢えている」

「腹じゃない」

沈黙。

「……心か」

「知らん」

短い言葉。だが本質を突いている。

数日後。

二人は山岳地帯へ入る。魔物の群れ連携して迎撃。

アレンが魔力を崩し、

リシアが一撃で断つ。

「今のは見事だ」

「そっちの崩しもな」

自然な会話。追う者と逃げる者の距離ではない。並んで戦う距離。

夜。

星空。

「三ヶ月後」

リシアが言う。

「どうする」

「まだ考えていない」

「私は戻る」

「だろうな」

「お前は?」

「旅だ」

「……そうか」

少しだけ、間が空く。

「だが」

アレンが言う。

「三ヶ月で国が回るなら、考える」

「本当か」

「料理が不味くならない範囲でな」

リシアは小さく笑う。

「基準が分かりづらい」

「俺には分かる」

火が静かに揺れる。

二人の影が並ぶ。まだ平行線。だが距離は、確実に縮んでいる。


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