006 フィアとリナ
逃げていく足音が次第に遠ざかり、路地裏には再び静けさが戻ってきた。
俺は――一目散に逃げていくあいつらの背中を見送りながら、ぼんやりと回想にふけっていた。
(……どうやら、この四千年の間に魔法はずいぶんと衰退してしまったらしいな。
平和になったことで、多少は退化するとは思っていたが……まさか、詠唱が必要になるほどにまでとは)
なんともはや、ため息すら出る。
そんなときだった。
「……あ、あのっ!」
突然かけられた声に、俺は思考から引き戻されて振り返る。
先ほどナンパ男に絡まれていた少女たちだった
「助けていただいて……ありがとうございましたっ!」
金色の少女が、ペコリと頭を下げる。
その隣では、白銀の髪を持つ少女が、控えめに「ありがとうございます」と囁くように礼を言った。
「いや、あれくらい大したことじゃないよ」
実際、大したことではなかった。だからとりあえず、ぺこぺこと頭を下げている二人を軽く促して顔を上げさせる。
……しかし、改めて見ると、この二人――なかなかの美少女だった。
金髪に碧眼、気品ある顔立ちの少女と、雪のように白い髪と淡い緑の瞳を持つ少女。
まるで物語から抜け出してきたような美しさだ。
「……あの、もしかして……あなたも魔術学院の入学試験を受けに来たんですか?」