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1-4 特訓

"Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever."

 2日目の食事(夕食)にて。


 「今日で2日目が終わる訳だが、正直、人生で一番長い2日間だった。」


 ランバートはそう言いながら肉を食べる。

 アリスは激しく頷いていた。


 「入学式は7日後と言われていたから、その日には学園に行かなきゃならねぇ。流石にわかるだろ?」


 「日が昇って夜になって次に日が昇ったら次の日。」


 「よし。それで…」


 もはや、ランバートは一般常識をジゼルに求めていない。


 「それまでの時間は俺らの好きに使えるってことだ。正直、俺は諦め半分でここに来た。が、ジゼルが魔物を倒し、アリスも魔物を倒した。俺はここで殺されるつもりはねぇ。」


 ジゼルは珍獣を見るような目でランバートを見たが、アリスは真剣な面持ちで唾を呑んだ。


 「このクラスは放任と聞くが、担任は一応付くらしいし、数ヶ月と保ったことがねぇから確実なことはいえねぇが、自由な時間が減ることは確かだろう。」


 ジゼルは首を傾げ、アリスは頷いた。


 「でだ、俺は入学式までに魔物を仕留めたいと思う。」


 アリスは目を見開いた。

 ジゼルは特に反応を示さなかった。


 「ついでに練習を積んで魔法の腕も含めて強くなる。俺はそう決めた。」


 冗談のような話だが、彼の表情が彼は本気であると物語っていた。


 「だから、ジゼル。強くなる方法を教えてくれ。」


 急に話を振られたジゼルが驚いている。


 「お前も暇じゃねぇだろうし、やりたいことも色々あると思う。俺は頭がよくねぇから、工夫もできねぇ。ずっとついていろなんて言ってねぇ。ただ、お前が強くなった方法を教えてくれ。」


 馬鹿正直でまっすぐな質問にジゼルは裏も読まずに真っ直ぐ答えた。


 「山を走る。狩りをする。魔物を倒す。迷宮に潜る。以上。」


 「わかった。それをやろう。」


 愚直なまでのその態度にアリスは衝撃を受けた。

 向こうみずな努力を続けられるバカは凡人を通り越して天才である。


 「あ、あの。」


 それを見たアリスが声をあげた。


 「私はっ!…強くなりたいとか、そういうのは思わないです。…けど、2人の役に立ちたい、とは思います。足手まといになんてなりたくないし、役立たずではいたくないです。魔物は倒せたけど、結局、運べなかった。いつか、捨てられたくはない、だから、役に立てるようになりたい、です。だから、その…筋力をつけたいです。あとは、薬草とか、魔道具とか、色々あると思いますけど。まずは力仕事をできるように、なりたい、です。その、どうしたら、いいと思いますか…。」


 ジゼルにお伺いを立てる。


 「…走る。井戸から水を運ぶ。木を走る。」


 「井戸…?」


 アリスは疑問を口にする。


 「地下水、地面の下に流れている水を掘り出す場所。この森にもひとつ見つけた。」


 ジゼルは丁寧に説明をする。


 「山で暮らしていたとき、迷宮に籠っていないときは必ず井戸から水を取っていた。」


 「魔道具は?」


 「あった。でも、使ってなかった。」


 ジゼルはランバートの問いにもそう答えた。


 (…確かに重いものをもてば筋力はつく。自己強化魔法も使っちゃダメってこと…。)


