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異世界転生魔眼持ち  作者: 山山
第二の人生
4/21

4

ネイト、今の俺の名はそういうらしい。

どうも他人事なのはやはり前世の記憶がはっきり残っているからだろうか。

父も母も、どうも他人のように感じる。この世界における家族は2人と

メイド。それだけなのに。


今の俺にはすることがない。ここにはテレビもゲームもパソコンも

カラオケも、野球もサッカーも何もない。

絵本もそんなに興味を惹かれるわけでもない。

せいぜい眼の力の制御だ。この世界で自分が特別だと感じられる。

心が躍る。この眼は自分の心の拠り所なのか。


「ネイト、どうしたのですか?」


俺が眼に集中していると母は、俺を気にして隣に座ってくる。

どうやらこの眼は俺が目覚めたその日に現れたらしい。

そしてそれは魔眼の常識でもあるという。

ある日突然目覚めるものもいれば生まれつき持っている者もいる。

俺は前者だっただけの話だ。

しかし母は気にしている。どうやら様子がおかしいらしい。

人格が塗り替えられたのだから当たり前の話だ。

基本的に細かいことは気にしない民族らしいのでそこまで深刻には

考えてはいないようだ。

自分は子供のように無邪気には過ごせない。

子供は遊ぶのが仕事というが、突然子供になっても何をすればよいのか

分からない。このような環境では友達もできない。

簡単に言ってしまうと暇なのである。


「僕…暇…です」


いまだ上手く話すことはできない。しかし言いたいことは伝わったようだ。

母は、本を読んでくれるらしい。まだ子供向けの絵本だ。しかし、この

世界の魔族という種族は少し人間より知能が高いらしい。ある程度の

筋道がある物語のようなものを読まれた。


「あるところに1人の魔王様がいました。魔王様は自分の魔法に自信を

もっていました。でも、魔王様は1人でした。王様なのに1人でした。

魔王様の国はバラバラでした。魔王様は1人で国を回りました。

そして仲間ができました。魔王様はこの時初めて本当の

魔王様になりました。そして、人間に攻められ死にました」


「それから仲間はその国を守ろうとしました。

魔王様の復活を望みました。魔王様は復活しませんでした。

みんなバラバラになりました。今度はみんなが一人になりました」


昔話か。その国とはここのことだろうか。

自分は外の世界を知らない。未だにこの国はバラバラだということなのか。

そして魔法はほんとうにあるのか。


「国、今、バラバラなの?」


「そうですね。この時から少しずつバラバラになって、今は国と言っても

殆どが勝手に行動しています」


「魔法は…あるの?」


「はい。私は上手く使えませんが、お父さんは使えますよ」


あるのか。やはり、魔法が。


「僕も?」


「はい、あなたはいずれ魔王となるでしょう。今までで一番の魔王に」


母はにっこりと笑う。

魔王か。この国ではやはり誰もが憧れるのだろう。そして仲間同士争い、

バラバラになり、最後は人間に殺される。それは嫌だな。


「僕、旅がしたい」


母は少し驚くと自分を胸の中に抱く。何が何やら分からずにそのままに

していると少し安心感が生まれた。自分はこの世界にきてからずっと一人だ。

しかし味方もいたらしい。


「あなたはやはり私とあの人の子供ですね」


母は再びにっこりと笑う。


「明日は魔法の本も読んであげます。いいですか?」


「うれしい」


上手く言葉を話せないがこれだけで十分伝わったのだろう。

母は自分をさっきより強く抱いた。

明日からやることが増えそうだ。

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