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聖印×妖の共闘戦記―追憶乃書―  作者: 愛崎 四葉
第一章 妖刀使いと妖刀の契約
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プロローグ 妖を連れ行く旅人(挿絵あり)

H30.2.11、イラストアップしました。

 かつて、聖印一族は、妖の頂点に立つ妖王・天鬼が妖を支配したことによって、激しい戦いを繰り広げていた。

 だが、聖印一族の鳳城柚月と半妖の九十九が、天鬼を討伐し、妖は、彼の支配から解かれる事となり、人々も命を救われた。

 しかし、それ以降、彼らの姿を見たものは、誰一人いない。

 彼らは、行方不明となってしまったのだ。

 死んだのではないかと噂する者達もいた。

 それでも、彼らは、どこかで生きていると信じている者がいた。

 その者の名は、鳳城朧。

 鳳城柚月の弟であり、九十九の親友でもあった。

 天鬼が倒れてから、二年後、朧は、彼らを探しに旅に出た。

 それから、さらに、三年の月日が流れた。



「あの洞窟にいるのか……」


 漆黒の長い髪を頭上で一つにひもで縛った青年が、華押街近くの山にある洞窟にたどり着いた。

 彼こそが、鳳城朧だ。

 五年前は、あんなに低かった彼の背は、急成長と言っても過言ではないほど、伸びており、高くなった。

 おそらく、柚月よりも背は高いだろう。

 幼かった顔つきも、今は、精悍で、鋭い目つきに変わり、印象的だ。

 柚月が、女顔であったのに倒し、朧は、男前の顔と言ったところであろう。

 そんな彼の傍らで、小さな白い虎、赤い鳥、青い海蛇が、朧と共に、洞窟を見ている。

 なんと、彼らは、妖であった。

 朧は、ある人に依頼されて、この洞窟に来ていた。

 その依頼とは、妖が、他の妖達に連れ去られてしまったので、助けてほしいと。

 承諾した朧は、三匹の妖と共に、ここへたどり着いたというわけだ。


「朧!どうしやすか?あっしが脅かしてきやしょうか?」


 勢いよく前に出たのは、あの小さな白い虎の姿をした妖だ。

 その虎の名は、陸丸(りくまる)

 血の気の盛んな雄の妖である。


「まったく、陸丸は、血の気が盛んじゃのう。つき合ってられんわ」


「なんだとぉ?」


 血の気が盛んな陸丸を見てあきれているのは、あの小さな赤い鳥の姿をした妖だ。

 その鳥の名は、空蘭(くうらん)

 妖艶な雌の妖である。

 そんな彼女に対して、陸丸は突っかかってくるように、にらんでいた。

 まさに、一触即発の状態だ。


「やめろって、陸丸、空蘭」


 朧が、二人を制止すると、陸丸と空欄は、顔を背け、口をとがらせる。

 一応、仲はいいのだが、こういうやり取りは、日常茶飯事だ。

 毎回、繰り返す二人に対して、朧は、あきれていた。


「それで、朧殿、どうするでござるか?何か、策はあるでござるか?」


 陸丸と空蘭のやり取りを見ても、冷静さを忘れず、朧に語りかけるのは、小さな青い海蛇の姿をした妖。

 その海蛇の名は、海親(うみちか)

 冷静沈着な雄の妖である。

 海蛇ではあるが、なぜか、空を飛べるようだ。

 海親の質問に対して、朧は、笑みを浮かべた。

 何か、策でもあるかのように。


「そりゃあ、もちろん、あるさ」


「なんですかい?朧!」


 やはり、策はあるようだ。

 さすが、柚月の弟と言ったところであろう。

 陸丸達は、期待を膨らませながら、朧に尋ねる。

 どんな策で、あの洞窟に乗り込もうとしているのか、楽しみで仕方がない。

 だが、朧が、提案した策は、予想外であった。


「このまま、突っ込む!」


「ええ!?」


 朧の策は、いたって単純で豪快。

 いや、策と言えるのであろうか。

 堂々と告げた朧に対して、さすがの陸丸達も驚いた様子だった。


「突撃だ!」


 朧は、威勢よく叫んで、駆けだしていく。

 陸丸達も、そんな朧にあきれつつ、後を追うように駆けだしていった。

 


 そのころ、さらわれた妖は、洞窟の奥で、妖達に取り囲まれている。

 そのさらわれた妖とは、幼い化け狸であった。

 化け狸は、体を震わせ、怯えていた。


「人間とつるみやがって。痛い目、みないとわからないようだな」


「うう……誰か……」


 化け狸は、人間と共に暮らしている。

 いわば、共存しているという事だ。

 だが、化け狸をさらった妖達は、人間と共存している事を快く思っていない。

 そのため、妖をさらっては、痛めつけ、人間から引き離そうと試みたのだ。

 この化け狸も、標的にされてしまったのだろう。

 化け狸は、助けを求めていたが、妖達は、化け狸に迫っていく。

 だが、その時であった。


「そこまでだ!」


 またもや、威勢のいい声が響き渡る。

 もちろん、その声の主は、朧だ。

 朧の声を聞いた妖達は、一斉に振り向く。

 朧は、椿の愛刀である紅椿を鞘から抜いた。

 陸丸達も、構えて、威嚇していた。


「行け!陸丸!空蘭!海親!」


 朧に命じられた陸丸達は、一斉に駆けだしていく。

 陸丸、空欄は、妖達と戦いを始める。

 陸丸は、爪で妖を引き裂き、空蘭は、爪で妖をわしづかみにし、吹き飛ばしていく。

 その戦い方は、実に豪快だ。

 豪快過ぎて、妖達も驚くばかりである。

 そんな中、海親は、化け狸に駆け寄った。


「大丈夫でござるか?」


「う、うん……」


 海親は、化け狸をひそかに安全な場所へと連れていく。

 だが、一匹の妖が、海親と化け狸に迫ろうとしている。

 それを、朧は、見逃さなかった。


「させないぞ!」


 朧は、峰内で妖を気絶させる。

 彼は、紅椿を発動させることなく、斬りかかることなく、全て峰内で、妖達を気絶させた。

 陸丸、空欄も妖達を気絶させ、最後に一匹の妖だけが残っていた。


「な、なんで、妖が人間なんかと……。それに、こいつ……強い…」


 朧と共に行動する陸丸達を見て、さらに、峰内だけで妖達を気絶させていく朧の強さを感じ取り、信じられないと言わんばかりの様子を見せる妖。

 おそらく、朧が、あの妖達を自分の命令に従わせるようにしたに違いない。

 そう思うと、妖は、朧を恐れ始めた。


「お前、何者だ!」


「俺は、聖印一族、鳳城朧だ」


 妖に問われ、朧は、堂々と名乗った。


挿絵(By みてみん)


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