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目覚めの悪い朝

誤字脱字等があればご報告下さい。

僕は、朝日に射されその眩しさにより目を覚ました。まず、目に入ってきたのは見慣れた天井だった。体が酷く重く、思うように動かなかった。体の節々が痛い?


「う、うぁ~、ここは?家?なんで?」


目が覚めた時何故か僕は家の布団の中に居た。するといつもどうり布団の中に一匹の狐を見つけた。


「う~ん、やっぱり僕ん家だ。どうやって帰ってきたんだろ?」


狐を抱き抱え頭を撫でながら疑問を口にした。しばらく現実逃避気味に狐をモフモフしてると母が起こしにきた。


「そろそろ起きなさ~いって、もう起きてたのね」


「おはよう母さん」


「遅れないようにしなさいよー」


「あーい」


気の抜けた声で返しながら狐を放し、小太刀を手に取ろうとして枕元に無い事にようやく気がついた。


「あれ?無い。仕方ない帰る時に探すか・・・はあ」


一旦小太刀は諦め居間へ向かう。すると既に朝食が用意されていた。


「いただきます」


朝食は味噌汁と白米に漬物にした野菜だ。

朝食を食べ終えると、寝室に戻り畳を返し小太刀の代わりの武器を探すがしっくりくるものが無く、庭に有った薪割り用として使っている鉈を持って行く事にした。

じっちゃん曰く、この鉈は兜ごと相手の頭を叩き割る為の物らしい。最も兜ごと叩き割るには相応の力が必要だが。

僕は鉈に布を巻き懐に隠す。


「これで良し!」


他に持って行く物は特に無いのでそのまま出発する事にした。


「じゃあ、いってきまーす」


「はい、いってらっしゃーい」


寺子屋に行く為に山を越えている途中に何度か視線を感じたが、

探しても見つからないので、走って撒く事にした。山を越えた辺りから気配は無くなっていた。どうやら撒けたらしい。


「なんだったんだろ?追われるような事したかなー」


暫く考えてみるが全く心当たりが無い。考えても分かりそうに無いので、考えるのをやめた。そうこうしている内に寺子屋に着いてしまった。


「お、康太が生きてるって事は封印できたのか?」


「まあ、なんとかな」


「はぁ、一時はどうなる事かと思ったぜ」


「勝が原因じゃん」


「まあ、終わり良ければ全て良しってな」


そう言う勝にはやはり反省の色は伺えない。


「はぁ、もういいや」


僕は勝を反省させる事を諦めた。その後は何事も無く寺子屋で授業を受けた。寺子屋から家に帰る前に要石の様子見がてら小太刀を探す事にした。

要石の有った場所に着いた時、僕は周囲の惨状に驚いた。辺りの地面は抉り取られ、木々は折れたり砕け散ったりしていた。


「なんだよ・・・これ・・・」


思わずそう呟いた。記憶にある景色と余りにも違っていた。


「あんた、昨日自分がしたこと覚えて無いの?」


突然話掛けられ反射的に振り返るとそこには、いつの間にか不機嫌そうな少女がいた。


「え?君は?昨日の事を知ってるの?」


「知ってるもなにも、戦った相手じゃない」


少女はそう言うが、そんな記憶は全く無いのである。


「戦ったってどういう事?」


「そのまんまの意味よ。ホントに何も覚えて無い訳?」


「影みたいなのに攻撃された辺りからの記憶が無いんだ」


「う~ん、確かにあの後は人が変わったみたいに凶暴になってたし、人間の動きじゃ無かったわね」


「あんた、もしかしてもののけの類い?」


「いや、人間のはずだけど・・・」


「取り敢えず昨日あの後何があったのか教えてくれる?」


「しょうがないわね・・・」


その子の話によると、僕は彼女を吹き飛ばした後、黒い尾を生やし襲いかかったという。その時の僕は木の幹を手刀で切り、拳で砕き、地面を蹴り飛ばしていたらしい。とても人間に出来る芸当では無かった。


「それ、ホントに僕?」


「それに再封印施したのあんた以外に誰が居るのよ」


「それもそうか」


「で、記憶が無いのなら何でここに来たの?」


「そうだった!小太刀、小太刀」


言われるまで、すっかり忘れていた。恥ずかしい限りである。

小太刀は要石のすぐ脇にきちんと鞘に納まって落ちていた。


「あったあった」


小太刀を回収し、懐に隠しておく。


「ん?てことは君はあの腕の一部なの?」


「そうよ」


「なんで本体封印したのにここに居るの?」


「・・・・こっちにも色々あるのよ」


「ふ~ん、じゃあもう帰るね」


特に用も無いのでそのまま踵を返して帰ろうとする。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!こっちには聞きたい事が山ほどあるのよ!」


「え~、日も落ちてきたからまた明日ね」


「?何言ってるの?まだ明るいわよ」


「そろそろ帰らないと明るい内に家に着けないからね」


「え?まだ日没まで半刻ほどあるわよ」


「山越えるからギリギリなんだよね」


「朝は走ったらそんなにかかって無かったじゃない」


「なんで今朝の事知ってるの?」


その瞬間少女はしまったという様な顔をした。


「え、え~っとそれは・・・」


「まさか、朝から僕をつけてたのは君?」


「だったらなによ」


「何でつけたの?」


「あんたの力の秘密を探る為よ」


「秘密もなにも僕は人間なんだけどなー」


「あんたみたいな人間が居るか!」


「探るだけ無駄だと思うよ」


「・・・家系図を見せてくれるかしら?」


「そればっかりは母さんに聞いてみないとなんとも言えないよ」


「そ、じゃあついてくわ」


そんなこんなで家まで来てしまった。一体なんて説明すればいいんだろう。僕が言い訳を考えてつく前にその子は戸を引いた。


「あら?あなたはどちら様?」


「それは言えないわ。取り敢えず家系図を見せて貰えるかしら」


「なにが取り敢えずなのかしら?」


空気が張り積める。まさに一触即発といった空気だ。矛先が向かない内に逃げ出そうとした。が、そんな事が許されるはずもなく肩を掴まれる。うん、こうなる事は分かってた。ならば、残された選択肢は一つ!手を振り払い逃げようとしたが一瞬で組伏せられた。


「ちょ、折れる折れる。もう逃げようとしないから離してー!」


「じゃあ、事情を説明して貰おうかしら」


今は母さんの笑顔が怖かった。下手な事を言えば殺されそうだ。

しかし、なんて説明しろと言うのだ。人間ですらなく、殺し合った相手なんて言っても信じてもらえないだろうが一応してみた所


「あら、そうだったの」


あっさり信じてしまった。母よ、それで良いのか。その後、家系図を見た少女はというと、家系図に目を通すなり、信じられない物を見たかのような顔をして、


「こんなことがあるなんて・・・!」


そう呟き闇の中へ消えていった。


「い・・・一体なんだったんだ」


「あら、あの子は帰ったの?」


「家系図見るなり走って行ったよ」


母さんは何事も無かったかの様に夕食の鮎の塩焼きを2つ作っていた。最初からこれ以上作る気は無かったらしい。夕食を食べ終え、食器を洗った後、行灯の火を消し床に就いた。

翌日、あの子と一緒に行動していたのを色んな人に問い詰められたのはまた別の話。

そして、僕はあの子の名前知らない事に今更ながら気づいた。

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