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彼(女)は彼岸に咲く花  作者: 耳デカネコ目イヌ科キツネ属
第1章「KO U ERA」
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1話『日常』

日頃から合間の時間にちまちまと足りない語彙力で書いているもので…設定を書きながら忘れてたりします。

♢時計は6時半、いつも通りの時間に目が覚める。入学して1ヶ月後の体育祭を終え、しばらくはイベントは何もない。


「(このアラーム…ここに越してきて今日でもう6年か、最初は獣人(ファー)のようでそうでもない人間のような人達に驚いたなあ…)」


♢七つある大陸のうちの一つ。ツォール大陸、そこに点在する国の名はムサシ、獣人(ファー)のような違うような生き物が過ごしていた。ファーというのは別の大陸、ギアに住む獣よりの人型の人種だ。


「しんー!ご飯できたよー」


♢アル家の今日の朝食はパンと目玉焼きだ。次男と三男は部活の朝練があり先に朝食を済ませ家を出る。長男シンドバットと四男は遅れて食事を済ませた。そしてシンドバットは支度を済ませ、前にまけなしのバイト代で買ったクロスバイクに乗り漕ぎ出した。


「(…7時15分、よし、間に合うな)」


♢彼の住んでいる土地は山を整えただけなため坂は結構厳しい割に長い。しかし行きは下りのためこの夏の季節になると清々しい。


♢その 坂以外は特にこれといった厳しい坂もなく学校まで50分ほどでたどり着く。この国には魔術が一般化されていないため魔術を習う学校はなく小中高大専門と学校はなっている。シンドバットはその中の高に入る。彼は1年の6組、3列目の先頭に席がある。そこに荷物を置き、高校でできた友人、向島隼人(むこうじま はやひと)の前の席に座る。その手は3週間後にあるテストの日に提出のテキストを進めている。


「アル…最近来るのが早いな」


「そうか?…まあ男子は俺とお前だけだな、ハヤトはどうしてこんなに速いんだ?」


「俺はハヤヒトだ!…まあもうそれはいい。俺は学校でしか勉強する気がないからだ。それに夜まで学校残るが嫌だからこうして朝にやってる」


「まーじめー」


♢シンドバットの言葉が終わるとまたクラスのドアが開く時刻は8時ちょうど。後ろ髪は肩甲骨下まで伸び、前髪は目を完全に隠すほど長く本当に見えているのか気になるほど、身長は平均より少し高め、スタイルは良く胸の発育がとても良好。シンドバットはその女子、佐鳥太陽(さとり たいよう)に声をかけた。


「シンドバットくん…おはよ」


♢シンドバットは太陽の手の甲を見る。青くなっている場所があり目に入ると目を閉じた。


「ど、どうしたの?…これのことは気にしないで!」


♢太陽もとい、佐鳥一族の力は(かく)と言われているもので其の名の通り読心の妖術を持つ家系にあった。


♢ムサシには魔術の代わりに妖術というのが一般化されておりそれぞれの個性がある。タイヨウの力は悟りと言われているもので其の名の通り読心術も力の一つにあった。


「ああ、そこは口を出すつもりもない」


♢シンドバットは安堵したタイヨウの隙を見て前髪を軽く分けて目を見えるようにする。


「よし」


♢しかしタイヨウはまた隠し見えないようしてしまう。


「この目のせいで…」


「その目は好きなんだが…個人的には優しそうだ」


「まあ目付きは悪いわな」


♢隼人は横槍を投げた。


「そうか?可愛いと思うけどな」


「彼女に怒られるぞ」


♢シンドバットには一つ年上の彼女がいる。嫉妬体質で目付きもそれなりに悪いが太陽のそれと比べると可愛いものだ。体は太陽と違い髪は肩の下まで伸びているが、ちびで貧相だ。それに他のムサシの国民と違い耳と尻尾は出ていなかった。それが今、3人の目の前にどこからとも無く現れる。


