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73話 

 

 廃鉱山の中は廃棄されて久しい事もあり、光源となるものがない。


 第二大陸は魔法よりも機械の方が広く普及している。


 そのため暗がりを照らす光源には魔道具よりも蛍光灯などが使われている事の方が多い。


 廃鉱山も例に漏れる事無く、坑道の天井には寿命を迎えた蛍光灯が沈黙していた。


「魔法も使えるには使えるんだけどね……」


 一応、ソロ探索では必須技能だという事で千春も【ライト】の魔法くらいは習得している。


 懐中電灯のように進行方向を照らすだけの魔法だ。


 ただ今の千春にとってMPは非常に大切なものだった。


 攻撃が命中するかどうかはともかく、攻撃手段としてMPが必須なら可能な限り節約したいと考えてしまう程度には。


「第一大陸よりも魔法でのMP消費量が多いんだよね、ここ(第二大陸)」


 初歩的な魔法である【ライト】も、第一大陸の時と比べて三倍近いMPを消費する。


 これは不具合などではなく仕様。


 第二大陸では全てのMP消費量が倍増、最大で五倍まで増える。


 第二大陸で魔法文明が一般的とならなかった理由の一つである。


 という理由もあって千春の手にはフラッシュライトが握られていた。


 ベルタスの街で買い求めた品。


 照らせる範囲は少しばかり狭くなるが、その分、光量は大きく電池の消耗も抑えられる。


 ライトの魔法と比べれば便利さで劣るものの、これはこれで探検家みたいで楽しいと千春はウキウキと廃鉱山を歩く。


「電池の替えも十分に用意してあるからね。一気に突破しちゃおう!」


 言っている間に横道にそれた所に、千春は下り階段を発見した。


 まっすぐ直進するルートもまだ続いているが、今の正規ルートは下り階段の方。


 だがしかし。


「……まっすぐ進んだ先に何かないとも限らないよね」


 前言を簡単に撤回して寄道を決めた。


 しばらく進んだ所で崩落現場に突き当たる。


 崩れた天井が道を塞いでいた。


「土砂崩れかと思ってたけど、これは土っていうよりも石?」


 砂状ではなく、石が積み重なるように道を塞いでいるようだった。


 軽く周囲を見回してアイテムが何も落ちていない事を確認してから、再び崩落した瓦礫の方に集中。


「これ、発掘用のダイナマイトで壊せたりしないのかな?」


 道の発掘(、、)っていう事で、と言い訳してみつつ、千春はダイナマイトの一つをそっと地面に置いた。


 そして巻き込まれないように離れる。


 巻き込まれてもダメージはないし、砂煙などに巻かれる事もない。


 ただ気分的によくないというだけ。


 そしてドンッと、いまや聴きなれた爆発音が廃鉱山内に響いた。


「瓦礫は……消えてる!」


 攻略手順を短縮できたかも、と。


 千春は目的地(第三大陸)に一歩近づいたと嬉々として駆け、そして瓦礫の積み上げられていた所を踏んだ瞬間、地面が消えた。


「ええぇぇぇぇぇぇぇぇ…………!?」


 落とし穴だった。


 暗闇の中へと真っ逆さまに墜落してゆく千春を示すのは、彼女の手に握られていたフラッシュライトの明かり。


 ブンブンと激しく振り回されている事が地上からでも見て取れたことだろう。


 ドッバーンッ!!! と地上にまで届くほど強い着水音。


 そしてギギギ……と軋む音を立てて、落とし穴は何事もなかったかのように口を閉ざし、天井からは新しい瓦礫が降り、トンネルは元の姿を取り戻した。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] ショートカットを許さぬ作りとは、もしくは相当 ひねくれたのがデザインしたのか。 何を得るのか楽しみですね。
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