超人類
「...きて...ってば。ねぇ」
どこからか声がする。
聞き覚えのある声がする。
誰だか知らないが、今は起きたくないんだ。眠たくてしょうがない。やめろ。
「起きて、起きてよ、ねぇちょっと!」
あーもう、分かったから。起きればいいんだろ起きれば。
「なんだよ、眠いんだけど」僕を叩く手を払って、思い腰を上げた。
「もー、やっと起きたぁ」もう飽き飽きだと言うような表情で、少女が見ている。この子は僕の彼女、名前は佐藤七海。ショートヘアがすごく似合う明るく元気な18歳。
そろそろ何か進展があってもいいんじゃないかと思っているのだが中々上手くいかない。恋愛って難しいな。
同棲してからもう5日は経ったっていうのに未だに何もないのは如何なものか。
「ねー、どうしよう」僕の右肩を七海が揺らす。
「何が?」
「食べ物がそこをついちゃった」
「マジ!?」僕は重たい身体も忘れ、僕は起き上がった。
その時、部屋が大きく揺れた。
「わ!!」部屋のあちこちから、ミシミシと嫌な音がする。
「キャー!」尻をついてしまった七海。
間も無く、バキバキという音と共に天井が落下してきた。慣れていたとは言え、流石に天井が落ちて来たのは初めてだ。
咄嗟に、七海に覆いかぶさり、背中で全ての天井の破片を受け止めた。
揺れが収まると、恐怖に引きつっている彼女の安否を確認した。
「優斗!!大丈夫なの!?」どうやら無傷のようだ。僕の身体を舐め回すように確認してくる彼女を引き剥がした。
「どうって事ないよ、鈍器で殴られたようなもん」
「病院行こう!」
「しかし、まさか崩れるほどとわなぁ」頭を掻いた。
「またソリトン達の仕業?」
ソリトン。
数年前にここガストで起き謎の大爆発が起きた途端、街の人間はある不思議な変化をし始めた。人知を超えた強力な能力を身につけたのだ。
それが発覚したのは、爆発が起こった数日後のこと、まずあの爆発に耐えたのが不思議だが、ようやく繋がったテレビに映し出されたのはとんでもないものだった。
ガストの惨状を熱心にリポートしていたリポーターは、瓦礫の山と化した家の残骸の上で座る少年を見つける。
近づいて少年に声を掛けるが、反応がない
きっと家族がこの家の下敷きになっていてショックのあまり何も考えられないのだろうと、リポーターはカメラに言った。が、その時、リポーターはカメラを見据えたまま動かなくなってしまった。
カメラは、リポーターのひしゃげた顔面を映していた。それはまるで岩の様な巨大な拳によって、彼の頭は潰されていたのである。
拳が彼の頭から離れると、鈍い音を立てて肉の塊となったリポーターが倒れた。
周りのカメラマンやスタッフもカメラをストップさせられる状況ではなかった。
カメラには、変形した両手を地面で蠢かせながら笑う少年が映っていた。
その後、その場にいた人間は全員殺されたのである。
世界中にばらまかれたこの時のニュース映像は、人々を恐怖に陥れ、同じ様な能力を持つ者が何人も現れ始めた。そんな、“変異“してしまった人々の事を総じて超人類と呼ぶようになった。
人間は彼らを恐れ、超人類を排除する部隊が出来た。
毒を持って毒を制す。ソリトン部隊の隊員は全員僕ら超人類と同じ能力を持っている。
結局ソリトンの奴らも危険種なのだが、いつどこに潜んでいるか分からない超人達を排除してくれるならばと、人間の皆さんはソリトンに対しては寧ろ声援を送る奴もいる。僕ら超人は完全な悪なのだ。
携帯を取り出して、番号を入力する。彼は無事だろうか。三回のコールですぐに相手に繋がった。
「俺だ、優斗だ。隠れ家がやられた。そっちは大丈夫か?」
相手が、息を呑んだのが分かった。
「チッ、そっちもか。俺も同じだよ。今日ソリトンの奴らが、壁を越えようとした超人達を殺すために、ミサイルを撃ちやがったんだ
帰ってきた時にはもう…」
「…分かった。何とかここを抜け出してみる。オアシスで集合しよう」
「了解」通話を切った。
「よし、とっととこっから脱出しよう」
「大丈夫なの?」七海は不安そうにしている。それもそのはず、彼女は普通の人間なのだ。僕ら超人の感覚など分かるはずがない。
超人化した時、僕は彼女と別れようとしたが、彼女の決意は固く、僕と生きていくと言ったのだ。