「紅先輩どうしました?」


♢シンドバットは心臓を激しく打ち鳴らしながらも苦し紛れにすっとぼけると彼女は笑顔で歩み寄る。ちなみに名前は紅葉(くれない このは)だ。


「 む、調子に乗ってるとぶち殺すぞ?」


「でも、ほら可愛いでしょ?」


♢太陽の髪を掻き分け目を見せる。


「目つき悪っ」


「ですよね…」


「いいと思うけどな…」


「…恋人の前で他人を褒めるのは良くないと思うよ?」


♢太陽に言われ、ことの悪化をシンドバットは気づく。逃げようとすると、耳と尻尾が生えている。それを見て彼は諦めたように脱力して素直に捕まる。葉の力は賢狼、狼化の力だ。変化の度合いで力は変わってくるが、一般人を抑えるには耳と尻尾で十分ことが足りていた。


「ごめんよごめんよ」


♢シンドバットは跨がられる。彼は目を合わせないようしているが彼女は無理矢理目が合うよう顔を向ける。


「だーめ」


「んぐぐ…くびおれま…」


「バットが抵抗するからだよ?」


「わ、わかりましたから話してください」


♢葉がシンドバットから手を離すと、素直に彼は葉の方を向く。


「で、何か言うことは?」


「悪いと思ってます。反省してます。公開はないです…ぐふっ!」


♢腹の上で跳ねられる。葉は軽いものの飛んでいる場所が鳩尾のためかなり苦しそうになっていた。


「なんでかな?」


「あの目が気に入ってるからで…」


「私の目は!?」


「目だけじゃなく全部好きです…!」


「もう、許しちゃう!」


♢ハヤヒトとタイヨウが軽く鼻で笑いながらドアのほうを指さす。二人が見ると、二人を見つめる四、五人群れ、というよりシンドバットのクラスメートが二人を見つめていた。またかと呆れるものや笑うもの。恥ずかしそうにそっぽ向くものがいた。


「あ、ごめんね!みんな入っていいよー…バット、次同じことやったら…ね」


「う、うす」


「(あいつも大変だなぁ、見てて楽しいけど)」


♢楽しそうに去っていく葉、鼻で笑いながらも立ち上がるのを助けるハヤヒト、シンドバットは後悔していたが、反省はしていなかった。時刻は8:10分、人はそこまでいない。


「バレないように太陽を褒めるのは難しいな」


「また懲りずに…私のためをそんな」


♢タイヨウが言い終える前にシンドバットは笑いながら答えた。


「いいものは愛でるのは本能だからね。しょうがないね」


♢ハヤヒトはお前らしいと呆れながら笑う。その手は先程とは違い、学校とは別のテキストを進めていた。


「ほんと勉強好きだな…」


「それしかないからな、それにいつかムサシの技術を世界一にしたいから…な」


♢ムサシの化学技術において世界でも指折りだが主席にはモア国が他と大差をつけ鎮座している。他の国より100年以上は進んでいた。それは軍事、生活、産業どれにおいてもだ。国土の大きさから差はあれども基本は発展している。


