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71話 

 

 『嘆きの渓谷』は大きな岩山に幾筋も入る亀裂が天然の道のようになっている場所。


 その入り組み、強い風が細く長い亀裂の道を風が通り抜ける際の風鳴りが、まるで怨嗟の声のように聞こえた事から、その名を付けられた。


 今現在、現地入りした千春の耳には怨嗟を彷彿とさせる風の音は聞こえていない。


 ただ、怨嗟の声が聞こえても不思議ではない土壌があるからこそ、その名を付けられたのだが。


「こ、今度こそ!」


 千春はヘリオスを構え、自分の前に現れたモンスターへと向ける。


 ヘリオスはMPを消費して魔力弾を撃つ魔法銃にカテゴリーされる武器だ。


 弾丸一発ごとの消費量は決して小さくないが、それに見合うだけの威力を有している。


 もちろん命中(あ)たればの話ではあるが。


「あ、あ、ああ! やっぱりあたらないよ、これ!?」


 千春のDEX値はヘリオスを使いこなせる数値に少しばかり足りない。


 その『少しばかり』のために、命中率が極端に低下している状態。


 そのため千春の連続射撃は見事に巨躯の的、嘆きの渓谷に豊富にある岩を素材にした天然のゴーレムを相手に全弾外して見せた。


 千春のような理由で苦戦するのは想定していないのだが、この地の出現モンスターはゴーレム関係が多い。


 ゴーレムは高い物理耐性を持っており、かつ、第二大陸という枠組みの中では高レベルモンスターに該当する。


 簡単に言えば運営は最初の難所を用意。


 難所であるヒントとして『嘆き』というフレーズを入れたのである。


 しかし、それはストーリーを運営の想定する時期、レベルで進めていた場合の話。


 すでに第七大陸まで解放された今更、古参とまではいけずとも中堅程度の経験はある千春にとっては難所ではない。


 それこそダイナマイト一発で倒せる程度のモンスターでしかない。


 千春本人は装備した武器を使わないと、という思考に侵されてアイテム攻撃という自分の武器を忘失しているのだが。


『ガウッ!』


 砲声一発。


 ポチの顔の前に緑色に輝く魔法陣が展開し、そこから風の砲弾が放たれた。


 主人である千春のフォローをするように、ポチの風の砲弾は命中。


 風の砲弾は竜巻を強引に球形にして放つ魔法攻撃。


 その砲弾はドリルを押し付けているかのようにゴーレムの硬い岩の体を削る。


 激しいダメージエフェクトを連続させ、その一撃でもって消滅させる。


「うぅ……っ、情けない主人でごめんね、ポチ」


『ワフッ』


 体を捻って、ポチは千春の顔を慰めるように舐める。


 それで元気を取り戻した千春は嘆きの渓谷の攻略を再開する。


 その後も鳥型の岩ゴーレム(鳥だけど自重のせいで空を飛べない)や獣型の岩ゴーレム(自重のせいで速く動けない)などが現れたのだが、千春が倒せたのは三体だけで、その十倍以上の数をポチが倒す事で難なく嘆きの渓谷の攻略は終了した。


 武器の選択を誤った事により苦戦したように千春は感じているが、実際は苦戦らしい苦戦はしていない。


 その証拠に、千春は嘆きの渓谷では一度もダメージを受けていない。


 嘆きの渓谷に出るゴーレムたちの動きは基本的に遅く、そのため古狼との戦闘で攻撃予測、回避行動に慣れた千春に触れられなかった。


 攻撃もあてられなかったため、ポチがいなければグダグダの泥試合になっていたのだろうが。


「次は『朽ちた鉱山』だね」


 千春はマップを表示し、事前に調べて探してピン止めした朽ちた鉱山の場所を今回の目的地としてミニマップに反映し、その方角へ歩き出す。


「早くレベル上がってくれないかなあ……」


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 装備品で補うとか言う発想も出てこないか。 相棒が有能すぎて頼もしいな!!。
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