prologue~ーーーーーな世界で生きている~
頑張るぞー!
カタッカタカタタン
モニターの薄い光を反射しながら顔を伝って汗が流れ落ちる。指は休むことなくキーボードを叩き、画面上のキャラクターを細かく動かす。
カタカタタンタタカタッタン・・・
休み無く続いていたキーボードの音はやみ、その変わり軽快なメロディーが暗い部屋に響く。モニター上にはWINの文字。しばらくすると画面が切り替わり、エンディングが流れだす。
「はぁぁ・・・」
このゲームはキーボード全面を使い、細かくキャラクターを操作するゲームだ。だがその異常なまでの難しさ故に、クソゲー。そう呼ばれた。
『完全制覇、おめでとうございます。マスター。』
「ああ。」
部屋中に搭載されたスピーカーのうち一つから機械的な声が放たれる。それに短く返事を返し、少年は大きく伸びをした。
「1ヶ月かかったなぁ、全クリ。」
クソ鬼畜ゲーの名は伊達じゃなかったか。
「ふぅ・・・終わったなぁ。・・・・・・・また、新しい暇潰し探すか。」
『学校はどうされます?』
「行くわけないだろ?」
『そうでしょうね。』
クスクスと笑うスピーカーの声。それに合わせて少年もクククと笑う。
「これがクソゲー?笑わせるなよ・・・・この社会、この世界、それこそがクソゲーだ。」
他人の顔色ばかり伺って、したいこともろくにできない、息もしにくいそんな世界。
ああ、なんてくだらない世界だろう。
俺はくだらない世界で生きている。
無責任で嘘つきな世界だ。
ブンッブンッ
「152・・・153・・・・」
朝日が道場の中に差し込む。その中心で少女は木刀を使い素振りをしていた。切れ長の目、整った精悍な顔立ちは女より男を思わせる。
「200・・・・ふぅ・・・」
少女はため息をつくと、タオルで汗を拭きベンチに座る。
「お疲れ様、姉さん。」
道場の扉を開け、現れた少年は冷たく冷やしたペットボトルを少女の横に置き、微笑む。その少年を視界に捉えると、少女はうっすらと笑みを浮かべる。
「ああ、すまない。」
「ううん、無理しないでね。」
独特なハスキーボイスと男のような口調。自分でも男のようだと思う。だがそう話せと言われ、育ったのだ。仕方がない。病弱な弟に変わり、強くなれと父に教えられた。自分の為だと。
「何が俺の為だ。」
自分の名誉の為ではないか。
深いため息が道場に響く。その様子を見た少年は姉に言った。
「お風呂、沸いてるよ。入ってきなよ、姉さん。」
「そうか、ありがとう。」
父は、俺達を残して逝った。無責任に、親としての務めは果たさずに。
ああ、あの時から思うのか。
この世界は無責任で嘘つきだと。
理不尽だ。
日の光の差し込まない路地裏で青年は目を開けた。周りには巨体の男と幼い少女が寄り添って寝ている。
「オイ、起きろ。」
巨体の男の肩を揺すり、青年は声をかける。呻き声を上げて、男は少女を起こさないようにゆっくりと起き上がった。
「相変わらずデカいなぁおい。」
「・・・・」
男は何も答えず少女を抱き上げ、組んだ足の上に乗せる。少女は少し眉をひそめるが、しばらくすると再び規則正しい寝息をたて始めた。幼いその顔を見つめながら小さく微笑む。
この世界は理不尽だ。どうしようもないほどに。此処にいる奴等は皆、大人達の勝手な理由で幼い頃から路地裏で過ごしてきた者達。理不尽にも、そういう親の子として生まれた。
青年の前の男は親に捨てられた。親にとって要らない子供だったからだ。少女も同じ、生まれてすぐ捨てられ、親の顔も知らない。
「・・・・理不尽だよなぁ・・・・」
少女の頭を撫で、青年は呟く。すると少女は小さく目を開けた。
「・・・・む・・・兄に?」
「おはよ。」
苦笑しながら青年は少女を抱き上げる。男は少し不機嫌そうな顔をしたが、すぐに無表情に戻る。
理不尽な世界で俺達は生かされている。
「いつか見返してやるさ・・・・」
絶対にな。
「・・・・つまらない。」
少女がぼそりと呟く。
「なんだ、唐突に・・・。」
壁にもたれかかり書物を読んでいた青年が顔を上げ、問いかける。男は濃い紅色の髪を揺らしながら少女のそばへ近寄り、腕を組む。
「つまらないのだ、わからんか。」
「わかるか。」
大きくため息をつき、少女は立ち上がり、障子を開け放ち縁側に座り込む。そして、自らの髪を弄びながら近寄ってきた青年を見上げ、またため息をつく。
「おい、何故俺を見てため息をつく。」
少女は着物の裾を引く物の怪に目をやって、それを抱き上げながら言う。
「最近は人が妖怪を操っていたり、勝手に亡霊の力を使って取り憑かれて、人を傷つけないように戦わないといけなかったり・・・同じような奴等とばかり戦っているんだぞ。つまらない。」
「・・・・確かにそうだが・・・」
「つまらん。」
我が儘か、とでもいいたげな青年の目。
「・・・・行くぞ。」
「どこに?」
少女は青年を見つめ、今日一番のため息をついた。そしてつかつかと歩み寄り、デコピンをする。
「お前は馬鹿か。見回りだ、見回り!サッサと支度をしろ、騰蛇。」
全く、最近の若者は・・・馬鹿みたいな奴等ばかりだなぁ。
「はぁぁ・・・本当につまらない。」
何か変わった事でも起きないか。なんて思っても恐らく何も起きないだろうなぁ。
つまらない世界だ。
どうでしょう、面白く書けているといいんですが・・・
続きも宜しくお願いします。(●´ω`●)