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彼(女)は彼岸に咲く花  作者: 耳デカネコ目イヌ科キツネ属
第1章「KO U ERA」
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2話『花器』

do it!


♢放課後、雨が降った。何となく外を覗き見ながら華道部の部室へ向かう。


「今日もアルが一番早いね、でも先生はまだだよ〜」


♢脳天気な声でウサギ耳の彼は華道部部長、有馬(ありま) (こころ)、華道部には男子は五人、女子も六人いるが男子は大抵全員来ているが、女子は二人を除いて一回しか来ていないようだ。そしてちゃんと来る女子の二人は二年である。


「こんにちは…そうですか、すこし休みましょうかね。じゃあ」


「君も大変だねぇ、あ、そろそろ来ちゃうかも」


「あれのセクハラを止めてください」


「ごめんね。僕も怖くて手が出ないよ…葉さんはすごく強いからね…」


「はぁ…そういえば煌さんは?」


煌貴妃(きらめき きき)、ココロと同じ学年で学校のアイドル的存在、そして彼の恋人の生徒会副会長。妖術はものを付けるの力を持つ「接合」。シンドバットにとっては部活動中に葉からの校内でのセクハラを止めた恩人なので煌さんと言って慕っている。


「あー、キキは生徒会だってさ、会長狙ってるだけあって忙しいみたいだね。何かと」


「そうでしたか…大変ですね」


♢ガラガラとドアが開く。シンドバットは祈っている。足音は一歩一歩着実に近づいてきているので彼は祈り握った手を徐々に強くしていく。そしてとうとうその足音が背中で止み肩を叩く。彼が後ろを振り向き少しづつ目を開きながら確認すると…


「よお」


♢声をかけたのは痩せ型、イタチのような耳としっぽを持つ赤井(あかい) 愛琉(あいる)面白い顔をしていると言われている。赤井に対してシンドバットは苦手意識が少しあるがほぼ毎日一緒に帰っている中学生来の三人の友人のうちの一人で妖術は相手を転ばせる「カマイタチ」。


「ああ…二人は?」


「いるぞ、っていうか俺に冷たくない?」


「そういえば最近はいつもの場所にもいな、シンドバット」


♢低く過ぎず高すぎずの美声を持ちいてシンドバットに質疑したのは三人のうちの一人、鬼のような角が生えている鬼人の血筋、加藤(かとう) 段像(だんぞう)。運動能力は他を凌駕している。2mはある大きな少年で妖術は力を奮う能力、「金剛力士」、力のある鬼の中でもかなりのパワー型だ。


「あれ、海は?」


♢海というのはサメの型のヒレと青い鮫肌の少年、小桜(こざくら) (うみ)という。サメ型なだけあり泳ぐのが得意で公式大会でも銅以上を常に獲得している。妖術は樹木を司る「木遁」。遁術に関しては使い手は多いものの小桜家はその中でもかなり優秀な木遁使いだ。


「今日は休みかな」


「風邪とはらしくないな…」


♢ふと、思い出した様に二人はココロに挨拶する。


「あ、こんにちは」


「こんにちはー」


♢忘れられたことに対してココロは落ち込み肩を落とす。


「おっふ…そんなに影が薄いかな?」


「いやー、で…っ!」


♢アイルがなにか言おうとしたのをダンゾウが無理矢理口を塞ぎ、シンドバットがフォローする。


「そんな事ないですよ!そんな素敵な耳があるから寧ろ皆から見られますよ!」


「そう?…だといいな」


「そうですよ!」


「加藤くんもそう思ってくれるかな?」


♢ココロ部長の気分は上がっていき寧ろ心地良さすら彼は感じていた。ダンゾウが気を抜いて手を離しアイルが何か言いかけるがシンドバットが覆い被すよう叫ぶ。


「まあっ…!」


「揃ったので準備しましょう!」


「今日はやけに元気だね、まあいいことだ。先生来る前に準備終わらせちゃおうか…あ、まだ一人いるじゃん!」


「いや、全員なので準備を、」


♢びゅんと風を切って少女が窓を掴み現れる。アイルとダンゾウは会話中で全くそちらを見ていなかったがその顔はにやけている。ココロは顔を手で覆う。彼女の速さに風が吹き上げたせいでスカートの中から薄い桜色の下着が見え隠れした。シンドバットはため息をつく。


