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きいて

なかなか自分達の関係を言わないシーダにリヒトーは一旦諦めて別の事を聞く事に決めた。


「質問を変えよう。自分が記憶喪失になった原因を知っているのか?」

「…うん。少しだけ。」


この質問には答えてくれるようだ。


「えっと。上空(うえから) 陽斗っていう人覚えてる?」


リヒトーは陽斗の名前は覚えていた。

他にはリヒトーの事を季花と呼び記憶喪失になってから初めて会った男という事しか覚えていない。


「顔と名前だけなら知っている。」


陽斗が気になる事を言っていた事をリヒトーは思い出し、シーダに事実確認をしようと以前陽斗に言われた事をシーダに話す。


「陽斗というやつに自分の婚約者だと言われたんだがそれは本当か?」

「婚約者!?」

「違うのか? それともお前が知らなかっただけか?」

「違う違う絶対に違うから! あいつの嘘。嘘だから!」


婚約者という言葉にシーダは強く否定する。

なぜジータがここまで取り乱すのだろうとリヒトーは思ったが、知りたかったのは婚約者であるかどうか。話を掘り下げて先ほどのように言葉を詰まらせては時間の無駄だと思ったリヒトーはそれ以上追及はしなかった。


「君はあいつに拐われたんだよ。あいつは記憶のない君に嘘を吹き込もうとしたんだ。」

「なぜそんな事をしたんだ? そんな事をする利益が自分にあるとは思えない。」

「え?! えっと。そのー。」

「またか。言いたくないならもういい。」


再び言葉を詰まらせたシーダ。

シーダが言葉を詰まらせる理由が心底分からないリヒトー。問い詰めるほど気になっていないため別の質問をする事に決めた。次の質問はリヒトーが一番気になっていた事。


「次の質問だが、これには答えてもらう。なぜ自分を助けた?」


吸血花と剪定士は敵対関係。にも関わらずシーダは腕を切り離して手助けをし、追手を撃退し、必要な物を与えてリヒトーを助けた。今だってリヒトーに対して好意的な態度をとり質問に可能な限り答えている。

しかし記憶を失っているリヒトーはシーダがここまでする理由が分からなかった。吸血花が剪定士を助ける理由などリヒトーは思いつかなかった。


シーダはまた黙り込む。

リヒトーは黙って話すのを待ち続けた。

しばらくした後、観念したのかシーダは口を開いた。


「君は、俺にとってかけがえのない人だから。あいつに取られたくないって思って、助けた。」


顔をほんのり赤く染め下を向いたまま。それでもシーダは質問に答えた。


「…は?」


リヒトーは予想外の答えが返ってきた事で呆れている。


「いや待て。なんの冗談だ。」

「冗談じゃない。」


リヒトーはシーダの言葉を信じられなかったが、今度はリヒトーと目を合わせて話すシーダの目を見て本気だと気がついた。


「自分とお前はどんな関係なんだ?」


リヒトーはもう一度同じ質問をする。今なら答えが聞き出せると思ったからだ。

また顔を下に向けて顔をさらに赤くしたがシーダは答えてくれた。


「最初は敵対していた。でも、何度も戦っていくうちに話すようになって。約束したり、髪を切ってもらったり。一緒に過ごしていくうちに君の事がす、好きになって。…その。」  

「告白でもしたのか?」

「…はい。」

「その時の自分はなんて答えたんだ?」


シーダはその質問には答えなかった。絶対にリヒトーと視線を合わせず顔を真っ赤にしてもじもじしている。

これ以上は聞けないと分かったリヒトーはしばらく考えた後、自分の考えを口にする。


「自分には剪定士としての記憶がほとんどない。お前の事も覚えていない。お前が嘘を言っているとは思えないが、完全に信じる事はできない。」


それを聞いたシーダは落ち込む様子を見せる。


「だけどお前に助けられたのは事実だ。」


リヒトーの言葉にシーダはゆっくりと顔を上げる。


「お前がいなかったらあそこから逃げられなかった。礼を言う。ありがとう。」

「リヒトー。」

「服も用意してくれてありがとう。」

「うん。気に入ってくれた?」

「もちろん。」


剪定士としての記憶がないリヒトーは先ほども言っていた通り完全に信用してはいない。しかし、リヒトーはシーダに対して嫌悪感を一切感じなかった。話していくうちに心地よさ、あるいは安心感を感じている。

陽斗と会った時は神経を逆撫でされるような不快感を常に感じていた。記憶を失う前から関係が悪かったのだろうとリヒトーは結論つけた。


嘘をついて自分を閉じ込めようとした人間の陽斗。

自分の事を心配し、助け、できる限り本当の事を言ってくれる吸血花のシーダ。


信じるならシーダにしようとリヒトーは決めた。

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