 アリスは何度も頷いた。


 「で、ジゼルはその日までなにするつもりだ?」


 「アイテムボックスを覚える。」


 ランバートに尋ねられたジゼルは一つ答えて、少し考え込んだ。


 「…服に魔法を付与する。」


 そして、驚愕の一言を放ったのだ。


 「付与…もう驚くのも疲れたが、服というのはこれか?」


 ランバートが支給品の服を指さすとジゼルは頷いた。


 「これを着て戦うと聞いた。」


 「そう言ったな。」


 ジゼルはランバートに確認をする。


 「これで戦うのは危険だと思う。魔法が一切付与されていない。」


 「…聞いたことがあります。 I 組の実習服には魔法を付与していないそうです。理由は転売目的で出願する人が出るから、だそうですが…。」


 「ただの服、か。予想はしていたが、キツイな。これじゃ、このまま戦闘しているのと変わらねぇ。」


 「そうですね…。」


 ジゼルは薄々気づいてはいたものの、服に魔法を付与していない彼らにドン引きした。


 「で、テメェは付与ができるってことか?」


 ジゼルは黙って頷いた。


 「難しくないなら、明日にでもやり方を教えてくれ。自分でやる。」 

 「私も、です。」


  ジゼルはまた頷いた。


 「っつーことは。明日は服の処理が優先で、あとは各々鍛えるってことでいいか。」


 「は、はい。」


 アリスは返事をし、ジゼルは頷いた。


 「よし。なら、お前ら、先にシャワー行ってこいよ。初日に確認したんだ。アリスはわかってんだろ?」

 「はい。」


 「俺の後に入るとか嫌かもしんねぇから先に入れ。」


 ランバートはシャワーを浴びるように促す。


 「シャワー?」


 ジゼルが疑問をもっても、ランバートもアリスも慣れたように対応する。


 「それはアリスに説明してもらえ。2人で入ってこい。遅くなってもいいから。」

 「わ、わかりました。ジゼルさん、行きますよ。」


 アリスはジゼルを引っ張ってシャワーを浴びにいく。


 ランバートは残って、ノートに書き込みを続けるのだった。



♦︎♢♦︎


3日目


 次の日、朝から実習服の改造が行われていた。

 簡易的な裁縫をするのに必要な針はジゼルが持ち歩いている。

 そう、重傷を負ったときに自らの傷を縫合できるように…。


 「痛っ!」


 一番苦戦していたのはランバートだ。

 裁縫未経験だったらしく、先ほどから何度も針を指に突き刺している。


 ジゼルは問題なく進めていたが、それよりも速いのがアリスだ。


 「その、幼い頃、淑女の嗜みとして母が教えてくれました。それ以降は家族のドレスの直しや刺繍もしていて…。」


 ジゼル顔負けの速さだ。

 指示をすればその通りにこなしてしまうが、指示をしなければ何もわからないため、終わってからジゼルが追いつくまではノートに記録をしていた。


 「やっぱ回数なんだな。男は確かに裁縫を習わねぇが、男だからできなくていいってことじゃねぇもんな。」


 溜息をついて、またもう一度始める。

 根気強いのは彼の美徳だろう。


 ジゼルは自分の服や傷を塗ってはいるが、その回数は多いとはいえない。

 まともに服を作れるようになるまでは練習を頻繁にしていたが、それ以降の練習はしていないため、アリスに及ばないのは当然だろう。


 「クッソ、痛っ!」


 針で指を刺してもそこまで痛くはないが、気になる程度には痛い。

 

