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奇妙な話6【死を運ぶエスカレーター】600字以内

作者: 雨間一晴

(あれ?この人、さっきも私の前に居なかったっけ……)


 エスカレーターで男女が上に流されていた。


 二人ともスーツ姿で、典型的な就職活動中といった感じの風貌。後ろにいる女は黒いポニーテールに、幼さの残るぽってりとした顔だ。不思議そうに前にいる男を観察していた。


 鏡の壁越しに見える男の横顔は、黒い眼鏡と白いマスクでよく見えない。女が、この男にエスカレーターで出会うのは、本日四回目だった。いずれも気付いたら前にいるのだ。


 女は男が気になって、後を付けることにした。ここは大型のホームセンターだった。八階建てで雑貨も扱うが、男は工具の揃う六階で、刃の輝く両刃のノコギリを見始めた。


(ノコギリ……?日曜大工?しなそうなインテリの感じだけど)


 男が、ふと、振り返り、女に気付いた。うつろ気な目が合う。


「お!お前!どうして生きてるんだ!」


「え?」


 男が走って売り場を抜けた。落ちるようにエスカレーターを下っていく。


(あー、そっか。私、あいつに殺されたんだった。そっかそっか……)


 男がエスカレーターを駆け下りている。


「忘れ物よ」


 男が背後からの声に振り返ると、首に両刃のノコギリが水平に飛んできた。恐ろしい速度の回転は、男の首半分を切り裂いて止まった。


「ふふ、これで買う必要無くなったわね」


 人々の悲鳴で騒然とするエスカレーターの鏡に、女だけが映っていなかった。

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