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62話

 

「うぅ……。まさかオオカミさんが無関係だったなんて」


 千春が苦労して倒した古狼は特に何のクエストにも関係していない、今回のアップデートで大陸に数体ずつ配置された特殊モンスターの一体だった。


 特殊モンスターと言っても『強い』という以外の特徴は『結晶のドロップ率優遇』という程度でしかない。


 しかも倒されるたびにドロップ率が下方修正されていき、最終的には普通にエンカウントする雑魚モンスターよりも結晶ドロップ率が低くなるように設定されている。


 攻略情報の出回らない最初の方だけの早期討伐特典のようなものだった。


 だから完全に無駄ではない事だけは救いとなっている。


 勘違いに気付いた千春がマップを頼りに再び『尾王の森』に行き、全方向から波状攻撃してくるモンスターを倒しながら進む。


 最初はその波状攻撃に冷静さを奪われ、マップを見てクエスト目的地の確認を怠り、結果あからさまなボスモンスターらしき風貌の古狼に遭遇した事で「このオオカミさんが仇に違いない」と思い込んだ事で発生した狼違いだった。


 今回は冷静に波状攻撃にも対応して進む。


 何度も何度も、古狼に挑戦するために通った道である。


 慣れという事ももちろんあるのだが、そこに今回は『ポチ』まで加わっている。


 子犬もとい子狼は『真狼フェンリル』にまで進化する可能性を秘めた王者の一角。


『ガウッ!』


 千春に甘える時には聞かせない凛々しい咆哮には同種族に抜群の効果を発揮する『王者の威圧』というスキル効果が乗せられている。


 そのため凶悪そうな成体の狼たちがポチの咆哮で委縮し、強制的に体を硬直させられた所をがぶり。


 子供でも上位種であるポチの一撃は確定クリティカル攻撃となり、一撃で狼たちを倒していく。


 おかげで千春は戦闘は完全にポチに任せて地図の確認に集中できた事で今回は間違えずに目的地までたどり着けた。


「まあ目的地にいたクエストボスもポチちゃんが吠えた後の一噛みで倒しちゃったんだけど」


 非常に楽ができた上にポチの倒したモンスターの経験値は主人である千春にも入るため、今回の古狼戦でいくつも下がったレベルを取り戻すのも早いだろう。


 という経緯からクエストは更新され、千春のマップにはラグアの街の中にクエスト目的地の表示が新たに映っていた。


 今はそこを目指して歩いている最中。


 ちなみに子犬サイズだったポチは『尾王の森』での戦闘を経てレベルが上がった事で中型犬程度のサイズにまで成長している。


 これはこれで可愛いのだが、子犬サイズのポチをもっと可愛がりたかった気持ちもあって少し残念に思う千春だった。


「あ、冒険者さん!」


 少年はラグアの街のゲート前におり、千春が一定距離に接近するとこちらに気付いて駆け寄ってきた。


「ばーちゃんの仇を取ってくれてありがとうございました!」


 まだ何も言ってないのに!? という内心の驚愕を笑顔の裏に隠す千春。


「今朝、ばーちゃんが夢に出てきて満足そうに笑ってたから、きっと冒険者さんが仇を取ってくれたんだって思ったんですけど、違いました?」


 不安そうに尋ねてくる少年。


 この質問に『まだ倒せていない』と返す事でクエスト挑戦中状態を維持でき、この間に他の大陸の同系統クエストに挑戦する事で受け取るレシピの選択が可能な状態を作る事ができる。


 だからここでは『まだ倒せていない』を選ぶプレイヤーがほとんどなのだが、千春はこのクエストを物語として楽しんでいた。


 つまり結末は見たい。


「ちゃんと仇は取ってきたよ」


 時間はすごくかかったけどね、と古狼との戦闘に明け暮れた日々を思い出して笑顔を少しだけ引き攣らせた。


 虹の結晶からポチを迎えられたからよかったものの、場合によっては虹の結晶もドロップせずに徒労に終わっていた可能性も十分にあった事を思えば、笑顔が引き攣る事もある。


 クエストクリアの報告を聞いた少年は、涙を浮かべながら晴れやかに笑った。


 これで千春は太陽石を使った武器のレシピの入手に成功し、何度もお礼を口にしながら立ち去る少年の背中を見送り、視線をポチに向ける。


「私たちも帰ろっか」


『ワンッ』


 ブンブンと尻尾を振りながら後ろを付いてくるポチの姿を微笑ましく眺めながら、千春はラグアにある拠点へと移動した。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 頼もしい相棒が出来て良かった、ここから先も 頑張って行けそうですね。 この選択、凄い罠クサイ仕様な気がするんだよなぁ、 結果が楽しみです。
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