目の前の廊下を遮っている床の破片に、僕はそっと右手を置く、力を入れると瓦礫は溶け出す。まるで太陽の元に晒されたバニラアイスの様に溶け出していく。
僕の能力は吸収。触れた物を自分の身体に取り込むことが出来き、それを自分の好きな形に変形させたり出来るのだ。
目の前を塞いでいる瓦礫の山を材料に、武器を作ろうという訳だが、流石に木材では何の役にも立ちそうにない。
すぐさまターゲットを変更し、頑丈そうな鉄骨を吸収した。これなら行けそうだ。
「下がって」僕の指示に七海は率直に従う。
両腕に力を入れ、下に突き出すようなモーションをした。“シャッ“という軽快な音と共に僕の両腕は銀色にに光る刀に変形した。
「はっ」“ジャキン“
両腕を複雑に振り、瓦礫を斬りつける。切れ味は抜群で、簡単に蹴り飛ばすことができた。吹き飛んだ瓦礫はそのまま外へと飛び出し、それぞれ散っていく。
開けた視界には、白く光る太陽が眩しい。外は丁度駐車場で、僕らが移動に使っている古い軽以外は何も止まっていない。
先程まで閉じ込められていた場所は陥没したようになっていて、店の名前が書かれた大きな看板は黒く焦げている。
確か名前はサトウとかいったと思う。萎びたスーパーだ。
僕ら超人には、残念ながら人権などない。超人は人間ではないと見なされるのだ。
あの大事件の後、超人と発覚した者は、政府の用意した隔離施設へ強制移送される事になった。毎日政府の研究員が街を訪れて、怪しげな機械を住民に向けて、"超人狩り“なる事をしていた。
僕はその時既に自分の身体の変化に気がついていたため、親の必死の制止を無視して、素直にお縄にかかった。でもそこで天気が訪れた。
護送車の中、これから一体どうなるのかを妄想していると、隣に座る少年に耳元で囁かれた。
「ここから逃げ出したくないか?」青い瞳をした少年は言った。
「へ?」
「なんだ嫌なのか?」眉を潜めて言う。
嫌と言うより、突然のことで頭が混乱したのだ。何故僕だけに言うんだ。
車内には他にも囚われの者はいる。周りに聞こえるような声では無理なのは分かるが、少年の右隣にも声を掛けられそうなのはいる
こいつが何か出来るようには思えない。しかし、ほんの1ミクロンばかり興味が湧いてきたので聞いてみた。
「どうするつもりだ?」
挑戦的に質問すると、少年は笑いった。
静かにと言うふうに、人差し指を口に近づける。
「もうすぐだよ」
一言だけ言うと、今度は五本指を立て、一本ずつ折り曲げる。
5秒後に何か起きると言いたいらしい。僕はそいつのカウントダウンに付き合う。
4秒、3秒、2秒、1秒…人差し指が下がると同時に、車内に衝撃が走った。後ろの席に座っていた僕は、前に飛ばされる。
不思議な事に、周りの動きがとても遅い。
周りの人達と目が合う。皆僕と同じで驚いた表情。
前方には沢山のガラス片が浮いている。運転席の隊員はフロントガラスを破り、外に飛んでいた。
車の目の前には赤い塊が、恐らくコレにぶつかったのだろう。
ああ、これで終わりなんだな。斎木優斗の短い人生はこれで終わり。童貞ぐらい捨ててから死にたかった。
心の中で広がる後悔を抑えるように歯を食いしばった。せめて最後は叫ばず、堂々と死のう。その方が無様じゃないさ。
少しずつ速くなる景色の動きが怖いから、目を瞑ろうとした。が、目の前に現れた謎の光景に目を開き直した。
真っ赤な液体とも固体とも言えないようなものが僕らの周りを囲ったかと思うと、手を繋ぐ様に型作り始めた。
それはネットだった。
もれなく僕らは“それ“に受け止められた。スライムの様な感触がした。
生き延びた僕らは互いに目を見つめ合い、後部座席に座る少年の右手から伸びる“それ“を見ていた。
「お前…」
「な?大丈夫だろ?」少年は手を小刻みに揺らすと、赤いネットは彼の手に吸い込まれていく。まるでマジック。
彼は一つ息を吸うと言った。
「俺は久坂部淳太。よく聞け、俺たちは今世界を脅かす存在。“超人類“だ!いま俺はそこに転がってる二人の“人間“を殺した」
淳太が指差した方には、先程の隊員2名の首なし死体。
「俺と一緒にこの世界を変えないか?」
こいつに従くだと?
