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反乱軍

一行を乗せた船が、サイアナの故郷デザートランドに到着する。

到着すると、真っ先にサイアナが船から飛び出すように降りた。

サイアナ「辺り一面の砂…乾いた風…やっぱり砂漠は最高だな!」

嬉しそうに駆けていくサイアナ。

続いてアルビンたちも船から降りた。

アルビンには以前この砂漠にきたことが随分昔のことのように思えた。


四人はフローギ族の村へと向かうため、砂漠を歩く。

蜃気楼の向こう側にフローギ族の村が見えてくる…

サイアナ「…なんだあれは?」

サイアナは村の光景に違和を覚え、目を凝らすようにして確かめる。

フローギ族の建物と…サイアナが村を離れたときにはなかった、

村には似つかわしくない黒い大きなテントが多数あった。

四人はさらによく確かめるため村に近づく。

岩の陰から様子を伺う…

テントから黒い装甲のトラフィア兵が出入りしているのが見える。

アルビン「トラフィア軍…この島も占領されていたか…!」

サイアナがとっさに岩陰から飛び出す。

ミールがサイアナの腕を掴むと、岩陰に引き戻した。

サイアナ「行かせろ!」

ミール「大きな声を出さないで…!」

ミール「よく見なさい。あれだけの数…

    私たち四人じゃどうすることもできないわ。」

サイアナ「じゃあお前らは来なくていい!おれだけでも行く!」

サイアナ「仇をとるんだ!」

ミールの手を引き剥がそうとするサイアナ。

ミール「だからよく見て…フローギ族の人たちがいるでしょう…!」

サイアナがもう一度村の様子をよく見る。

確かに、村の中ではフローギ族が生活を続けているようだ。

ミール「以前ここにきたときのフローギ族の印象を考えると…

    彼らがトラフィアに抵抗するとは思えないから、

    身の安全に関しては心配しなくていいと思う…

    今の所…だけど…」

サイアナ「………」

サイアナはしばらく村の様子をじっと見つめていた。

サイアナ「お前たちはこのあともトラフィアを倒す旅を続けるんだな…」

サイアナ「やっぱり、おれもついていく…!」

アルビン「そうこなくっちゃな。」

ミール「ひとまず船へ戻りましょう。」

四人は船へと戻った。


四人が船に乗り込むと、ミールは船を出発させた。

サイアナ「今からトラフィアのところにいくんだな?」

ミールは操縦席で前を向いたまま話し始めた。

ミール「…みんなに黙っていたことがあるの…」

アルビン「黙っていたこと…?」

ミール「私は…トラフィア帝国の打倒を目的とする

    反乱軍という組織に所属していて、

    同じようにトラフィア帝国と戦う仲間を探していたの。」

ミール「アルビンが外界からきたことも、

    アルビンの故郷がトラフィアに滅ぼされたことも、全部知っていたわ…」

アルビン「…」

アルビンは、自身が一度アリューシアに戻ろうとしたとき、

ミールがまるでそれを引き止めるように、マナリアの人々が

トラフィアに捕らえられている可能性を示したことを思い出していた。

アルビン「何故、黙っていたんだ?」

ミールは三人のほうを向くと、再び話し始める。

ミール「本当は…アルビンだけを連れて行くつもりで…」

ミール「マナリアを出た後話すつもりだったんだけど…」

ミール「トラフィア軍に襲われて、話すタイミングが…」

ミール「これから、私たち反乱軍の基地に向かうわ。」

ミール「私たちだけじゃトラフィアとは戦えないけど、反乱軍と一緒なら戦える。」

ミール「サイアナとトリエステにもトラフィアと戦う理由ができた。」

ミール「一緒にきてくれるでしょう?」

サイアナ「今さら、他にどうしろって言うんだよ…」

サイアナの言うとおり、三人に選択肢などなかった。

三人はミールの提案通り、反乱軍の基地に向かうことに決めた。


ミール「着いたわ…」

船がしばらく進むと、ミールがそう言った。

サイアナ「うわっ、寒い!」

トリエステ「まあ、なんて綺麗な景色。」

四人が船を降りると、そこは一面銀世界の、雪の降り積もる島だった。

アルビン「ここに反乱軍の基地が…?」

ミール「トラフィアに見つかるわけにはいかないから、隠れているの。」

ミール「しばらく歩くけど、こっちよ…」


ミールの案内で、雪の中を進む。

しばらく歩くと、山の側面に洞穴が口を開けているのが見える。

ミール「あそこよ…」

ミールはそう言うと、洞穴の奥へ進む。

三人もそれに続く。

洞穴の中は、入り口こそ天然のものだったが、

すぐに人工的につくられた巨大な扉へと行き着く構造だった。

ミールが扉の脇にある端末を操作している…

「ガガガガガ…」

扉が、大きく鈍い音をたてながら開いていく…

ミール「中に入って。」

三人はミールに続き扉の中に入った。


中では、スキンヘッドの背の高い人間族の男が待っていた。

男「ミール、よく戻った。そちらの方々は…」

ミール「例の…外界からきた人間アルビンと…

