別れと出会い
何気にサブタイトルを考えるのに時間がかかってたりする。
僕は母さんの遺体を庭の松の下に埋めた。僕はそこにしゃがみこんだ。
「母さん、今までありがとうございました。あの世で見守っていて下さい」
僕は母さんとの別れを済ませ立ち上がる。
「別れの挨拶はすんだ?」
「一応ね、本当はもっとちゃんとしたものをしたかったんだけど今は時間が無い」
「そうね、それで妖刀は何処にあるのかしら?」
「わかんない、今から探すつもり」
「そう、わからないのね・・・・・・えっ?わからないの!?」
「うん、あるっていうのは聞いてたけど何処にあるかは知らないんだよね」
「目星は付いてるの?」
「いやまったく」
「これは長丁場になりそうね・・・」
ひとまず家に戻り、取り敢えず家中の畳を返す。バタン、バタン
ドタタ!
「ちょっと、荒すぎない?」
「いちいち元に戻してたら時間がかかる。第一どこまで調べたか判らなくなるじゃん」
「それはそうだけど埃が・・・凄いわ」
言われて顔を上げて確認してみると、確かに埃で辺りが灰色になっていた。
「うわ、真っ白だ」
「少し換気しましょう」
「そうだね」
僕は見つけた武器類を床に置いた。ガチャガチャジャララララ!
鎖鎌を置くときに凄い音がした。
「ちょっと、何これ、何でこんなに武器類が豊富に揃ってるわけよ。武家屋敷じゃないんだから」
「これはじっちゃんが敵を何時でも迎撃出来るようにしとけって言って畳の下に仕込んでたやつ」
「貴方のお爺さんはお尋ね者か何かだったの?」
「さあ?そうかもしれないし、違うかもしれない」
「貴方の家系に謎が多すぎて頭痛がしてきたわ・・・・」
「僕はもうそれについて考えるのを止めたよ」
「ねえ、もしかして他の部屋もこんな感じなの?」
「ん~、多分」
「と、取り敢えず畳を外に出しましょうか」
「そうだね、部屋に置いてると邪魔だもんね」
僕らは畳を外にポイポイと放り投げていく。投げた畳はぼろぼろになったためもう使えないだろう。
「この部屋で最後かしら」
「後は押入れとかかな」
「・・・・・まだあるの?」
「うん、天井裏とか床下とかもあるはずだよ」
「もう疲れたわ。畳が思ったより重いんだもの」
「物の化も疲れるんだ」
「あたりまえでしょ、物の化だって疲れるし、お腹もすくわ」
「へー、じゃあ食べないと死ぬの?」
「それは、それぞれね必要無いのもいるわ」
「取り敢えず粗方探し終えたけど、どれが妖刀なんだろ?」
「それなのよねー」
僕らは目の前に並べた百近くの武器類を見てため息をついた。
「うーん、妖刀って言う位だから妖力とか妖気みたいなの出てないの?」
「さっきからやってるけど全く判らないわ」
「じゃあ、この中に妖刀は無いの?」
「そうじゃないわ、むしろ全部から出てるから困ってるのよ」
「それって、全部妖刀って事になるの?」
「でもピンとくるものが無いのよね。他に隠してありそうな所に心当たりはない?」
「・・・・蔵探す?」
「探してないのそこくらいだもの、探すしかないじゃない」
「・・・・鍵探してくる」
「そこから!?」
それから四半刻ほどしてようやく鍵を見つけた。
「なんで糠坪の中に隠してあんのよ・・・」
蔵の扉の鍵をあけ扉を引いたが微動だにしない。
「・・・・おっもぉ!」
「何やってんのよ・・・・っておっもい!何よこれ!絶対人間が使う扉じゃないでしょ!」
二人係でようやく扉は軋みながら動き出した。ギギギギギギ、ガリガリガリガリ、ついでに地面も擦っていた。
「う、腕が・・・・」
「もー無理、腕上がんない」
「・・・・一旦休憩しない?」
「そうしましょうか・・・」
僕は夕飯の用意に取り掛かった。
「あんた料理できるの?」
「人並みにはね。あ、薪が無い・・・・割らなきゃ・・・はぁ」
「私が割ってきてあげるわ」
「お願い」
その後割ってもらった薪に火を着け味噌汁をつくりそのまま麦を炊き、坪から糠漬けにした大根を取り出し輪切りにして並べる。
「以外とマトモ」
「料理位誰だって出来るでしょ」
「えっ?そ、そうね・・・」
「もしかして出来ないの?」
「は、早く食べて続きをするわよ」
言うが早いかさっさと食べてしまった。
「ごちそうさま!」
「えっ、食べるの早!」
「そろそろ日が暮れるから急がないと」
「そういえば君の名前知らないんだけど」
「ああ、言ってなかったわね。私はあそこに封印されてた群隊霊の筆頭の桜子よ」
既に空にはちらほらと星が瞬いていた。一応行灯に火を着け蔵に入るとそこに目的の物がニ本床に突き刺さっていた。
「・・・・絶対あれよね」
「・・・・あからさま過ぎない?」
「でも妖気がビンビンと伝わってくるわ」
「じゃあ、回収しますか」
しかし、簡単に回収させてくれるはずもなく、刀に触れようとした瞬間刀が喋った。
『汝に我々を持つ資格があるか試させてもらう!』
そう言いニ本の刀は浮き上がり後ろにあった甲冑の手に納まってしまう。刀を受け取った甲冑が立ち上がった。
「ええ!?襲ってくるの!?」
「康太!これを使いなさい!」
桜子が投げてきたのは一本の刀と何故かそれに巻き付いた鎖鎌だった。その二つを受け取った瞬間蔵の扉が閉まった。どうやら逃がす気は無いらしい。
「やるしかないか」
僕は刀を腰に差し鎖鎌を構えた。