大胸筋の愛し方。
筋肉は大事だ。人間の動作、全てに筋肉が必要となる。立ち上がる。立位を維持する。歩く。全てに筋肉の力を使う。
だから私は筋肉をこよなく愛し、筋肉を誰よりも鍛えている。
私はまず大胸筋を鍛える為にコンビニで線香を買う。
無数の線香が束になっているやつだ。それを、全身に筋肉を膨張させてスーツを、ワイシャツを、肌着にしているランニングシャツを、ズボンを、ブリィィィッフ(ネイティブな発音)をコンビニのレジで弾き破り、私が私の筋肉で最も愛する大胸筋に挟む。
そして、それを唖然とした店員の前で大胸筋の力だけで折る。
筋肉は見られる事で美しくなる。ほぉら大胸筋、お前は見られているんだ、恥ずかしいだろう? だが、お前は美しいんだぞぉ。
頬を染めて恥ずかしそうに俯く愛い大胸筋を優しく撫でてやる。
次は、アイスの冷凍庫に入って持参した荒縄で手早く自らを亀甲に縛る。
ガリガリくんを自分から縛って自らを戒めるムキムキくんが口だけで開けて頬張りながら『信長の子孫はのぶなりだから! 信長の子孫はのぶなりだから!』と連呼する。
こうする事で、うっかりさんな大胸筋は『あ、自分は織田信長の子孫じゃないんだ。下天の内にくらぶれっちゃわなくていいんだ』と安堵し、冷凍庫の冷たい風で引き締まりと弛緩の動作を産んで、形の良い大胸筋へと成長する。
ここまで鍛え上げるのは、恐らく世界でも私だけだろう。
こうしてまで鍛えたらどうなるか? 答えは簡単だ。
「14時17分、営業妨害、及び猥褻物陳列罪で現行犯ね。はい、手錠掛けるから」
ほらね?