81話
千春の予想通り、新拠点にお客は少ない。
宣伝もしていなければ、頻繁に迷いの森を抜けてくるプレイヤーもいないからだ。
そもそも迷いの森の、どのルートを通れば店に到着するのか、店主である千春も知らないのだから宣伝しようもないのだけれど。
しかし、それでもお客はゼロではない。
早ければ数日、長くても数か月に一人は来店がある。
漂着客か、漂着した後に迷いの森を攻略する間のアイテム確保の店として利用される。
漂着した後に迷いの森を抜けたプレイヤーの中の数人が常連となって何度か来店してくれていたりもする。
数少ない千春の友人であるケイ、ノエル、ルシも何度か遊びに来ている。
『ちーちゃんもたまにはイベントに参加しようよ!』とケイに誘われたりもしていたが、もうそういう催しに参加する気は千春にはなかった。
ただ静かに、迷いの森のドールたちと遊べれば、それだけで満足だったから。
とはいえ鍛冶なども嫌いではない事もあって、今でも装備品の製作は続けている。
最新の素材を持ってきてくれたケイたちに装備を作ったりもしている。
ポチと迷いの森を散歩するのも楽しい日課だ。
人によっては千春のプレイスタイルを小馬鹿にするかもしれない。
実際、小馬鹿にされた事もある。
だけれど、この遊び方が千春にとっては一番楽しいのだ。
だから誰に何を言われても曲げる気はない。
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フォトモードで撮ったエンドワールドのデータは、今でも千冬のPCに大切に保存されている。
ポチのフォトも、迷いの森のドールたちも、ケイたちと一緒に遊んだフォトも。
思い出は全て、大切に残してある。
エンドワールドを始めた時から十年が経ち、エンドワールドが終幕を迎えて五年が経った今でも。
エンドワールドが終わるその時まで、千冬はログインを続けていた。
最後の頃は大学生活が忙しかったりで、高校時代のように長時間のログインはできていなかったけれど、それでもポチと散歩をする時間は千冬にとっても大切なものだった。
「……そのポチともフォトデータでしか会えないんだけどね」
フォトデータを表示する。
最後の時、ケイやノエル、ルシと時間を調整して集合して撮ったフォトデータ。
社会人になった今でも彼女たちとの友人関係は続いている。
仕事が忙しかったり、結婚したり、生活拠点を海外にもったりした友人もいて頻繁には集まれないけれど、今でも繋がれている。
「……結婚か」
彼氏もできた事がない千冬には縁遠い話ではある。
コミュニケーション能力も、あの頃よりは成長したと彼女自身は思っているが、相手が異性となると話は別で、とたんに話せなくなる。
興味がないわけではないのだが。
「それよりも今は仕事、仕事」
少し休憩するだけのつもりが、予定より長い小休止になっていた。
千冬はヘッドギアを装着してPCを再起動。
「来週始まるイベントでは何も問題が起こらなければいいけど……きっと無理だよね」
千冬はシステムエンジニアの一人として、今はVRMMORPGの運営に関わっている。
あの頃の友人の一人も作れなかった自分に、今でも続く友人を、大切な思い出を、将来の夢をくれたエンドワールドのように、誰かに何かをあげられるゲームを作りたい。
そんな夢を見て、千冬は今日も裏方で頑張っている。
途中、長く更新が途絶える期間もありましたが『裏方で頑張りたいと思います』はこれで完結となります。
ろくにMMORPGをプレイした事もないので話の作り方が拙い事も多かったと思います。
それでも最後までお付き合いいただけた事に感謝しかありません。
本当にありがとうございました。




