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1 イントロダクション
秋の空を見つめて、私は口に焼酎を運ぶ。味も香りも何も感じない。ただ、水を飲むようにひたすら口にその液体を注ぎ込む。
開け放たれた窓からは、絶えず蟋蟀の鳴き声と、家の裏に在る浄化槽の機械から発せられるごうごうという音が流れ込んでくる。
グラスをテーブルの上に起き、ややふらつく体を頼りなく細くなった腕で支える。
そのまま廊下を歩き、トイレに向かう。そしてただ飲んだものを吐き続ける。
一体全体、どうなっているのだ。
私は私に問う。答えはない。タンクの中から水の滴る音が一つ、私に同調したのみであった。