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自分は朝の目覚めの瞬間が好きだ。
そして、いつもパチっ、と目が覚める。
それは3歳児の体になった今でも同じらしい。
今の状況は両親に挟まれる形で大きなベッドの上で寝ている。
このことからわかることはこの家が金持ちか、もしくは
この世界の、少なくともこの地域の生活水準が元の世界より
遥かに高いかのどちらかということだ。どっちにしても悪い
話ではない。前世ではお金に苦しめられたものだ。
できればもう苦しみたくはないと思う程度には。
「お目覚めですかお坊ちゃま」
そしてベッドの他にもこの家の裕福さを表す物があったようだ。
メイドである。さすがにどの家庭にもメイドが付いているという事態は
あり得ないであろう。メイドが人間であればだが。
でも見たところ普通の人間である。別に背中にプラグやらネジまきが
あるわけでもない。
そうして考えているとメイドは顔を近づけ表情を覗き込んできた。
「どうしたのですか?」
ちなみに自分は話している内容を理解することはできるが話すのは
少し難しいという状態だ。いざ口に出すとなるとスラスラ出てこず、
頭の知識を経由して出てくるといった感じだ。
聞いているときは頭の中でうまく変換されるのだが、これも少し慣れて、
勉強すれば大丈夫だろう。むしろ今、すでに言葉が理解できること自体
ありがたいことだ。
「何も…ない…、大丈夫」
「そうですか、…少し………、心配で」
知識にないことはまだ上手く変換されないが
最近様子がおかしいといったことを話したのだろう。
「お腹…減った」
「もう少しでできるので着替えてお待ちください」
着替えの服はすでに用意されていていちいち服を脱がせて着替えさせて
くれた。しかし、このメイドはどうも子供の扱いに慣れているわけでも
ないし、乳母というには若すぎるし何よりここには同年代の子供は
いなさそうだ。なぜこの人が世話係なのだろう?
その疑問も時と共に解消されるか。
しかし、自分は余計なことにばかり疑問をもってしまう。
これは前世の癖だ。おかげで助かることもあれば厄介なこともあった。
最もそのせいで死ぬことになったのだから最終的にはマイナスということ
になるのか。いや、それも偶然か。
疑問を持って行動しなければさらに早く死が訪れていたのかもしれない。
そしてそれは知りようのないことだ。今はこのままでいい。
さて、出てきた朝ごはんはやはり豪華だった。
親子揃っての朝食だ。
当たり前だが使用人は同じテーブルを囲むことはない。メイドは黙って傍に
控えている。
そしてここで、大変なことが分かった。
両親が人間では無いということだ。いや、まだそう決めつけるには早いかも
しれないが少なくとも自分の知る人間はメイドのように頭に角など生えては
いないし背中に翼もない。しかもそれはとても天使などという崇高なもの
には見えない。例えるなら父は悪魔、母は堕天使と言ったところか。
角があるのは父だけである。
悪魔と堕天使と言ってもその態度までがそうではない。
何が楽しいのか自分が食べ物を頬張る姿を見てうれしそうに2人で
微笑んでいる。
昨日も感じた、あの気楽さは人間ではないからなのか。たしかにメイドが
心配していたのはメイドが人間だからということで頷ける。
とりあえずはその認識でいいだろう。
ということは、人間は魔族の下位にあるという認識なのだろうか?
いいや、それも分からん。ただ単に家が金持ちの魔族なだけかもしれないし
この国がそういう認識なだけかもしれん。そもそも国というものがあるのか
さえ確認していない。
そこで考えるのをやめて口の中で主張を続ける美味に意識を切り替える。
普通に人間と食べるものは変わらなかった。かなり安心した。