「せめて下に体育着かスパッツくらい履いてもバチは当たらないと思います」


「冬になったらね」


♢葉は窓から降り少し服装を整えた。そしたら後輩二人が挨拶をする。


「ちわっす」


「どーも」


「はろはろ部長と二人とも!…じゃあ準備しようか、今日は何をするの?」


「ああ、今日は1年の指導がメインになるかもね。僕らもすることあるかもだけど」


♢この部活には3年が不在で2年が最高学年で部長も2年が務めている。


「はーん。なら部長は二人よろしく、ぼくはバットを見るからさ」


♢シンドバットは口をパクパクと動かしココロの方を向く。しかし彼は無表情に答える。


「ああ」


「え、たまには部長が…」


「天才直々の指導だから喜ぶべきだよ」


♢ココロの手には赤い結晶が握られている。


「ですが、部長も…ぬっ、くっ、あがっ」


♢シンドバットは過去の経験から声にならない声をあげるも部長という立場と能力に逆らいはしなかった。彼の妖術は生み出した結晶を砕くとその結晶に写った者をその形に応じ変化する術をかける「弥生の赤い月」、今の形はマーキーズ、これは理性破壊。シンドバットはかつてそれで葉に対し素直になりすぎそれを利用した葉は謹慎を一回喰らっていた。シンドバットが折れたら準備を皆初める。‬


「全く君は本当に一途で良い奴だなぁ!」


「部長の深が黒すぎるだけですよ…」


♢そういった後、シンドバットは小さく囁く。


「それに恋人が愛おしくないわけないじゃないですか…あんなに可愛いですし」


♢ココロは彼に「君は優しすぎるやつだ」と笑いながらいう。シンドバットはその言葉の意味を理解し葉の方を慌てて軽く横目に捉える。すると当の本人は腕を広げ目を閉じている。たぶん聞かれていたのだろう。


「やっぱり君は可愛いなあ、おいで!」


♢シンドバットは視線を戻し無言で準備を始めた。しかし葉も謎の意地なのか言葉とは相対して自分からシンドバットに近づいていった。


「冷たいなあ、なに?ツンデレっすか?おっおっ?」


「部長、どの器を誰が使いますかね」


「君たちはこういう縦長のやつを好きに選んでー」


♢シンドバットは3つ似たような形の花器(かき)を取り出しそれぞれ机の上に置き、シンドバットは部長に尋ねる。ダンゾウは5人分の水の入ったボウル、アイルはその他諸準備をする。


「部長は何を使います?」


「いや、いいよ。もう準備してるから 」


「流石ですね…」


♢ココロの花器は丸い輪のような楽器のような見た目で色は黒、穴は三つだ。一年らは凄い形だなと関心してそれを見つめていた。


「…あと20分くらいしたら来るってさ」


♢この華道部は学校外部からの指導を受けていた。


♢シンドバットは準備を一先ずは終えたのでポケットから取り出しスマホをいじる。それと同時に通知が来る。誰かからと思いみてみると彼のプレイしているゲーム、通称「宅配人」の公式からのお知らせだった。彼はそれを見て驚く。


「ん!?見ろ!」


♢慌てた様子で画面をダンゾウに見せる。そこには『DL者全員参加可能! ゲームイベント!』と大きく書かれていた。


「おお!」


♢シンドバットは下にスクロールし、宅配人特有のいつもながらの長い文章を読む。


「えーと…ざっくりいうとダウンロードしてる人は全員参加可能型で、会場は北ヤマト、コンジキビル・F5、イベントの内容は声優や開発者によるトーク、会場限定イベントの解放…日にちは7月12日」


「え?!2週間後の日曜日じゃん…俺まるまるバイトだよ…それになんでそんないきなり?」


「なんでこんな急な告知かは知らないけどダンゾウが来れないのは痛いなあ」


♢彼にはこの学校にいる友人で宅配人(デリヴァラー)のプレイヤーはダンゾウのみだ。他の学校の友人には一人、心当たりがあるが一人はワークスケジュールでバイトがその曜日に入っていることを知っており、この学校にももう一人いないことはないが、しかし誘う気になれなかった。


「じゃあイベントは二人きりだね」


♢先輩の声を無視し無言で彼はブラウザーを開く。‬


「…」


♢彼が見ているのは幾万もの登録者がいる小説を個人で投稿できるサイトだ。そのサイトは常に様々なイベントを開いており何れかのイベントで賞を取ることでそれが書籍化することができる。そして今最も注目を浴びている作品は下水道という作者が執筆している「Revive」、作者は何故かどのイベントにも参加しないで淡々と物語を進めている。読者は疑問を投げているが作者である下水道は一切それに触れない。‬


「あ、それ面白いよね!最近私も見てるんだ!」


「そうだったんですか」


♢投げやりな返事に対しては気にも留めていないようで葉は話を続ける。彼女自身ははかなり有名な漫画家で彼女は普段では想像もつかないような「エゴ」というダークファンタジーな日常ものの漫画を描いている。そのうちにアニメ化されるらしくよく深夜枠にCMで流れている。


