2.お仕事のターン!
なんとか落ち着いて働けそうなタナカ。そのお仕事とは…?
この国は、外から来た人間でここに住むことを希望する者には特定の職を与える。ここでいう特定の職というのは、あまり人気のない事故処理とか調査に特化していた。その代わり、生活費などは国の負担というカラクリであった。
研修を終えて数日、タナカは早くもくじけそうな気持ちと戦っていた。
建物は未知なる世界の入り口のような気がした。
今日も10時に2階のフロアに行き、でかい扉を開き、リモの前にある自分の机に座った。すると、リモから今日の仕事を1件、紙で手渡される。どうもトラブルがあり、第三の国のシキ王から、リモに人材要請が入ってきたようだ。トラブル解決の第一歩である内容把握の為、タナカはスーツに帽子をかぶり、アタッシュケースを手にするとすぐさま外へ向かった。
そして、タナカは今第三の国のとある場所に来ている。タナカの目の前で、2人の魔法使いがもめていた。2人のかたわらにはホウキが2本あり、1本は根元が折れ、もう1本は毛の部分が抜けていた。ひとまず、二人を他の人の邪魔にならないよう道の脇に移動し、一人ずつ話を聞いた。
金髪に碧い眼の若いチャラ男は今風な白いニットにインディゴのジーパン、灰色のローブといういでたちで、育ちが良さそうな印象だった。話を順にきくと、以下の通りだった。
「僕は、友人宅から自宅に向かって
大体時速20キロくらいで飛行していました。
高度はそんなに高くなくて、
地上から200mくらいだったと思います。
自分の進行方向に相手がいないことを確認した上で、
地上交差点AAKを直進していると、
突然相手が自分の真上から下降してきて
僕のホウキにぶつかりました。
相手のホウキの先と僕のホウキの柄が当たって
柄は折れてしまいました。」
タナカは、メモを取った。メモを取り終わった段階で、次は相手の話を聞く。
黒髪に紅い眼の中年くらいの真面目そうなイケてるおじさんは黒いインナーに灰色のジャケットとパンツで眼鏡、革のカバンを持っていた。男の話は以下の通りだった。
「私は自宅から勤務先に向かうところでした。
時速50キロで飛行していました。
高度は400mから200mに下降しようとしていました。
重要な会議に遅れそうで急いでいた為、
下降時に合図はせず、確認もしないまま、
減速せずに下降したら下にいた彼とぶつかりました。
お互いケガはありません。」
タナカは二人から話を聞き終わると、必要な作業を終えて後日、今後の流れを案内する旨を伝えて急いで第四の国の職場へ戻った。
リモに戻ったことを伝え、これから報告書を作成する旨を告げた。今日のトラブルは金髪チャラ男と赤目イケおじの飛行中に起きた事故ではあるが、どうも赤目イケおじの前方不注意が原因らしい。双方にケガはなかった為、ホウキのみの被害ではあるが、これが問題だった。
ホウキは高価でそうやすやすと買えるものではない。当然、賠償問題となりやすく額が高いとよりモメやすい。今回の要請も第三の国としては、当事者とは利害関係のない第四の国の人間を呼び、第三者的な立場から円満に解決・事態の収拾を図りたいのだろう。どちらがどれくらい負担するのか、というのは実を言うと粗方決まっているので、近い判例に当てはめつつ±要素も吟味していく。
しかし、毎回、全く同じケースではない為、まだ慣れてない新人のタナカはとても辛かった。その反面、困っている人を助ける仕事なのでとてもやりがいを感じてもいた。報告書はやはり慣れていないからか、一発OKとはいかなかった。リモから一部やり直しを言われ、結局報告書の修正で1日が終わった。
ところで、第四の国の調査メンバーにはそれぞれイメージカラーがあった。タナカはコーヒー色(こげ茶)である。第四の国では調査担当の事案が、全て紙で管理され、担当のイメージカラーのケースに1案件毎に分けられている。一目で仕事量や担当者、仕事のボリューム等がわかるようになっており、リモが全ての案件ケースを管理していた。担当は、部屋のインテリアの色から自分のイメージカラーを知ることが出来る他、わかりやすいようにイメージカラーの小物をどこかに身に着けるように言われる。非常にわかりやすいシステムになっていた。ふざけて調査メンバーがお互いを色で読んだりする場面があったが、タナカは『コードネーム:カフェブラウン』でやっぱり地味だった。
その後、なんとか修正の目途を立てて部屋に帰ってきたタナカは、もう寝たかった。
そう意味では、とても落ち着く色でよかった。
部屋は大好きなタナカだった。
なんと、魔法使いがいる世界でした。魔法使い同士が飛行してて事故るってどんなだ?と思いながらも、頑張って書きました。多分、沢山飛んでたらやっぱり1回くらい、あると思うんです。
リモ「ん?ホウキの先と柄がぶつかって柄が折れる…折れるか?普通。」
実はイケおじ、ホウキの先に革カバンをひっかけていたんです。チャラ男のホウキの柄に重力がのってる革カバンが直撃していました。が、タナカくんはそれを聞けていません。リモが後日フォローして情報を入手します。