 さらに、魔法の練習の一環として、怪我をするたびに治癒魔法をかける。


 「遅い、無駄が多い。」


 ジゼルは厳しいのではなく、事実を言っているだけなので、ランバートは余計にショックを受ける。


 「少し時間がありそうなので井戸で水を汲んできます。」


 アリスはそう言って建物を出て行った。


 最初の段階でランバートが躓いたとき、ジゼルはアリスを井戸の場所へ案内し、使い方を指導した。

 そして、これが3度目。

 初日や2日目のジゼルのようにわざと魔物を寄せつけようとしなければ複数の魔物が現れるなんてことはそうそうない。


 アリスは初日から少しずつ前向きになってきていた。


 ジゼルはアリスが終えてからしばらくしてその作業を終えて、本を読み始めた。

 アイテムボックスの本だ。


 各々が自らの課題と向き合う時間。

 それは、それぞれが成長するための時間だ。


 その間、"痛っ"という声が定期的に聞こえていたが、それもまた成長しようともがいている者の証だ。



 しばらくして夕暮れどき。


 「一応、下準備はこれで完了。」


 ジゼルがこう言ったとき、ランバートから雄叫びが上がった。


 ランバートは1日を使って、なんとか裁縫をする下準備を終えたのだ。


 「あ゛〜。だが、これが下準備って、明日はどんだけキツイんだ。」


 「…裁縫はしない。魔法を付与するだけ。難しくはない、…いや、分からない。」


 頭を抱えたランバートにジゼルが救世主のような声をかけたと思ったら雲行きが怪しい。


 「…大丈夫。失敗してもやり直すだけ。最初から。」


 「は?」


 一気にランバートが青ざめた。


 「まさか、下準備から…?」


 「…」


 ジゼルは黙って頷いた。

 そしてランバートは沈み込んだ。


 アリスは汗だくで倒れ込んでいる。

 運動量が半端じゃなかったからだ。


 家を動き回るよりも、平坦ではない森の地面を動く方が当然体力を消費する。

 5往復目までは水を汲んでいた。行きは空のバケツをもって走り、帰りは水をなみなみに入れて歩く。

 そして、その次からは木を伝って動く練習だが、木に登ることすら困難で、ひたすら木登りをしていたのだ。


 手足にある無数の傷は努力の証だろう。


 いろんな木に登り、特徴に合わせて登り方を変えることも学んだ。


 「…アリス、とりあえずシャワーを浴びてこい。風邪ひくぞ…。」


 ランバートはアリスに自らも(精神的に)死にかけながら言った。


 「傷はしっかり洗う。」


 ジゼルもアリスに声をかけた。

 ランバートが魔法で回復させないのはその処理を学ぶためだから当然とも言える。


 それを思い出してアリスは体に鞭打ってシャワールームへ移動した。


 「…俺は飯を狩ってくるか。」


 そう言うと、ランバートはなんとか立ち上がり建物の外に出た。


 「…」


 そしてジゼルは少し考えてからランバートに続いたのだった。


 「俺じゃ心配か。」


 ランバートは着いてきたジゼルにそう尋ねた。


 「魔法で攻撃したい?」


 ジゼルはランバートに問い返した。


 「そりゃしてぇよ。」


 そう言うとジゼルは頷いて、安全地帯の外に出た。

 ランバートもそれに続く。


 ジゼルは徐に手をあげて狙った葉を一枚だけ落とした。


 「…無属性魔法、魔力弾。副次効果がない代わりに魔力効率がいい。さらに、相性が関係ない。」


 ジゼルは静かに説明した。


 「魔力をそのまま集めて打ち出しているのか…。」


 ジゼルはランバートの理解に軽く頷いた。


 「魔力を集めるのは他のどんな魔法とも同じ。打ち出すのも、同じ。あとは、自分で調整をするだけ。」


 そう言ってジゼルは安全地帯の中へ、寮の中へ戻っていった。


 「これで鳥を狩れってか?」


 ランバートはひとり夕空を見上げて言った。


 「上等じゃねぇか。」



 日が完全に落ちて夕飯をそろって食べる。


 「時間が掛かっちまったが、それは狙いがさだまらねぇからだってことは分かってる。練習しかねぇな。」


 ランバートは不敵な笑みを浮かべながら言った。


 今日のメニューは事前に処理してあった魔物の肉の残りと今日ランバートが狩った鳥1匹だ。


 「…井戸の水がこれほど美味しいとは思いませんでした。」


 限界に近い運動で半分おかしくなっているアリスは自分でとってきた井戸の水が美味しくて仕方ないらしい。感動のあまり涙を流している。


 (概念はわかった、あとは術式が…)


 ジゼルはアイテムボックス実現が近づいていることを考えながらご飯を食べる。


 「…そういや、アリスってどういう境遇なんだ?聞いちゃまずいか?」


 ランバートは疑問に思っていたのかアリスに尋ねた。


 「いいえ、でもなんでですか?その、ランバートさまが気にすることではないと思うのですが。」


 アリスは逆に尋ね返した。


 「そりゃ、常識がズレてるからに決まってんだろ。」


 「へ?」


 アリスは思わず間抜けな声を出した。


 「ランバートさまの方がおか、常識から外れているのではないですか?その、高貴な方ですので。」


 「今、おかしいって言おうとしたな?ここ数日で気安くなってくれたのはありがてぇが。前も言ったが、俺はそこまで高貴じゃねぇ。追い出される前からそういう教育は受けてねぇんだ。最低限のマナーと考え方くらいか?10歳くらいまでは色々やってたが…。」


 アリスはかなり図太く、それが表面に出るようになってきた。

 魔物と対峙すれば誰しも変化があるだろう。


 「とにかくだ。1日1食を当然と思っている時点でおかしい。それに、この建物の掃除をなんてことないようにこなすのも普通ではない。ついでに、初日に謝ってたのは俺の声への条件反射かなんかだろ。俺の声はもとからこうだが、なんか謝らなきゃならねぇ状態だったんじゃねぇのか?」


