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シャドーダンス2 東京炎上作戦  作者: 六青ゆーせー
4/166

4拗れ

 ブリーフィングルームは1室ではなく、廊下の両面に扉がずらりと並んでいる。

誠は、まだ数室しか入ったことは無いが、中には、映画に出てくる指令室のような最新設備の整った部屋もあるようだ。


部屋を抜けるとエレベーターが並んでいる。

このエレベーターは専用のカードを持っていないと停まらない階などがあり、国家機関らしい物々しさがあった。

その一つに、美鳥と誠は乗った。


「えっと、続きなんですが…」


「ああ。

レディとカブトの仲、それから、幼い頃から影繰りの訓練をしていたのは、どういうわけか? だったわね」


「はい」


エレベータ-に乗ると、どうしても、美鳥と近くなる。

たぶん美鳥は年上好きなので、自分の事は弟ぐらいに思ってくれたら良い方なのだろうが、美鳥の、いつも動きやすく髪をまとめた姿と、目の大きい印象的な顔は、時々、誠の夢にまで出てくるようになっていた。


「仲は、その時々、状況で変わっていたから、まず、なぜ子供の頃から影繰りの訓練をしていたのか、から話すわね。

だいたい小学生から、影繰りが身内にいる子供は、訓練を開始するのよ。

あたしの父も母も、影繰りよ。

レディたちは確か、叔父さんが影繰りで、ご両親は影の研究をされていたドクターだったわ。

そんな風な子供が、専門の小学校に預けられるの。桜庭学園よ」


「ええっ!

桜庭学園って、そういう学校なんですか?」


「高校からは一般生徒も集まるから、心配はいらないわよ。

小中では特別なカリキュラムが組まれているの」


「そうだったんですか…」


エレベーターが地上近くまで上がった。

この本部の敷地のほとんどは、芝離宮の地下に建設されている。


前に、永田運転で乗ったのと同じような小型のライトバンに、二人は乗り込んだ。

ますます美鳥との距離が近くなる。


「人形町にお願い」


慣れた感じで、美鳥が言った。

車が走り出す。

地下を三階登って、海岸通りに出る。


「じゃあ一般生徒と影繰りは、別のクラスになるんですか?」


「影に目覚めていない生徒は、まだ特別カリキュラムを続けるから、一組になるわ。

それ以外、あたしやレディは普通クラスになる。

影をコントロールしながら、普通の人間と上手くやっていくのも訓練の内、というわけ」


「あれ、青山さんは?」


青山一郎は、誠の後に影繰りになった人だ。

その能力は実戦向きではないが、強力だった。


「彼は今、一組よ。

11月の末に影繰りになったから」


「そうか…」


「たぶん、二年からは普通クラスに編入されるでしょう。

学校の話は、もう、いい?」


「あ、はい」


「じゃあ、兄弟仲ね。

これは結構ややこしいのよ。


初めの頃、先生たちに期待されていたのはレディだったわ。

何しろ、ダウンジングの力が高かったから。

早いうちから実戦に駆り出されていたわ。


でも、その頃のレディは大人しい子で、弟のカブトが、元気一杯だったわね。

その頃は、多分、普通に仲の良い兄弟だったと思うわ。


ただ、六年でカブトが能力に目覚めてからは、二人とも実戦に出るようになったけど、レディはあくまでダウンジング要員だったから、カブトがエバるようになったみたい。


友達の間でも、急に偉そうになった、と評判が悪かったわ。

ただ、レディは大人しい子だったから、目立って衝突している様子は無かったわね。

逆に、レディが、カブトと皆の中を取り持っていたみたいに見えたわ」


「逆に言うと、カブトさんの変化をレディさんも気づいていて、気にしていた、とも言えますね」


「そうかもしれないわね」


「あの…、永田さんの話だと、カブトさんがレディさんを殺そうとしたとか…」


「それも複雑なのよ。


最初はミオさんがレディを気に入ったのね。

今にして思うと、何か共通する感じがあったとか、かもしれないけど。


カブトにしてみたら、面白くなかったんでしょうね。

男装しているとはいえ、女性の影繰りは少ないし、色々可愛がられているのを見たら、ね。

あまり似ていないとはいえ双子なのに、兄だけ可愛がられる、のが納得いかないとか、初めは、そんな子供らしい理由だったと思うわ」


「初めは?」


「だんだん、無理に格闘の練習に付き合わせたり、虐めに近いようなこともあったようよ。

ただカブト自身、小学生で影繰りになって、誠君も知っている練習場で、高校生とか大学生と訓練を受けたので、相手にその気が無くとも小学生にはキツかったと思うわ。

そのストレスもあったかもしれない」


「そうですよね。

僕も美鳥さんやレディさんがいなかったら、辛いと思いますから」


「ちょうど、その時は、年の近い子がいなかったらしいわ。

何しろ小学生っていうのが異例なことだったから。


たぶん、一番年が近くても高校二年の佐竹さんだと思うわ。


そりゃあ、実戦を踏まえた訓練だし、キツいし、話し相手もいないし、で、しかも戦闘員として活躍しているミオさんが、双子のレディを可愛がって個人練習なんかをつけてる、となったら、今にして思えば、小学生なら、少々キツく当たっても仕方なかったかもしれないわね。


でも、それだけじゃなくって、カブトは、本当はレディに似ていたのよ」


「へ? 似ていないって言ってませんでしたか?」


「レディが可憐な少女にしか見えないみたいに、もっと体格は良かったけど、カブトも顔は整っていた。

同じ体格だったら、もっと双子っぽかったでしょうね。

中学になってね、本当は誠君に、こんなことを言っちゃあいけないんだろうけど、緊急の場合なので言うわ。このことは誠君は知らないこと、にしてね」


「わ…、判りました」


「初め、カブトが、その時訓練生だった大学生の、ある男に、性的な虐待を受けたのよ」


「性的虐待、って言うと、裸を見られたとか、写真を撮られた、とか」


「もっとコアな、肉体関係になったらしいの」


「そりゃあ酷い」


「ただレディとミオさんの事があったから、カブトも味方が欲しかったのかもしれないわ。

つまり、最初は合意の上、ってことよね」


「うーん犯罪は犯罪だけど、カブト君も自分から…、ってことですか?」


「子供の考えることだし、どこまで本気なのか判らないけど、そういうことを覚えちゃったのね。

そしてカブトは、レディにも強引に迫ったらしいの」


「えっ? 双子の兄弟で?」


「レディは女性的なセンスはあるけど、そこのところは、きっちり男の子なのよ。

で、見るからに男っぽいカブトは、そこらへんが、なんというか…」


「なるほど、判りました。

ってことは、その愛情と言うか、なんというか、で拒絶したレディさんを殺そうとした、ってことですか?」


「プライベートなことだから、レディも多くを語らないし、噂話よ。

でもレディは、中学生になって、ある時から、とっても可愛くなったのよ。

今から考えると、きっと、その頃に目覚めちゃったのね。


で、普通に学ランを着た小柄な男子なのに、髪型も変えて、少し女の子っぽくなって、逆に女子に人気が出たの。


その頃から、妙に、ねちっこくカブトがレディに迫っている感じがあったわ。

レディは、その頃はミオさんともカップルになって、全然カブトを相手にしなかったのよ」


「うーん、複雑なんですね」




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