5 自殺
朝になり、目覚ましに起こされる。制服のままで風呂も入っていなかったのでとりあえずシャワーだけでも浴びようと思い、階段を降りた。そして玄関の前を過ぎようとした時、それはそこにあった。
「――母さん!」
私は横になって倒れている母に駆け寄った。
彼女は既に冷たくなっていた。
玄関はひんやりとしていた。秋は夏の熱だけでなく、彼女の熱まで奪ってしまったというのか。
「あああ……」
嘘だろ。
私は震える手で救急車を呼び、そのままいつもの病院まで一緒に送られた。
呆然としている時、彼女が視界に入った。あの時の金髪少女だ。
「あ」
彼女もこっちを見て目が合う。
そしてこっちにやってきた。
彼女は微笑んだ。私はその表情にややぎょっとした。
「こんにちは」
「……こんにちは……」
バイバイ、と彼女はそのまま手を降って消えてしまった。わけがわからない。
両親を一度に失った、のかもしれない。父の方はもう見当もつかなかった。
母の死因は自殺だった。一体なぜ自殺したのかわからない。
私の周りの人が消えていく。
急に、音沙汰なしに。
秋という季節が全てをさらって行くように、私の周りから人は姿を消していく。