「ん?」


♢なにか走ってくる音がする。その音は人の出す音より乗り物に近かった。


「そういえばなんで今日は7時半に家にいなかったの?!」


「自転車です」


「私とくればすぐ行けたのに」


「吹き飛ばされます」


「咥える」


「汚れます」


「なんとかするから」


「それでなんど死にかけたと思ってます?僕は妖術が無ければ一般教養レベルの魔術も使えない、書き映す力しかないんですよ…」


「むううう」


♢葉はその場に倒れ込み唸る。


「先輩なんだからここでそんなみっともない事しないでくださいよ」


「いいもんいいもんバットの恥ずかしいエピソード話すモン」


「え?」


「デートする時彼はー!」


♢ 葉の口を慌てて塞ぎ、シンドバットはそのまま教室を出て廊下端まで葉を運ぶ。


「はぁ…はぁ…言わないでくださいよ」


「新たなキャラ作り?カワイイ系?」


「いりません、ただでさえあなたのおかげて僕の立ち位置不安定なんですから」


「それほどでも〜」


「…」


♢ため息を大きくつき弱々しくシンドバットは教室へ戻ろうとする。


「待って!」


♢シンドバットは振り返る。


「好きだよ」


♢シンドバットは無言で葉の額にキスをして教室へ戻る。


「お疲れ様…その様子だとキスでもしたのか?」


♢ハヤヒトは一切シンドバットを見ないで答えた。「え!?お前エスパーかよ!」と尋ねる。


「そんなところだ」


「ええ」


「冗談だ。まあタイヨウは全て察したようだが」


♢タイヨウはそっぽを向いている。どうやら全て読めているようだ。それもそうだ、玃の妖術というのはそういうものなのだから。


「ごめんね」


「正直少しづつ慣れてきたから大丈夫。うん!」


♢少し口角が上がっている。彼女の目が見えないからわかりづらいが、二人の関係に慣れてきてはいるものの見えすぎてしまい恥ずかしい。そんな表情だ。


「本当に…すまない」


「ま、まあしかたないよね」


「…」 


「…」


♢会話に間が開くと、近くのドアがガラガラと開く。男女のペアが入ってくる。一応恋人同士で常にくっついてるのに何かと互いにツンツンし合っている小沼一(おぬま はじめ)鷹村愁(たかむら しゅう)だ。ハジメはイケメンでシャボン玉を生み出す術、「泡沫」。シュウはボインと胸が大きくで父はモアからの移住者、魔術と妖術の形質が混ざり雷を司る力、「雷々落々」の持ち主だ。


「離れろうざい」


「ハジメこそ離れてよ気持ち悪い」


♢付き合ってるのに仲が良いのか悪いのか微妙な関係でたびたび中学のときクラス内で議論が起こっていたがキスなどに至っている証拠があるので関係はかなり良好であると彼らを中学時代から知るハヤヒトはそう語っている。今年で付き合って4年目だ。


「今日も仲いいねー」


♢シンドバットが茶化す。二人は彼を睨みつけほぼ同時に言葉を重ねる。


「「良くない!」」


「じゃあ悪いのか?」


「「そ、それは…」」


「やっぱり仲いいね」


「「うるさい!」」


♢先ず彼らを茶化して本調子を取戻すシンドバット。そんな彼にタイヨウはある話題を提示した。


「君は紅先輩をすごく大切にしてるよね」


「まあ…昔に約束が」


「紅先輩は幸せ者だね」


「俺はお前らも幸せにしたいけど?」


「はっ…なにそれ」


♢鼻で笑い面白半分でその真意を問うタイヨウに向けて、シンドバットはかなり真剣な顔つきで答えた。


「友達は大切だろ?」


「ぷっ…アハハハハハハ!!…ほんとシンドバットは良い子だよ…ありがとうね!キャハハ!」


♢タイヨウは笑い、出てきた涙を拭いつつ言った。その目はどこか悲しくもに見えた。


「そんな子供のような夢物語もそのうち終わるぞ…お前のような描き映すことに特化した力は絵でも描いて画家でも目指してろ」


♢皮肉を言うハヤヒトに向け、少しムカッとする。そんな彼を鼻で笑い余裕な表情をするハヤヒト。


「…そうムキになるな…俺が悪事をはたらいたらよろしくってだけだ…その剣で」


「ん?任せろ、ひっぱたいて目を覚まさしてやる」


「…甘いな」


♢友達だからな、と言わんばかりにシンドバットは胸を叩く。しばらく間が開き、走りながら入ってくる生徒が見られる。時刻は8:35。


「お…もう時間だ。座らなきゃ」


♢担任が入ってくるとシンドバットは自分の席に戻り本を取り出す。彼の通う学校では朝に15分間読書の時間が設けられていた。ハヤヒトとすれ違う際、彼の眼差しはどこか寂しそうに見える。


「本出せ〜」


♢担任、日馬(ハルマ) (マサル)の特徴的なイントネーションを真似する生徒が数名。ハルマが気にすることもなく読書の時間が始まる。


「読んでないやつも読め〜」


♢シンドバットが読んでいる本は「ウマの狂犬」という作家の「山羊の胎」という本で全能の化け物が一人の男に惚れ共に生きようとする物語だ。この作者はこの国では一、二を争う人気だ。しかし顔や性別、人種も分かっておらず、一つ前の作品で家事が大変ということ以外その素性は明らかになっていない。


♢読み進めて15分、ページはあまり進んではいないがチャイムが終わりを告げる。そして朝のHMが始まる。


「気をつけ〜礼〜おはようございます〜」


♢号令係のやる気のない声が日常の倦怠感を表現していた。

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