『ライオンと老いたジプシー』
広い砂ばくが、ありました。そして小さなオアシスが有りました。
白い、しまもようが果てしなく続いて、緑の小さな林が、こんもりとしげっていました。
大きな砂山の下に、一頭のライオンが倒れていました。のどがかわいていました。
ライオンは思わず、「かみさま私はのどがかわいています。助けてください。」
とぽろぽろ涙をこぼしました。すると、オアシスの方からすてきな音楽が聞こえて来ました。
ライオンは「しまった。」百獣の王とも有ろう事がなんて様だ。
女々しい(女性の皆様ごめんなさい)一人自分の弱音を悔いていました。聞こえてきたのは年老いたジプシーのギターと歌でした。
彼に自分の弱音を聞かれたかも知れないとうろたえるのでした。ライオンの渇きの苦しみはいやされた。
むかし、アンリ・ルソーと云う画家が居た。町の役人だった彼は、長年抱いていた。
画家の夢を晩年に成って叶えられた。野生味と人間らしさあふれる豊かな感性は人々の心を和ませた。
で、ライオンはどうしたかって。そこまでは考えませんでした。
いえ、実は彼、アンリ・ルソーの作品に「砂漠に眠るライオンとジプシー」のようなタイトルの絵があって、暑さまぎれに思い出した次第です。「どうだい。水でも一杯やるかね。」
年老いたジプシーはギターを置くと、やおら、渇きに喘ぐライオンに与えたとか。
ライオンは空高く啼いたとか。群青色の空には青白い三日月が煌々と冴え渡り夜は更けていった。