 アリスは困ったような顔をした。


 「…その、まぁ、そうですね。5歳のころに母が亡くなって、それからすぐに来た継母、姉妹との折り合いがよくなくてですね。…父はもともと母とも仲が良かったわけではなく、私もどうでもいいようでしたので。その…色々あって追い出されたということです。」


 「無理に聞くつもりはなかったが、思った以上に重いな…。俺がいかに恵まれていたか実感するよ。」


 ランバートはそう言い、ジゼルは黙っていた(理解していなかった)。


 その後、ジゼル、ランバートの順にシャワーを浴びてから眠った。


♦︎♢♦︎


4日目


 「体が軽い…?」


 朝起きてそう言ったのはアリス。

 筋肉痛になるかと思ったが、体がスッキリしていて、むしろ、昨日の鍛錬が身になっているような…。


 「いや、俺も心なしか…」


 ランバートは魔力の感覚がより鮮明になっていた。


 「魔物は栄養価が高い、から。」


 ジゼルはそう言うが、2人はそれどころではないと心の中で叫んだ。


 服に魔法を付与するというのが最大のミッションである。

 

 失敗することも見越して、余った魔物の皮を使って何度も、納得がいくまで練習をした。


 「次はこの魔法。」


 簡単なものから順に練習をして、成功回数を重ねていく。


 ジゼルは数回練習してから自分の実習服に付与をし、一発で成功させた。


 そして、ランバートとアリスは練習を何度も重ねていた。


 「あの地獄(下準備)を再び見るつもりはないっ!」


 ランバートは鬼気迫る様相、よほど裁縫が嫌いと見える。


 魔法付与に使用する素材は口にするわけではないため毒殺した魔物も利用している。念の為に本番は毒殺した魔物を用いていないが、練習は気にする必要がない。


 気分転換の井戸の水汲み及び魔力弾射撃を折り混ぜながら1日使って付与が終了。

 

 ジゼルはアイテムボックスを理解、発動に成功。


 「想像より魔力を使った。改良が必要。」


 実は、ジゼルはアイテムボックスを使うにあたって魔力量が足りず、使用可能魔力を制限していた耳飾りを1段階解放したのだ。耳飾りはダイヤル式で、回すことで使用可能魔力量を変動させることができる優れもの。学園の装置すら欺く代物なのだ。


 ジゼルは魔女を見ていたため、もっと魔力消費量が少なくなるはずと考えて、改良を決意した。


♦︎♢♦︎


5日目


 服へ魔法を付与し終わったため、完全に自分たちの修練に時間を割けるようになった。


 「今日はそれを着て過ごす。」


 ジゼルは実習服に着替え、意図を説明した。


 「魔法が発動するかどうかの確認、魔力を流し続けることの練習、並列魔法の練習。」


 「よく分からねぇが…つまり、テストと練習を兼ねてるってことだな。」


 ランバートとアリスも素早く着替えた。


 ランバート、アリスは最初こそ練習の意味が分からなかったが、次第に理解できるようになってきた。


 「嘘だろ、常に魔力流しながら動くって、集中力をどこに向ければいいんだ!」


 失敗を繰り返しながら、無理だろ、と叫んでジゼルを見ると、常時発動されている。

 そして、別の意味で嘘だろ、とランバートは心の中でつぶやいた。


 ジゼルはランバートとアリスが初めて魔法が付与された服を身につけると聞いて、魔女が初めての服に施した魔法を付与したのだ。


 それは、魔力を正しく流し、魔法が発動されていると、袖口と肩のラインの色が変わるというものだ。


 最初の頃はジゼルも発動させながら別の行動ができなかった。

 しかし、2日も意識して着てると少しずつ余裕が生まれてきたのだ。

 さらに暫くそれを続けると、魔法を同時に複数操ることができるようになったのだ。


 服の魔法を常時無意識的に発動させていなければ、不意打ちで攻撃を仕掛けられたときに対応できないというのが一番の論点であったが。


 その日はジゼルは魔力量の軽減に成功、ランバートとアリスはヘトヘトになって終了した。


♦︎♢♦︎


6日目


 その日ジゼルはアイテムボックスにどれだけの容量があるのかを実験した。


 しかし、結局のところ、容量が判明することはなかった。

 何故なら、容量が判明する前に入れるものがなくなったからだ。


 これは、無限と考えてもいいかもしれないとジゼルは思ったが、取り出すときの方法に頭を捻らせ、それぞれ入れるものに意識的に名前をつけることで解決した。また、全てをだせ、というと全ての中身を出すことができることを発見した。


