新たな力
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気が付くと僕は闇の中に居た。
「ここは・・・・」
『よお、初めましてだな。今代の宿主さんよぉ。ここはお前達で言う所の心の中みたいなとこだ』
闇の中に揺らめく様にしてそいつは現れた。そいつは周囲の闇に紛れる事なく、明かりが無くともはっきりと視認することができた。まるで己の存在を誇示するかの様に。
「あんたは何者だ?」
『俺か?俺はお前の血に流れお前の中に巣くう怪魔ってところだな』
「なら、さっき腕を切断されたのに出血させずに見えない腕を産み出したのはあんたなのか?」
『そういうこった。あれは俺の専門とは違うから止めてくれよ、こっちの命も危なくなるんでな』
「どういうこと?」
『つまり、俺とお前は一心同体って訳だ。お前が死ねば俺も死ぬんだよ』
「あの後問題なく腕がくっついたのは?」
『あれはあくまで応急処置だ、まだ完全に繋がった訳じゃねえからあんまり動かすんじゃねえぞ。外れるからな』
「え、繋がった訳じゃなかったの?」
『当たり前だ取れた部位がそんな簡単にくっつくと思うか?』
「でも、問題なく動かせたし、感覚もしっかりしてたよ」
『それはあの妖刀の切れ味の賜物だ。まるで最初からそうだったと言わんばかりに綺麗な断面だったぞ』
「他の刃物だったらどうなってたの?」
『恐らくあんな簡単にくっつかなかっただろうな』
「腕はどれくらいで完全にくっつきそう?」
『そうだな・・・・骨までスッパリいってたから少なくとも後六刻は必要だろうな』
「ほとんど丸一日かかるのか・・・・」
『気にすんな寝てりゃその分早く回復する』
「つまり一日右手を使わなければいいんだよね」
『そういうこった。ヘマすんじゃねえぞ。』
「分かってるよ。それで、どうやったらここから帰れるの?」
『あ?んなもん俺が知る訳ねえだろ、なにしろ俺もこんな風になったのは初めてなんだからよ』
「でもさっきは僕の事今代の宿主って言ってたじゃん」
『ああ、あの事かあれはなんつーか感覚みたいなもんだ、宿主と会話をしたのはお前が初めてなんだよ。なんせ今まではここまで血が濃かった事がねえからな』
「血が濃いい?」
『ああ、恐らくお前は先祖帰りを起こして妖怪の血が人間の血より濃くなってんだろう』
「じゃあ、何で人間の姿のままなの?」
『そりゃああくまで人間が基礎になってるからだろうな。まあ、変化の仕方くらいは教えておいてやる」
「それをすることで僕に何の利益があるの?」
『そうだな、妖力と霊力の生産量が増えるから体が頑丈になり、
身体能力があがるな。あの鎧の肩をぶっ飛ばした技使っても問題なくなるな』
「どうすれば変化出来るの?」
『あ~、何て言うんだろうな、なんか頭の中で考えたのがそのまま変化した後の姿になる感じだな』
「全くもって理解出来ないよ」
『まぁ思ったままの姿になると思ってていい。ん?そろそろ時間か。じゃあな』
「は?え、ちょ」
再び意識を取り戻した時は蔵の中に居た。体を起こそうとした時に背中に鋭い痛みが走った。
「いっつ、そういや戦った後だったっけ」
『ようやく目覚めたか主よ。急に倒れたので驚いたぞ』
「ごめん、寝てた」
『ふむ、そんな事より主よ我等を納める鞘を探してくれぬか?』
「あー、そうだ鞘見つけないと持ってけないじゃん。僕が寝てからどれくらいたった?」
『半刻と少しだ』
「じゃあもう少ししたら扉を開けるか」
僕は暇を潰す為に蔵の中の物を物色する。その中に一つの文献を見つけた。
「おっ、丁度良いやこれでも読んで時間を潰そう」
その文献に書かれていたのは、よくある童謡の様な話だった。思いの外面白くつい読み耽ってしまった。
「あ、やっば時間は?」
『主がそれを読み始めてから一刻ほど』
「じゃあもう扉開くよね?」
『恐らく』
