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『私はだれ』

真っ暗な箱の蓋が開くと外は寒い冬。

「うわ~冷たい。」

すると中からこんな声がした。

「君は何者かね。」

「儂かね、儂は決まって居るじゃろう。

こんなに緑で活き活きしとる、樅の木じゃよ。」

「ふ~ん。で、俺は。」

「何だい君は自分の事を知らないのかね。」

回りには金銀の星や、

動物のオーナメント、

サンタ人形。

坊やの玩具が一杯。

「君の名は蝋燭だよ。」

「ふ~ん。で何をしたら良いの。」

周りのもの達に。

「何にも知らないらしい。」

「はっはっはっはっは」

樅の木はとても可笑しそうに笑った。

「何もしなくて良いのさ。」

「ふ~ん。」

兵隊人形が云った。

「後で分かるよ。」

赤いクルミ割り人形が悲しそうに云いました。

「貴方はイヴの今夜、火を灯されるのよ。」

蛙の人形が云いました。

「すると、二時間位で燃え尽きるのさ。」

すると蝋燭は真っ白い顔をして、

透明な涙をすーっと一筋流しました。

「さっき箱から出たばかりなのに二時間位で燃え尽きるのだよ。」

むく犬の縫いぐるみが云いました。

すると蝋燭は益々青白い顔をして又、

すーっと涙を流しました。

其の時ばたんとドアが開き、

男の子と女の子が入って来ました。

「わ~い。クリスマスだ、イヴだ。」

楽しそうな音楽が流れます。

お母さんが、おいしそうな料理を並べます。

でも独り蝋燭だけは泣いています。

「では火を灯してちょうだい。」

蝋燭はお父さんの手で火が付けられ、

高い高い樅の木のてっぺんに灯されました。

「メリークリスマス。」

さっきまで泣いて居た蝋燭は部屋中を照らして、

輝いています。歌が流れ、

祈りの言葉があり、

一番大切な日が終わろうとしています。

外では、ごうと風が鳴り、

時々粉雪が舞い上がります。


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