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第三十話 街道閉鎖

 市場によって情報収集しようとした。商人の間では今朝から荷物が届かないことで話題になっていた。個人商店を出している年配の男性の商人に尋ねる。

「今朝から商品が入ってこなくなったとは本当か?」


 商人が不安な顔で尋ねる。

「近くの農家からは野菜は入ってくるが、それより少しでも遠くからの商品が入って来ない。あんたら冒険者だろう。何か、知らないかい?」

「町から二時間ほど行った場所で壊れた荷馬車を見たのう。他にも被害が出ているから街道を通るのは危険じゃな」


 商人は暗い顔で項垂(うなだ)れる。

「そうかい。街道が魔獣で封鎖されている話は本当だったのか」

「生活物資が、すぐになくなるのか?」


「ホーエンハイムは、人間領のベルハイムに続く街道と魔族領のバルコールに続く街道の二本がある」

「バルコール側の街道が使えれば、魔族領から生活必需品は輸入できるわけじゃな」


 商人は暗い顔のまま、意見を述べる。

「高く付くだろうけどね。今のところ、バルコール側の街道からは商品が入ってきているから、町が干上がる状況には、ならないよ」

 冒険者ギルドに戻る。掲示板に魔獣の情報を募集する掲示が貼られていた。

「さて、サスキアよ。どうする? 我らも魔獣の捜索に乗り出すか?」


 サスキアは慎重だった。

「いや。ここで情報が集まるのを、待ちましょう。テレシア様から何か指示があるかもしれない」

(さっさと魔獣に遭って、てきぱきと駆除したいところじゃが、ここはサスキアに合わせるか)

 夜になると、続々と怪我をした冒険者が帰ってきた。襲われた冒険者は口々に、全長が五mほどの黒いザリガニのような魔獣について報告する。


 年配の冒険者が、誰かに教えるわけでもなく語る。

「魔獣はザザレだな。本来はサバナの奥地にいる魔獣だ。奴らは夜に活動する。見かけによらず俊敏で、体は硬く、力も強い。真珠級が五人では(つら)いかもしれない」

 若い冒険者が意見する。

「となると、ここは銀等級以上か、勇者候補の出番か」

(勇者候補といえど、しょせんは候補。勇者ではないから、勇者技とて自由に使えまい)


 カエサルの言葉とは裏腹にサスキアは、やる気になっていた。

「カエサルさん、魔獣討伐をやりましょう」

「我らは二人しかおらぬ。無理しなくても良いのではないか?」


 サスキアが気負った顔で告げる。

「私は勇者を目指す勇者候補。ここで背を向けるわけにはいきません」

(出た、勇者の気概。これは面倒な心意気よ。でも、ここで断ると他にメンバーを集めて突撃して死ぬかもしれん。そうなると、後味が悪い。ならば、我が一緒に行ってザザレを片付けたほうが早いか)


「あい、わかったぞ。その、勇者の心意気に付き合おうぞ」

「駄目です。行ってはなりません」


 声のした方向を見ると、心配そう顔でサスキアを見つめるテレシアがいた。

 テレシアは言葉を続ける。

「サスキアさんは、有望な勇者の卵。このままでは、勇者として素質を開花する前に命を落とすかもしれません」


 サスキアは意気込んで言い返した。

「でも、町が困難な時に立ち上がらずして、何が勇者ですか」

「どうしても行くというなら、勇者候補の証を私に預けてから、行ってください」


 サスキアは躊躇ったが勇者候補の証を差し出した。

 サスキアは真剣な顔で頼む。

「行こう、カエサル」

「お待ちなさい。これを持って行きなさい。魔獣を倒して時に回収班を呼ぶためのものです」


 サスキアは信号弾用の魔力弾をくれた。

「わかりました。必ずや、この試練に打ち勝ってみせます」

 外に出ると霧雨が降っていた。雨避けの外套を被り、帽子に光の魔法を掛けて、外に出た。

 霧雨の中、歩くこと九十分。辺りの空気が変わる場所に出た。


 空気の変化をサスキアは気付かなかったので、カエサルは注意する。

「停まれ、サスキア。何かいるぞ」

 サスキアは足を止めてカエサルの背後にピタリと着いて死角をなくす。

 カエサルは気を読む。何かが岩陰から頭上から強襲してくる予感がした。

「来る! 散開せよ!」


 カエサルは叫んで前に進む。サスキアも前に進むと、数秒違いでカエサルが元いた場所に全長五mの真っ黒なザリガニが降ってきた。

(あれが、ザザレか)

 ザザレはサスキアに向かって突進した。サスキアは、向かい合って攻撃をする。

 だが、ザザレの鋏は、サスキアの剣を弾いた。


 ザザレは右の鋏でサスキアの攻撃を弾き、左手の鋏でサスキアの体を挟んだ。

(まずい。サスキアがやられる)

 カエサルは音よりも速く飛び出す。ザザレの頭に乗ると、剣を刺し込む。

 剣はザザレの脳味噌に深く刺さり、折れた。

(また、剣が折れよった。本当に剣とは(もろ)い武器よのう)


 ザザレがどさりと動かなくなると、サスキアは鋏から這い出す。

 サスキアは青い顔で息を荒く語る。

「危ないところだった」

 サスキアが信号弾を上げた。


 カエサルは付近に気を配るが、他のザザレは、いないようだった。

「何にせよ、これで、魔獣一匹は仕留めた。勇者候補の面目躍如だのう」

 サスキアは真面目な顔で質問する。

「暗く霧雨も降っている。でも、どうして、カエサルは敵の接近に気が付いたんですか」


「勘じゃな。それほど難しい所業ではない。訓練を積めば、誰にもできる」

 サスキアは、カエサルをじっと見つめて意見する。

「それだけじゃない。さっきのカエサルの動き、私には、まるで見えなかった」

(別れが決まっておるからのう。あれこれ説明するのは、面倒よのう)


「暗いからじゃろう」

 カエサルは適当に誤魔化そうとした。

「違うわ。カエサルと私では大きな、非常に大きな力の差がある」


 カエサルは折れた剣をしげしげと見ながら簡単に答える。

「そうか。我は青銅等級ゆえ、難しい話は、わからん」

 サスキアは真剣な顔で結論づける。

「カエサルは力を隠している」


「そうかも知れない。そうでもないかも知れん。もっと、親しくなった時には、その理由を語ろう。そんな時が来ればな」

 十人からなる回収班がやってきて、ザザレの屍骸を回収してくれた。

 その日はサスキアと一緒に町に帰った。


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