表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生魔眼持ち  作者: 山山
第二の人生
5/21

5

今日もパチッと目が覚める。

この世界では今は何時だと慌てて時計を見ることもない。

実にいいことだ。とはいっても自分は前世からピッタリ6時に

起きるのでそんなことは滅多なことではなかった。


さて、今日は魔法を教えてもらえるという。

いまだ得体のしれないこの魔眼よりも心躍ってしまうのは仕方のないことだろう。

自分はやはり男の子らしく前世から剣と魔法の世界には憧れがあった。

今、図らずもその体現者となったわけだ。

魔法というとやはり火の玉を飛ばしたり、爆発魔法でモンスターを

木端微塵にしたりできるのだろうか。

今は自分がモンスターだが。

といっても見た目はさほど人間と変わらない。背中に黒い羽が生えている程度だ。

鏡がないので触った感じでは、だが。


歩いて部屋を出ると、すでにメイドが部屋の外に立っていた。

いつも通りである。メイドはお湯につけたタオルをこちらに手渡して

調子を訊いてくる。

その言葉にいつも通りだと答えながらいつも通りダイニングに向かう。

上を見ると煌びやかな装飾品が並び、シャンデリアのようで少し違う

光源が長い廊下に光を射す。


まるで城だな。

それにしては従者が少ない気もするが。

などとくだらないことを考えながら目的地に着く。

メイドはテーブルから少し離れて食事が終わるまで立っているらしい。

雇い主と同じ席で食事を共にすることなどありえないとのことだ。

そういうものなのかと始めは思ったが、従者1人のこの家では

なにか違和感が残る。


朝食はいつも母が作っている。ここにはシェフなどいない。

メイドの分も合わせて4人前を作る。

出てくるものは普通で、少し想像してしまっていたような

緑や紫のスープや何かの目玉や蟲が煮込まれていたりということもなく、

普通の朝食といった感じで、

卵を炒めたものにサラダ、牛乳にパンである。

庶民派だ。

訊いてみると、両親ともに食事はさほど必要な種族ではなく、

料理を作らなくても、生物ならば何を食べても余すところなく分解されるらしい。また周囲の魔力によって自己でエネルギーを作り出すこともできるという。

それでも料理を作って食べるのは、楽しいからということだ。


別に食べる必要がないだけで、娯楽としての効果は十分にあるということらしい。

その話を訊くまでは尿意や便意を催すことがないのが疑問だったがそれを聞いて

安心したものだ。だがトイレは複数個ある。来客者用と今はメイド用だ。

食事時にそのようなことを考えるのもアレだが、そんなことは気にせずどんどん

口へと運んでゆく。


「ネイトよ、魔法が知りたいようではないか」


父の声を聞き、口の中の物を飲み込んでそちらを向く。


「今日は吾輩が教えてやろう。ミトロンにも教えてもらうといい」


ミトロンとは母の名前である。父はエビルという。


「はい。ありがとう…ございます」


その後、父はご機嫌でまずは闇魔法から教えるか

空間魔法から教えるかと母に相談していた。

母は苦笑いで受け答えしていた。

自分の認識通り闇や空間といったものはかなり難しいようだ。


そしていよいよ実際に見せてもらえるという。

4人揃って外に出る。

外に出るのは初めてのことだ。この世界に来てから

ずっと家の中にいたが外に出てみると改めてこの家の広さが分かる。

城のようだと表現したがもしかすると本当に城なのかもしれないな。

しかし周りは森が広がるばかりだ。

だが、それでもなおこの家は存在感を放つ。

前世では日本の城なら実際に見たことがあるが、それを一回りほど小さくした

ような印象だ。


「さて、今日は我が息子が初めて魔法に触れる記念すべき日だ。

しょぼい魔法では格好がつかん。よく見ておけよ」


そういって無駄に広い、広すぎる庭を踏みしめて歩いてゆく父に続き、

周りに邪魔になるものが何もない場所まで歩いていく。


「さて、このあたりでいいか。ミトロン。周りを結界で囲んでおけ。

家が燃えてしまってはかなわんからな」


「わかりました」


燃えるということは炎を出すのだろうか。

やっぱり火の玉なのか。詠唱はどんなものなのだろうか。

自分にも使えるだろうか。

様々な思いはあるが、ひとまずそれを抑えて目の前で起こる奇跡を見逃さないよう

注意して観察をする。


「ゆくぞ!!インフェルノ」


叫ぶが早いか父の周囲10メートルは炎で包まれた。父ごとだ。

綺麗に円の形で炎が燃え続けているのは結界というもののせいか。

熱も感じない。

そして待つこと数十秒。未だ父の姿は無く業火が半径10メートルを

燃やし続ける。


「お父さん?」


何かおかしい。父は本当に無事なのだろうか。

母を見てみると母はまた苦笑いしつつもその様子を見ていた。

え?えっ?本当に大丈夫なのか??


しかしその不安もすぐに炎と共に消え去った。

父であるエビルの得意げな笑みが見えたのだ。

どうだすごいだろう。顔にはそう書いてある。


母を見ると同じく母もこちらを見た。

二人で笑っていると父も「ワハハハ」と笑いながらこちらにきた。

先ほどの燃えた跡は燃えカスも残さず蒸発したようだ。

炎は酸素がなくなって消えたのか、魔法自身の効果で消えたのかは分からない。


「さて、見ていたか?なら今からやってみろ」


母を見ると笑顔で父の頭をはたいていた。

父の頭は地面にめり込んだ。

悪魔の世界はぶっ飛んでいる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