    同じようにトラフィアと戦う意思を固めた仲間…

    サイアナとトリエステよ。」

男は三人のほうへ歩み寄り、こう言った。

男「私は反乱軍の参謀を務めます、ハリバットと申します。」

ハリバットと名乗るその男は、ひどく丁寧に頭を下げた。

ハリバット「みなさんもトラフィア帝国と戦う同士だとお聞きました。」

ハリバット「ぜひ、反乱軍の司令官に会っていただきたい、こちらへ。」

そう言うと、ハリバットとミールは建物の中へ進みだした。


三人は、建物の中をキョロキョロと伺いながら進む。

大きな広間に出た。

そこには建造中の船と思われるものがおかれていた。

それはトラフィアの軍艦よりもずっと大きいようだった。

アルビン「(随分大きな船だ…これでトラフィアと戦うつもりなのかな…)」


さらに建物内を進み、三人は部屋に通された。

部屋の中では、白髪交じりのひげを生やした人間族の男がいた。

ハリバットが、男に何やら話しかけている。

男「みなさん、よくぞ参られました。」

男「私は反乱軍の司令官、フランクリンと申します。」

フランクリン「みなさんのことはハリバットから聞きました。」

フランクリン「我々と共に、トラフィアと戦ってくださるということで、

       反乱軍もみなさんを歓迎します。」

三人は、トントン拍子で進む話に少し面食らっていた。

フランクリン「ところでみなさんは反乱軍について…

       ミールからどれくらいの話を聞いていますかな?」

ミールが、船の中で三人に話した内容を説明する。

フランクリンがひげを触りながら話す。

フランクリン「ふむ…では我々反乱軍がトラフィアと対立している理由は、

       まだ説明していないと…」

フランクリン「では、私から説明しましょう。」

フランクリンの口から、反乱軍設立の経緯が説明される…


それによると、元々このアビスにはアリューン王国という栄えた王国があった。

大変高度な文明を持ち、アビス全土に影響を及ぼすほどだったが、

あるとき王位継承を巡って争いが勃発。

トラフィア王子を支持する勢力がトラフィア王国として独立、

そのままアリューン王国を滅ぼしてしまったのだという。

フランクリン「そのアリューン王国の生き残りの子孫が、

       我々反乱軍の人間なのです。」

なるほど、確かに反乱軍の基地の中にはアリューン人しか見当たらない。

フランクリン「トラフィア王国はやがてその名を帝国と改め、

       アビス中を武力で支配し始めました。」

フランクリン「アリューン王国もアビス中と交流を持っていましたが、

       その関係は主従的なものではなく、友好的なものでした。」

フランクリン「我々はアビスに平和をもたらすため戦っているというわけです。」

アルビン「あの…おれの故郷の人間が…

     トラフィアに捕らえられているかも知れないんです。」

フランクリン「ええ…トラフィアに捕らえられている、

       弾圧されている人々を開放するため、共に戦いましょう。」

サイアナ「で、いつトラフィアと戦うんだ?」

「コンコン」

サイアナがフランクリンに質問したそのとき、ドアをノックする音が鳴った。

フランクリン「失礼…入ってくれ。」

反乱軍の人間が部屋の中に入ってくる。

反乱軍の男「フランクリン司令、リヴヤタンの件で報告が…」

フランクリン「うむ…その前に…」

報告を受けたフランクリンは、アルビンたちに目を向けた。

フランクリン「私はこれから重要な会議がありますので…ミール。」

ミール「はい。」

フランクリン「実はこの施設は単なる反乱軍の基地というだけでなく、

       アビスのことを観測、研究する施設でもありまして…」

フランクリン「ミール、みなさんに研究所を案内してさしあげてくれ。」

ミール「分かりました。」

何やら込み入った話があるようで、四人は部屋から出て

ミールの案内で研究所に向かった。


ミールは通路を歩きながら話した。

ミール「研究所ではアビス中の情報を集めていて…

    実はアルビン、あなたが外界とアビスを

    出入りしている情報も得ていたの。」

ミール「フランクリンが外界とアビスを出入りできるあなたに興味を抱いて…」

ミール「それで、私があなたを探してスカウトしようとしていたわけ。」

アルビン「ずっと見られていたってことか。なんだか少し気持ち悪いな。」

ミール「ごめんなさい…」


通路を進むと、開けた部屋に出た。

中では、白衣を着た人間が何やら機械を操作している。

ここが研究所のようだ。

ミールは研究所の中に入ると、白衣を着た人間中の一人の女性を

三人の元へ連れてきた。

ミール「リリアン、三人にアビスのことを色々教えてあげてほしいのだけど…」

リリアン「はい…始めまして、研究員のリリアンと申します…

     あの、あなたがアルビンさん?」

アルビン「ああ…そうだけど…」

リリアン「本当にアビスの外からきたんですか?

