ヒーローが変身する2分間ぐらいは一切攻撃をしてはいけません...って何で攻撃してくるんですかあ!!!
「あークソ!夏休みだっつーのに出動するのかよ!!」
赤いジャージを見にまとった男ははそう呟いた。先程から壁に設置してあるサイレンがウーという音を鳴らして騒いでいる。
カレンダーを見る。もう9月だが、どっかの誰かさんのおかげで、これからもずっと夏休みとなっているのに自分たちはこの音が聞こえると出動しなければならない。
なぜなら俺たちは怪人を倒すヒーローなのだから。このサイレンは怪人が出た事を知らせるものなのだ。
「はー、行くぞ」
「おう」
隣にいた青と緑のジャージの男はその声に赤いスーツの男とともに立ち上がり、だるそうな足取りで部屋を出た。
「行くぞ!!へんしーん!!」
ハサミのようなものを手に装備した怪人を目の当たりにして、3人のヒーローは決めポーズをする。決めポーズが決まるとベルトの『ダ』と書かれた文字が回転し、3人の男は光に包まれた...のだが、それは予期せぬ事態に中断されてしまった。
ちなみにダはダイレンジャーという男達のヒーローネームの「ダ」のことだ。
「え?」
明らかに、あの怪人が攻撃してきたのだ。いや、敵なのだから攻撃すること自体はおかしくはない。おかしいのはタイミングだ。
この手の変身シーンで攻撃するというのは基本的にないことだ。だってそんなものを見たことなんて誰もないだろう?
「え?あの、ちょっと...」
「ン?」
「いや、うん?じゃなくて、変身中なんだか?」
「ソレガドウシタ?」
言葉が通じることはこの際別にいいとして、それ以上に気になる事を、赤いジャージの男は問いかけた。
いや、攻撃してくるなんて、そんな...
「いや、普通変身するシーンなんだから普通は攻撃してこないだろ?」
「ハア?アンナ隙ダラケナンダカラ、攻撃グライハスルダロウ」
「いやいや!おかしいだろ!!」
「どうする?これじゃあ変身できないぜ...?」
隣の青ジャージの男はは心配そうに赤ジャージの男に問いかける。赤ジャージの男としてはそれ以前に変身中は攻撃しないというものを無視していることに冷静なのがおかしいぐらいだ。
「いや、おかしいでしょ!ねえ?」
「なにが?」
「ナニガダ?」
味方も敵も首を傾げている。なんで分からないのかと言いたいところだが、今は確かにこの状況を打開する術を探さなければならない。何かないものか...。
「もう一度、へーん...」
そう言いながら怪人の方を見る。怪人はやはり攻撃する気満々でハサミになっている手を頭の方に向けてビームを発射する準備をしている。
「いややっぱするじゃん!!何なの?変身中は攻撃しないっていうお約束を知らないのか?お前は?」
「何ダ?ソレ」
「なんで知らないんだよ!くそ!頼ぞお前ら!時間を稼いでくれ!!」
青と緑のジャージの男達は何とか怪人の気を逸らそうとしている。その間に赤ジャージの男は変身をした。返信にも光に包まれてから手や足といったところにスーツが装着されるまで大体2分はかかる。だから2分ぐらいは時間を稼いでもらう必要がある。
「よし!終わった!」
赤ジャージの男は赤いヒーロースーツに変わっていた。変身が終わればあとは簡単。倒すだけならお手ものものだだ。軽々と怪人の攻撃を避けて殴る、蹴るの猛攻を仕掛ける。
その間に青と緑のジャージの男達もスーツに変身していて攻撃に参加した。3人がかりということもあって、簡単に倒せた。
「ふう...」
「強敵だったな...」
「ある意味な...」
倒れた怪人を見ながら3人は空を見上げた。
「なあ、変身中に攻撃しちゃいけないっていう奴だけど...」
赤ジャージは戦闘も終わり基地で煎餅をボリボリとかじりながらそう呟いた。それを聞いた。隣にいた青ジャージの男も煎餅を手にとって貪り始める。
「なんだそれ?」
「ええ?知らないのか?」
「ああ、全く」
赤ジャージの男は驚いた。こんなものは当たり前のようなものじゃなかったのか。まさか知らないなんて事があるのかと。だが事実、青ジャージの男は知らないと言っている。
緑のジャージの男がトイレから戻ってきて煎餅に気づき、立ったままその煎餅に手を伸ばす。
「なあ、お前は知ってるか?変身中は攻撃しちゃいけない...とか何とかっていう」
「さあ???知らないな」
青ジャージの男はそう尋ねるが緑ジャージの男も全く知らないようでそう返す何だそれはと赤ジャージの男は少し呆れたような顔をした。
「本当に知らないのか?」
「ああ、全く」
何という奴らだ、と赤ジャージの男は思った。そんな当たり前の事を知らないなんて...いや、怪人も知らなかったしそんなものは実はなかったのか?いやそんなことは...。
「敵だ!」
サイレンの音に3人は立ち上がり、外に出た。
「ハサミー先輩の仇!俺が打つっス!」
先ほど戦ったハサミをーの怪人に少し似た一周り小さい怪人はハサミで出来た手を向けながらそう言った。おそらく先ほど倒したやつのことだろう。
「こいつは簡単に倒せそうだな!!行くぞ!!!」
そう言い変身しようとした時、向こうからビームが飛んできた。その攻撃は男達に直撃し、変身なんて出来ず倒れ込んでしまう。
「やっぱ先輩が言った事は正しかったっスね!」
「てめえもかよ!!なんで変身中に攻撃するんだよ!!」
「だって隙だらけじゃねえっスか」
激昂する赤ジャージの男にその怪人はつまんなそうにそう呟く。
「変身中はするなって基本だろ!!」
「しょうがないっスねえ!!」
「それを聞いた男達は再び変身をするために手を上にあげる。またベルトの『ダ』の文字がクルクルと周り光に包まれる。よし、今度こそうまく行く...そう思っていた。
「終わりっスよ!」
先ほどより強い光線が飛んできて、変身中の男達に直撃する。男達は倒れたまま動かなくなってしまった。
それを確認すると、怪人は何やら
「ああ、ボスっスか?倒したっスよ?え?よくあの強い奴らを倒せたって?簡単っスよ!だって、変身中を狙えば、全然強くないっスから...これ先輩からの助言なんスよ...」