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79話 

 

 ホラーゲームに様変わりした『嗄れ森』の攻略は、ある意味で順調に進んでいた。


 千春は特に何をするでもなく、ただポチに引っ張られるまま前進するのみ。


 ポチは主人が怖がるので、ゾンビが声を発する前に砲声一発で撃破し、道を作る。


 そもそもが千春とポチは、嗄れ森に出現するモンスターより四倍以上もレベルが高い。


 戦闘を完全にポチに任せたとしても苦戦するはずもなかった。


 そして嗄れ森には領域首領(エリアボス)としてリッチが配置されているのだが、それも雑魚モンスターの延長線でしかなく、ポチの砲声一発で撃破されていた。


「もう二度と第二大陸には来ないと私は固く決意した」


 真剣な顔で独白する程度には、やはり嫌だったらしい。


 嗄れ森を抜けた先には、あいかわらず荒廃した大地が広がっている。


 ただその大地の先に海も確認できた。


「あ。あれだね」


 荒廃した岩と砂の大地の中にある人工物。


 岩に擬装されてはいるが、あれは地下へと繋がるエレベーターの入口。


 ただ、このエレベーターは街に繋がっているわけではない。


「ここが地下ドックの入口」


 地下にあるのは造船所を兼ねたドック。


 そこで製造されているのは潜水艦である。


 その潜水艦で第三大陸へと渡る。


 千春はポチと一緒にエレベーターに乗り込み、地下へと降りる。


 何かしらイベントがあって、潜水艦製造のための部品集めでもあるのかも、と少しゲームに慣れた千春の予想を裏切り、ここでのイベントは特にない。


 ただ乗船手続きをして、『潜水艦で第三大陸へ行きます』というシステムメッセージに『YES』を選ぶだけ。


 それだけで視界が暗転し、第三大陸へ。



   ▼ ▼ ▼



「そうだよね。そんな簡単じゃないよね。知ってた」


 潜水艦に乗り込み、視界が暗転した所まではよかった。


 その後、視界が戻れば第三大陸の港に到着していたはずだった。


 予定では。


 調べたシナリオ攻略にも、そう書かれていた。


 ただ。


「三万分の一くらいの確率で嵐に巻き込まれて海難事故に遭うイベントがあるとも書いてあったけどさ……そういうイベントいらなかったですけど!?」


 千春は三万分の一を一発で引き当てた。


 それだけである。


 ただ海難事故により流れ着いた場所は、千春念願の第三大陸のどこか。


 荒廃した自然ゼロの第二大陸とは一転、緑溢れる自然全開の大陸。


 むしろ大陸の八割を森に浸食された大陸(、、、、、、、)だった。


 当然、千春の視界を埋め尽くすように樹木が並んでいる。


 足元も足首を隠すほどに伸びている草の絨毯が、どこまでも続いている。


 整備された道などはなく、獣道と呼べる程度の道もない。


 鬱蒼とした木々が生い茂り、頭上を錯綜する木の枝が空を隠しているせいで昼夜問わず薄暗い。


「……ここが迷いの森」


 ネットで調べた情報によると、内部は迷路のように複雑に入り組み、正解ルート以外を通ると開始位置に戻されてしまう。


 マップも一定時間ごとに組み変わる仕様で、そこに法則性があるのかも判じていない。


 つまりレベル差ゴリ押しで突破できる類のものではないという事。


 それも問題ではあるのだが、それよりも千春が気になっている事は別にある。


「……ここにホラー要素は……ナイデスヨネ?」


 二連続でホラーに介入されたら心が折れる。


 そう確信している千春の心からの願いだった。


 

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