「そう!主人公のリンと親友のケイの関係が友情に留まるのか恋に傾くのか、ドロドロに芽生える禁断の愛というか…っていうかどこまで読んだの?」


「いや…4章の3話までです」


♢4章は現在進行形で更新されている。今はまだ3話までで2日前に更新されたばかりなので4話はまだ先になるだろう。


「結構読んでんね。いやいや、まさかバットがそういうの興味あるとは思わなかったよ」


「俺はそういうファンタジー好きですよ」


♢彼がコメントを見ている。「今回も楽しめました」などと書かれているものもあり中には長く固いものやもちろん批判的で冷たい言葉もあるが総合して見ると高評価の方が高い。


「うーん…!」


ーーガタッガタガタッーー


♢立て付けの悪い扉が開かれる。そっちから来るのは大抵A棟にいる3年か職員。だが、華道部には3年はいない。だとすると顧問か華道の講師だが顧問は部活の終わりギリギリまで職員室で趣味であるネット麻雀に浸かりこんでいるので、選択肢はほぼ一人に限られる。全員はスマホをしまう。


「はい、こんばんは」


♢華道の講師の名は草月(そうげつ)、耳は狐、化粧は無く、アラフィフだと言うのにその肌はハリと艶があり20後半と言っても騙せるだろう。


「早速だけど、1年は盛花の基本傾真型だよ」


♢言葉はやけにフランクだ。


♢準備を予めしていた部員たちは自分が使うであろう花材を取っていき先輩と先生の指導を受けながらぎこちない手つきで花を活けていく。


「1年生も自分たちで見てわかるかな?最初の時に比べてすごい上手になってるね!」


「ありがとうございます」


♢一年の三人は返事をするも誰一人自分が上手くなってるかなんて理解はしていなかった。一年で一番センスが高い部員は今日は欠席の海だ。


♢ソウゲツはココロの方へ向き独り言のようつぶやく。


「キキは仕方ないとしても…本当に女子は来ないね…」


♢困る顔の部長に救いの船を出すが如く横からひとつの言葉が流れる。


「どうですか?」


「あら、いいじゃない。じゃあ片付けてスケッチしてね」


♢一番最初に終わったのはダンゾウだ。その次にセクハラに悩まされたシンドバット、そしてアイルと来て三人の出来はそこそこだった。指導を終えた二年はそれぞれも活け始める。二年にもなると指導といっても軽いアドバイス程度で済む。二人それぞれが別の美しさを持っていた。


♢そう指示をするとすぐにココロの方、正確には彼の花器の方を見る。


「やっぱり二年になると違うね…!?」


♢ココロの方の花をじっと見つめ首を傾げる。ソウゲツが近寄ると、冷徹な空気を放ちココロの方へ顔を向ける。視線でなにか話をしているのか、笑顔のココロの瞳を見つめていたソウゲツが怯みアイコンタクトは終了した。


「に、二年生もスケッチをしてね」


「うぃ」


♢葉は豪快にシャーペンを滑らせていく。シンドバットは口を抑えながらそれを眺める。


「どうで…す?…!」


♢そこに写されたのは目の前の静かながらも力を感じる造詣が深い華の作品。ではなくこの世のものとは逸脱した、暗黒物質と言い表すのが丁度いい代物だ。シンドバットは汗が滝のように流れ出ていた。


「おうふ…絵は上手い筈なのにどうして」


♢そして、一、二年終わると、ソウゲツは顧問から今回の受講代を受け取り帰っていく。その足は少し震えていたようにも見えた。そして学校の所々に各々の作品を置き、部長に挨拶をしてから帰る。その部長は「最近は物騒だから、皮剥事件は男ばかりだし…アルは葉がいるから大丈夫だと思うけど二人は気をつけてね〜」と言っていた。ダンゾウとアイルと共にシンドバットは駐輪場に全力で駆けようとしたが、既に腕を葉に掴まれており間に合わなかった。


「かーえろ」


「…」


「雨だからこっちの方が安全でしょ??」


「は、はぁ…はい…」


♢葉は完全狼化をすると結構な大きさがある。そしてシンドバットを背に乗せ歩いていく。途中背中で彼は寝てしまい家に着いても寝ていたので葉はそのまま寝かせてあげようと庭にある越してきて当初からあった雨宿りできるくらいに大きい木に寄りかかり膝枕をしていたら葉もつられ眠気に襲われ葉もいつの間にか寝てしまっていた。

シンドバットの家の髪は母以外茶色よりの赤毛で葉は明るい茶色です。他は今のところ全員黒です。

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