第3話 レッツ就職活動in異世界
ヒロインを出すといったな、あれは嘘だ。
やって参りました、ザインの町。
とはいってもまだ門の外なんですけどね!
なんでもザインの町は人族の国ヒュム皇国で7番目に大きな町らしく入るのに身分証の提示が必要らしい。
でも7番って微妙じゃね?
とはいえルインザムに来てから初めて人の多い場所に来た。そりゃもうファンタジーな光景ですわ。
ジーパンにTシャツ姿の俺が浮きまくるというね。町には入れたら服買おう、それっぽいの。
審査の列に並ぶ人の中にはクリストフさんの話にも出ていた人以外の種族もそこそこ混じっていた。
犬耳だっ!犬耳が居る!!おっさんだけど……
渋メンに犬耳がちょっとカッコイイ。
「次!そこの変な格好の!」
おう、俺の番か。変な格好とか言うな。
俺は門番に呼ばれ身分証のタグを差し出す。
「名前はユーマ……放浪者か。町の中ではくれぐれも問題ごとを起すなよ。入ってよし。」
どうやら審査は合格らしい。後でクリストフさんに聞いたところ職業が咎人や盗賊でない限り審査は通れるらしい。
町の中ほどまで進んだあたりでクリストフさんが馬車を停め切り出した。
「ユーマさん、私は商業ギルドで明日の手続きがありますのでこの辺で。」
「そうですか、お世話になりました。明日市の時にクリストフさんのお店にも行きますね。」
クリストフさんは営業向きの笑顔でお待ちしていますね、と言い去って行った。
いい人だったな。でも店に行くと言ったのになにを扱っているのか聞くのを忘れた。
俺はあらかじめクリストフさんに聞いておいたお勧めの宿に向かう。食事つきでできるだけ安い所という条件で勧めてもらったので手持ちのお金でも足りるだろう。
旅の宿、跳ね馬亭。ここが今晩の宿だ。ルインザムに来てまだ1日も経っていないが、なれない馬車の旅やゴブリンとの戦闘でくたくただ。
受付に行くと若い人族の兄ちゃんが笑顔で迎えてくれた。
「跳ね馬亭にようこそ!宿泊ですかい?」
良い笑顔だ。さわやか。
「えーっと、1泊食事つきでお願いします。」
「はいよ、食事つきね。それじゃあ、ひとり1泊食事つきで銀貨5枚ね。」
思ったより高い。この世界の物価がわからないので本当に高いのかはわからないが所持金の3分の1である。
俺は銀貨を支払うと鍵を受け取る。
「毎度!食事は日が沈んだらできるからね。部屋は階段を上がって突き当りだよ。」
俺が宿に入ったときすでに日は落ちかけていた。後30分もすれば食事が出るだろう。それまで部屋でのんびり過ごそう。
結局そのあとは飯食ってすぐに寝てしまった。次の日からの生活費のことを考える余裕もないくらい疲れていたみたいだ。
その分朝は早く起きることができた。
まずは服をどうにかしないとな。浮いているのはもちろんだがよくよく見ると血の染みと思われるものがところどころに着いている。昨日のゴブリン戦の時に着いたんだろう。
それと今日中にお金を稼ぐ方法を見つけないと明日からは野宿だ。町を回ってお金を稼ぐ方法を模索しよう。
俺は宿をチェックアウトすると市へ向かった。
でかい!人が多い!7番目は伊達じゃないってわけか。
俺はまずクリストフさんの店を探す。30分ほど歩きまわるとあの大柄な商人が見えた。
「おはよう、クリストフさん!」
「いらっしゃいませ、ユーマさん!なにかお探しですか?」
おお、なかなか繁盛しているなクリストフさんの店。扱っているのは雑貨のようだ。
「鞄と服がほしいんですけど……」
昨日からクリストフさんに頼り切りだな、俺。
クリストフさんにお勧めの店を教えてもらい、礼を言って別れる。いつか恩返しをしないとな。
俺は午前中いっぱいを使い、クリストフさんお勧めの店で大きめの革の鞄、麻のシャツ、レザーベスト、レザーパンツを購入する。店の奥のスペースで着替え、荷物を鞄につめる。
さて、これで問題は生活費だ。先ほどの買い物で銀貨8枚を消費したため、残りは2枚。これでは跳ね馬亭に泊まることもできない。野宿を避けるために何としても銀貨3枚を稼がなくてはならない。
俺は町の中心部にあるギルドホールへ向かう。クリストフさんに職を探すならここへ行くといいと教えてもらったのだ。
ギルドホールというのは複数のギルドの窓口を一か所に集めた建物だ。現代日本で言う区役所とか市役所とハロワを合わせたようなものだろう。
中に入ると外よりもさらに賑わっていた。豪奢な服装の商人風、鎧を着けた傭兵風、落ち着いた服装の学者風など様々な人がいた。
とりあえず俺は傭兵風の人たちが多く集まっている窓口に行ってみる。
「開拓者ギルド窓口」「傭兵ギルド窓口」「騎士団採用窓口」
この3つの窓口が集まっているようだ。
さぁ、就職活動の始まりだ……