扉には何故か内側から鍵が掛かっていた。
「なんで鍵掛かってるの?」
『挑戦者が逃げぬようにだ』
「なるほど」
僕は鍵を開け左手に力を込め扉を押した。が、やはりびくともしなかった。
「どうしようこれじゃ開けれない」
『おいおい、何のためにお前に妖体化教えたと思ってんだ?』
「あー、じゃここで一回試してみるか」
僕は意識を集中し変化するものを思い浮かべる。
(取り敢えず人形でいいかな)
が、変化した感じが全く無い。
「これでいいのか・・・・?」
『ああ、いいんじゃねえの』
「取り敢えず扉を押してみるか」
扉を押してみたところあっさりと開いた。
「うそやん」
「っ!やっと出てきたわ・・・大丈夫だったの?」
「まあ、なんとかね」
「全く心配掛けないでよね、体に悪いから」
「そんな事よりちよっと手伝ってよ」
「そんな事って!人が折角心配してあげたっていうのに!」
そう言って桜子が掴み掛かってきた。
「ちょ、ちょっと待って!腕とれるから!」
「腕がとれるってどういう事よ!説明しなさい!」
「えっと、実は・・・・・」
僕は蔵の中であった試練とその結果について説明した。勿論先程見た夢の様なものについては割愛した。
「・・・・という訳なんだ」
「なるほどね、あんたが訳の判らない存在だということが判ったわ」
「知ってそうな人居ないの?」
「そればっかりは戻ってみないと判らないわ」
「取り敢えず鞘探すの手伝って」
「え?ああ、そうだったわね」
僕達は蔵に戻り蔵の中を引っ掻き回す。当然僕は左手しか使えない。
「左手しか使えないってなかなか不便だなぁ」
「もうくっついてるじゃない」
「とれるかもしれないじゃんか」
「そんな事ある訳ないでしょ」
「万が一があったらどうするのさ」
「知らないわよ」
「ん?この木箱の中にあるのは・・・・腕?」
『ああ、それは河童の腕だろう』
「ええ!?河童の腕とかあるの?この蔵!?」
『うむ、この蔵を建てた者が変わり種だったのでな』
「何処でそんなん手に入れるのさ・・・・」
「珍しいから持って行きましょ」
「本物なの?」
「調べればわかるのよ」
「へー、鑑定とか出来るんだ」
「私じゃないわよ、知り合いにそういうのに詳しいのが居るの」
「もしかして本物の河童とか?」
「ええ、そうよ」
ふざけて聞いたら本当だった。
『それより我等の鞘を・・・・』
「ん?ああ、ごめんごめん」
「鞘ってこれでいいかしら?」
『それともう一つ必要だ』
「もしかしてこの変な形の鞘みたいなの?」
『おお、それだそれだ我は両刃なのでな、その形でなければならんのだ』
「そういえば手に掌打打ち込んで止めた時に背中斬られたけど、どうやって斬ったの?」
『我は多数の刃が妖力を使って連なって刀身を形成しておるのでな、鎖鎌の鎖を叩いた様な動きをするのだ』
「打ち付けた所を中心に曲がるって事?」
『そんな所だ』
「ふ~ん、まあ使って感覚で覚えるのが早いかな」
「習うより慣れろね」
「桜子は武器とかは使わないの?」
「基本的には素手でやるわね」
「まあ指突で鎧が貫けたら必要ないわな」
「身軽な方が有利なんだのも」
「それもそうか」
「取り敢えず刀を回収しましょうか」
僕は床に転がっていた刀を拾い鞘に納める。
「しっかし何で鞘は斬れないんだろうな」
『その鞘には妖力が込められ異様な強度を持っているのだ』
「妖力ってそんなに凄いのか」
「妖怪だけの特権だもの」
「鞘も見つかったし、今日はもう休もう。疲れたもう無理動きたくない」
「私は今すぐにでも出発したいのだけれど・・・」
「だって僕二刻も戦ってたんだよ、身体中が痛い」
「あの間ずっと打ち合ってたっていうの?」
「じゃなきゃこんなに疲れてないよ」
「それもそうね」
「と言うわけで、お休み~」
布団を敷き直すと横になり眠りについた。
なんか話の終わりかたが寝るか意識を失うかばっかりな気がするのは気のせいだろうか?