     アビスの外はどうなっているんですか?」

リリアンはアルビンにくいかかる。

ミール「ちょっと…あなたがアルビンたちにアビスのことを説明するのよ!」

ミールは、リリアンをアルビンから引き剥がした。

リリアン「すみません…つい…では、資料室に案内しますね。」


四人は、本棚の多く並ぶ部屋に通された。

四人は椅子にかけリリアンの話を聞く。

リリアン「ではアビスについて、私たちの研究を元にご説明しますね…」

リリアンからアビスについて説明がされる。

それによると、アビスとは様々な世界を取り込んで成長を続ける空間なのだという。

そして、取り込まれた世界は島のように独立した世界となり、

アビスの海の中に存在すると…

リリアン「私たちの祖先アリューン王国も、かつては外界に存在していて、

     アビスに取り込まれたのだとか…」

トリエステは興味深そうに話を聞いているが、

サイアナは興味がないのか居眠りをしている。

リリアンの話は続く…

リリアン「私たちの研究では、アビスと外界を行き来する方法は

     見つかりませんでした。」

リリアン「でも、アルビンさんはそれができると聞いて…」

リリアンは、目を輝かせながらアルビンのほうを見つめる。

アルビンは、水を斬り裂くことで亀裂をつくり、

それを通じてアビスと外界を出入りできる能力について話した。

リリアン「きっとアルビンさんの権能なんですね…

     あの、私を外界に連れて行くことはできるんでしょうか?」

アルビン「いや…実は…」

アルビンは、最近つくった亀裂はいずれも外界には通じていなかったことを話す。

アルビン「おれにも分からないが…以前はアリューシアのことを思いながら

     剣を振るうと、アリューシアにつながる亀裂が生まれたんだ。」

リリアン「まあ、そうなんですか…」

リリアンは少し残念そうにするが、また目を輝かせこう続ける。

リリアン「私たちの故郷アリューン王国にはこんな伝承があります…

     アリューンの民はかつて、アビスに取り込まれる前、

     明るく輝く太陽の元、無限に広がる大地で暮らしていたと…」

リリアン「アビスの太陽は冷たい光しか放ちません。

     アビスの大地は小さく切り取られ…まるで小さな鳥かごのようです。」

リリアン「外の世界には、本当に輝く太陽と広い大地が広がっているのですか?」

アルビンはアリューシアのことを思い出していた。

アルビンにとっては当たり前のことで、考えたこともなかったが、

確かにアリューシアの太陽の光は暖かく、アビスの太陽の光はどこか冷たい。

アルビンは答える。

アルビン「ああ、確かにおれのいた世界はそうだったね。」

リリアンはいっそう目を輝かせこう言った。

リリアン「なんて素敵な世界なんでしょう…」

リリアン「私もいつか、広い大地で、暖かな太陽の光を浴びてみたいものです。」

「コンコン」

そのとき、ドアをノックする音が鳴った。

リリアン「どうぞ。」

先ほどアルビンたちを案内したハリバットが部屋に入ってくる。

ハリバット「フランクリン司令がみなさんに話があるそうです、

      来ていただけますか。」

アルビン「分かった…サイアナ起きるんだ。」

眠っていたサイアナを起こすと、四人はハリバットに着いていった。


先ほどフランクリンと面会した部屋に通される。

中にいたフランクリンが口を開いた。

フランクリン「さっそく…みなさんにやっていただきたいことがあります。」

アルビン「なんでしょうか?」

フランクリン「リヴヤタン族と呼ばれる種族が構成する

       リヴヤタン王国という国がありまして…」

フランクリン「トラフィアとは対立関係にあった国なのですが、

       先ほど、リヴヤタンがトラフィアと不可侵条約を結ぶと…」

フランクリン「リヴヤタンは強靭な種族でして、トラフィアに

       対抗しうる力を持っています。」

フランクリン「我々としては、リヴヤタンと協力したいのですが、

       トラフィアと不可侵条約が結ばれればそれも叶いません。」

フランクリン「なので…みなさんには密使としてリヴヤタン王国に向かい、

       不可侵条約締結を阻止していただきたいのです。」

アルビン「何故…我々が?」

フランクリン「トラフィアが不可侵条約など守るはずがない…

       リヴヤタンは騙されているのです。」

フランクリン「みなさんは故郷や種族をトラフィアに圧迫された経験がある。」

フランクリン「みなさんにはその経験を元に、いかにトラフィアが危険な存在なのか

       伝えていただきたいのです。」

フランクリン「それに我々反乱軍はトラフィアに存在を認識されており、

       下手に動くと危険で…」

フランクリン「リヴヤタンと同盟を結ぶことができれば、

       一気にトラフィア打倒が現実的なものになります。」

アルビン「三人はどう思う?」

ミール「もちろん、いくわ。」

サイアナ「早くトラフィアを倒そうぜ!」

トリエステ「あの…アルビンさんにおまかせします。」

アルビン「分かりました、リヴヤタンにいきましょう。」

フランクリン「おお、引き受けてくれますか!」

ハリバット「この任務には私も同行させていただきます。」

ハリバット「詳しい作戦の説明は移動中にしますので、さっそく出発しましょう。」


アルビン、ミール、サイアナ、トリエステにハリバットを加えた五人は、

反乱軍の用意した船に乗り込んだ。

ハリバット「私がリヴヤタン王国まで操縦しますので。」

そう言うと、ハリバットは操縦席に座り船を動かした。


五人を乗せた船がリヴヤタン王国へ向かう…。

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