 この日、ランバートは偶然魔物に遭遇し、魔力弾を腹に打ち込むことで長期戦を戦い抜きなんとか倒した。


 「昨日よりはマシだが…」


 ランバートは遺言を残してこときれるように眠った。

 アリスも同様だった。



♦︎♢♦︎


7日目


 「無意識、とまではいかないが、常時発動はできるようになったぜ。」


 「疲れますが、私もなんとか…。」


 苦しみながらもランバートとアリスは常時発動を習得した。


 また、アリスは木の上の移動がぎこちないながらも可能になり、井戸の水も以前よりはマシになった。


 ランバートは魔力弾の魔力消費量を抑えることができるようになっていた。

 服の魔法を起動させながらの魔力弾は並列で魔法を使う一歩前の段階で、かなり大きな進歩といえそうだ。


 ジゼルは矢を大量にアイテムボックスに仕舞い、矢の取り出しをスムーズにしながらの早撃ちを練習した。

 これにはジゼルも苦戦しており、鍛錬が必要と判断した。


 「で、だ。明日はいよいよ学園の入学式という訳だ。いいか、多くの嫌がらせが予想されるが、毅然として対処する。そして共有する。報連相を大事にしろ。」


 「はい。」


 「ホウレンソウ…」


 「わかってるよ、報連相が何か、だろ?報告、連絡、相談。なにかあったら、必ず全員で話し合っておくんだ。誰か1人がされたことが他の人にされる可能性は大いにある。」


 ジゼルが言葉を知らないことはすでに折り込み済みなランバートはかなり馴染んだと言える。


 「わかった。攻撃が事前に分かっていれば事前に防ぎやすい。」


 「珍しく理解が早いじゃねぇか。そういうこった。だからジゼルは手札を隠せと言ったんだろ?」


 ランバートの言葉にジゼルは軽く頷いた。


 「まぁ、予想されることは…全員制服なのに俺らだけ実習服、というやつだな。正直、貰った時とは別物だが、制服と違うことに変わりはねぇ。色んな目を向けられるだろうが、気にするな。これに関しちゃジゼルは問題ないが、アリスか…。随分前向きになったが、そういう目線は苦手だろう?」


 「は、はい。」


 青ざめて頷いた。


 「無理に気丈に振る舞えとは言わねぇ。ただ、俺らがいる。それだけ、しっかり頭に入れとけ。1人じゃねぇ。」


 「はい。」


 アリスは頷いた。


 「そして、ジゼル。」


 ジゼルは首を傾げた。


 「いいか、俺らに危険が迫ったとき以外は何かあったら小声で俺かアリスに聞いてから行動しろ。下手に目立つと面倒だ。お前の行動は理にかなっているし、俺らのことを考えてくれてるのはわかる。だが、周りからはどう思われるか分からねぇ。正直、お前はどう見られても気にしないだろうが、卒業後、何かに目をつけられて自由を奪われるのは望むところじゃねぇだろう。たとえ、お前が強くても、こういう政治方面は向いてねぇ。だから、できるだけ俺らと一緒に行動してくれ。」


 「……分かった。」


 「不服そうだが、頼んだぞ。」


 ランバートはそう言った。


 そのとき、パッと灯りが消えた。


 「魔力切れ…」


 「まさか、魔石の魔力を全部消費したってのか?まだ、一週間も経ってねぇぞ。それに、なるべく使わねぇように魔石も取り外して…。」


 「使い勝手が悪すぎじゃないですか…。」


 ジゼルはアイテムボックスから魔石を取り出して手元を魔法で明るくし、作業をした。


 数分後、灯りが再びついた。


 「魔物って、世間ではそう簡単に狩れるものじゃないですよね。その…私たち倒しちゃってますけど。」


 「あぁ。そうだった筈なんだがな…。」


 「あの程度の魔物から取れる魔石ではこの程度。」


 アリスとランバートは常識が破壊されてどこかに行ってしまったことをどこかを見ながら悟った。


 その後、シャワーを浴びてから、就寝した。

題名はガンジーの言葉より。

"Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever."

訳 : 「明日死ぬかのように生きなさい。永遠に生きるかのように学びなさい。」


日々に悔いを残さぬように鍛錬を重ね、貪欲に学び続ける彼らにぴったりの格言です。

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