序章1 桃花庵
秋津の国の片隅に、桃花庵と呼ばれる小さな孤児院があった。
木造の建物は少し古びてはいるが、中庭に咲く花々や漂う木の香りが穏やかな安らぎを与えてくれる。
ここで暮らす子供たちは血の繋がりこそないが、互いを家族のように思い合っていた。
その庵を支えるのは、孤児たちに「先生」と呼ばれる一人の女性――桃花織枝。
優しさと厳しさを併せ持つ彼女は、子供たちに読み書きや算術、そして魔術の基礎を教えていた。
彼女の笑顔は、庵にとって太陽のような存在であった。
7名の子供たちが暮らしており、織枝から“家族の証”として苗字「桃花」を授かっており、そんな子どもたち中でもひと際目立つ子供が2人いた。
吸い込まれるような黒い髪色と混じり気のない黒い瞳をした少年 ——桃花雛汰
陰りを知らぬ陽光のような金髪と曇りひとつない黄金の瞳を持つ少年——桃花悠明
彼らは他の子供たちの中でもひと際目立つ存在であった。
雛汰は魔術や算術には疎いが明るく仲間想いで、身体を動かすことに関しては誰よりも頼りになる存在だった。
悠明は魔術や算術の才脳に溢れており穏やかで物静かだが、雛汰の後を追うような内向的な性格の少年であった。
この二人の才能が周知された出来事として、川で溺れていた溺れていた少女を助けたことがあり、村の大人でも取得が困難な浮遊魔術を雛汰に付与して救出したことがあった。
雛汰は川下で少女が流れてくるのを待ち、悠明は少女の流れを読み、雛汰を動かし救出した。
桃花庵に帰れば織枝からひどく叱責されたが、村の大人たちの感謝のお陰で大事にはならなかった。
雛汰は悠明の才能をとても誇らしく思い、悠明は雛汰の勇気をとても誇らしく思い良き友として成長をするのであった。