表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鳴々奇譚  作者: nocchi
序章 桃花庵
6/8

序章6 交流

鴉取の足音が遠ざかると、部屋の空気は急に軽くなったようで、それでいて言いようのない緊張感を残していた。

澪音はふたりの様子を気にしながら立ち上がり、小さく微笑んで声をかけた。

「ちょっと村長さんを呼んでくるね。すぐ戻るから、休んでいて」



そう言い残し、襖を静かに閉めて部屋を後にした。



残された雛汰は隣で伏せる悠明を横目で見やり、少しの沈黙の後に口を開いた。

「なぁ、悠明……。あの夜、ほんとは何があったんだ?」



問いかけは真っ直ぐで、幼いながらも必死さが滲んでいた。だが悠明は答えなかった。顔を横に背け、布団に沈み込むようにして目を閉じる。



その仕草に雛汰は唇を噛んだ。

「……ごめん。無理に聞くつもりはなかったんだ」

彼はそれ以上は追及せず、ただ静かに隣に寄り添った。



やがて襖が開き、澪音が村長を伴って戻ってきた。

白髪混じりの髭を蓄えた村長は二人を見て、柔らかい声をかけた。



「大事な思いをしたな。怖かったろうに……。今は休むことが一番だ」



その言葉に雛汰は小さく頷き、悠明は視線を落としたままだった。



村長はふと眉を寄せ、鴉取のことを尋ねた。

「さきほどの男は……何者だ?」



その答えを担ったのは澪音だった。

「天嶺院学術堂の長、鴉取さんっていう人……。事件のことを調べるために、二人に天嶺院へ来てほしいって」



澪音はさらに問う。

「……天嶺院って、どんなところなの?」



村長は深く息を吐き、慎重に言葉を選んだ。

「天嶺院は、この秋津国の魔術の中枢だ。研究と軍事、その両方を担っている。なかでも学術堂は研究の要でな……鴉取という人物がそこで長を務めているのなら、彼の言葉には一理あるだろう」



少し間を置いてから続けた。

「織枝さんのことも、天嶺院なら何か掴めるかもしれんなぁ」



村長は視線を柔らかくし、力強く言い切った。

「それに織枝さんには、わしら村の者もずいぶん助けられた。だから残った子らの面倒は村で見る。安心して行くといい」



澪音は二人を見回し、胸に手を当てた。

「じゃあ、私が看病する。少しでも早く元気になれるように、できることは全部するから」



その言葉には強い意思があった。彼女自身も不安を抱えていたが、それ以上に二人を支えようとする気持ちが勝っていた。



雛汰は弱々しくも微笑み、悠明は沈黙を守りつつもその瞳にわずかな光を宿した。

澪音の小さな決意が、閉ざされかけた二人の心をほんの少し和らげていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