7デュエル
ショートボブの髪を後頭部で結い、レディはジーンズとスタジャンという男子姿で助手席に座っていた。
とはいえ、パステルピンクのブラウスとライトグリーンのカーディガンは女物で、ジーンズも膝が隠れる程度の丈のレディースだ。
それでも今日のレディは、春川順平である、とレディは宣言していた。
膝に抱えたバッグには、玩具が入っている。
いや、ミオは玩具と思うのだが、レディにとっては神聖な物らしかった。
カードゲームである。
大きなバインダー数冊とカードを入れる四角い箱が一つ。
それを用心深く、まるで決闘前に銃の弾丸を確認するガンマンのように入念に確認し、レディはミオのブガッティヴェイロンに乗り込んだ。
「間違いないのかい?
ダウンジングは出来なかったんだろ?」
「人形町と言ったら、もうKCジャパンなんだ! 間違いはない!」
学校には学ランで登校しているのだから男言葉を使っているのだろうが、ミオには新鮮だった。
改めて抱きしめたくなる。
レディが男装なのだから、ミオも女の格好でもいいのだが、あいにくスカートは持っていない。
ジーンズとセーターで、今回は豊満な胸を隠さずにいられる服装にとどめた。
「でも、おも…、デュエルで戦う、っていうのはどうなんだろう?
向こうは強力な影繰りだぞ」
「KCジャパンを指定したんだ。これで間違いはない。
それにKCジャパンに入るのにデッキも持っていないなんて、逆におかしいんだ!」
「相手は、影繰りではないレ…、順平を、それも裸のときを狙って背中から襲った男だぞ」
「あいつが卑怯なんじゃない。
変態だけど。
卑怯なのは蒼井聡だ!」
「でも、蒼井が一緒ではない、と言い切れないだろう?」
「一緒だろうな。愛人関係なんだから」
「じゃあ、どこかで蒼井の計略が絡んでくるだろう?」
「無論だ。
だがカブトはデュエルをしたがっている。俺はそれに応えたいんだ」
兄弟としての愛情はある、という事か、と問いたかったが、ミオは質問を飲み込んだ。
ここまで拗れ、肉欲まで入り込んだ関係に、立ち入るのも無神経に思えた。
第一、レディは、まだ十五歳の少年なのだ。
完全に心の整理がつくほど大人ではあるまい。
それよりも自分は、蒼井聡の魔の手から、いかにレディを守るか、を考えなければならない。