後ろで嘔吐を堪えていた気弱そうな男が言った。
「ふ、ふざけるな!!ひひひとを二人も殺しておいて!世界を変えるだと?俺は人間だ!お前らみたいな化け物じゃない!!そうだ、俺は人間…」極限状態のようで、目の焦点が合ってない。小刻みに身体が震えている。
人間、にしか見えない。でもこの装甲車に乗せられた。この人も超人類なんだ。そして俺も。。。
怯えた男性に淳太は口を開いた。
「嫌ならいい。自分が超人類になったことを認めたくないなら、どうしても認めたくないなら、街に帰ればいい。きっと皆んな迎えてくれる。沢山の武器を持って。。」
「ひひぃ」想像してしまったのか、男性の身体が跳ねる。他の人達も顔が青ざめている。
「おい、お前何がしたいんだ?俺達を脅かしたいだけか?」見かねた僕は問うた。
淳太は表情を変えない。
「だから、俺と一緒に人類を敵に回そうって言ってるの」
「アホか?」
「アホじゃないよ」
「アホだな」
“ガン!!“車内が揺れた。背後にいる数人の中の、ごつい男の拳が壁にめり込んでいた。
「くだらねぇ!何が超人類だ!あいにく俺はオメェに構ってる暇はねぇ!帰らせてもらう
他の連中も同じだろ?」スキンヘッドは周りの奴らを見回す。淳太と僕以外の全員、考えは同じようだ。
「ふんっ」スキンヘッドは何故か勝ち誇ったように鼻で笑い。装甲車を降りる。
他の人達もそれに習って出て行ってしまった。
僕と淳太だけが車内に残った。
「いいのか?」
淳太は頷き。
「別にいいよ。そもそも全員を連れていこうなんて思ってないし」
「で?どうする?」僕は聞いた。彼は僕をじっと見つめて聞いてくる。
「お前名前は?」
「斎木優斗」
「オーケー、優斗お前は自分の能力が何か知ってるか?」
「いや、知らない。突然超人類だと分かって、ここに連れられて来ただけで、自分の能力が何なのか想像すら出来ない」
僕の答えに失望したような素振りも見せず、「分かった」とだけ言うと、装甲車を降りた。僕の方を向き、お前も来いと指示する
僕は指示にしたがって降りた。
「何かするのか?」
「手を貸せ」
「え?」
戸惑いながらも右手を差し出した。その上に彼の手が乗る。
「?」
「行くぞ!ハッ!」
瞬間、僕の身体に凄まじい衝撃が走った。全身に渡っていた衝撃は、段々心臓部分に集中して来た。と思うと、脳に電撃が走った。
映像が頭の中で再生された。
まるでゲームの三人称視点の様に、自分の背中を見ていた。映像の中の僕は、何やら見知らぬ森の中でたたずんでいて、陰鬱な雰囲気。僕は歩き始め、一本の木に近づく。僕が木に手を当てると、木は溶け始めた。
「起きろ」
「うお?」
「どうだった?」
淳太が僕の肩を叩いていた。立ちながら寝ていたのか。
さっきまでのが夢だったのかどうかは分からないが、僕は取り敢えず、目の前の装甲車に近づいた。
淳太は側でそれをじっと見ている。
「確か、こんな風に手を当てて…」
手を当てて、さっき見た映像を思い出しながら。
「お、おお?」
凄い装甲車の厚い装甲が溶け始め、それが僕の身体に吸収されていく。
「良いねぇ」淳太が嬉しそうな声を出す。
結局僕は、装甲車の半分程を“食い尽くして“しまった。
「どんな感じだ?」好奇心を目に宿らせて淳太は聞いてくる。
「何か変な感じがする。こう…全身に何かが詰まっているような…」
「ほう…」
「何か出てくる!」右腕の内側から溢れるような感覚。その時何の前触れもなく、頭に刀が浮かんだ。“シャ!!“
「おお!!すげー!」僕の腕から出たものを見て淳太は小学生のようにはしゃぐ。
刀だ。刀が飛び出していた。右手の平の中心から伸びる黒い刀は、僕の手の震えと共に揺れている。多分さっき吸収した装甲車だ。
左右に刀を振る。鋭い刀が空気を切る音。
ああ、僕はもう人間ではなくなってしまったんだ。そう実感した。そう思うとどこから楽観的な気分になったなった。
僕は超人類。今や人類の敵。帰る場所もない。この淳太とか言う奴について行くのもありかな。
「お前について行くよ、よろしく」
淳太は嬉しそうにニヤついた。
人間界を離れ、超人類だけの世界を作る。
これが、僕と淳太との出会いだった。
拙い文の羅列が続きすぎて、書く気が失せますね。
内容も長すぎるしまだ序章だし…
誰も読む人が居ないからまだ楽か^_^こんなの読む人なんて作者の僕だけだよね。まあ、気楽に書いていこうと思います。
暇つぶし程度に読んでいただけたら結構です。