第1話 ルインザムへようこそ!!
前回のあらすじ
ゆうまはめのまえがまっくらになった。
……あれ?
熱中症か?力が入らない。今日はそんなに暑かったか?考えてみれば暑かったかも知れない。
まずいな……。ここは下宿先で家族は居ない。このままだと孤独死まっしぐらだろう。
「○○大学学生、自宅アパートで孤独死!死因は熱中症!!」とか書かれちゃう。……まずい。
そんなことを考えていると目の前に明るさが戻ってくる。
これなら助けを呼べるか?
俺は携帯を取り出し、凛に電話をかけるが3コールで切れてしまった。
え?ルインザムをやろうとしたことばれた?凛ってばエスパー?
携帯を見てみると圏外になっていた。自分ちで圏外とかやばくない?ここ首都圏だよ?
俺は助けを呼ぶことをあきらめ自力で水分補給をしようと決意する。やはり信じられるのは鍛え上げた己の肉体よ。
これでも高校時代から毎年、夏休み後半にドイツの師匠の所にホームステイし西洋剣術を習っている。今年も行く予定だ。
そんな埒もないことを考えながら体を起こし、立ち上がる。
ここどこ?
トンネルを抜けるとそこは書斎でした。いやいやトンネルは抜けてない。体を起しただけだ。
ここはどこ?わたしは悠馬。自分の名前がわかるから記憶喪失ではないようだ。
改めて部屋の中を見回すと椅子に誰か座っていた。怖っ!まったく気がつかなかったわ……
「また会ったの。陣在悠馬君。」
座っているのはあの細サンタだった。てかなんでか俺の名前知ってるし。俺ポイントカードとか作ったっけ?
「えっと、また会いましたね……えーっと」
相手が知ってるなら俺もこの細サンタの名前を知ってるはず!思い出せ俺の海馬ぁぁぁ!
「ロズウェルじゃ」
そう、ロズウェル。うん、知らなかった。でもよく考えてみれば「ロズウェルのモビルトイショップ」なんだから店主はロズウェルだよね。エリア51出身かな。
「ロズウェルさん、ここはいったいどこなんです?なぜあなたが居るんです?」
ロズウェルは俺に自身の向かいのソファーを進める。
「ここはエントランス。ルインザムへの入り口じゃ。」
あ、悟ったわ。俺は異世界に転生するんだわ。だてにファンタジー(ラノベ)にも手を出してはいない。
「そうですか。ルインザムとはどんなところですか?」
「……順応するのが早いんじゃな。異世界じゃぞ?」
じゃぞ?とか言われてもな。むしろそんな言葉使いだったっけ細サンタ。
「まぁこういう世界が憧れでしたから。家族や凛に会えなくなるのは寂しいけど、頑張って使命を果たします。」
旅立ちを決意する俺。おお、主人公っぽい。
「使命?そんなものは無いぞ?ルインザムには魔王も暴君もおらんでな。魔物こそいるが、人間が束になっても勝てないというほどの魔物は少ない。」
え?こういうのって普通、「魔王を倒してください勇者様!」的なノリなんじゃないの?
「で、ではなぜ俺はこの世界に呼ばれたんです?」
「この世界は君を呼んでなどおらんよ。君がこの世界を求めたのじゃろ?」
そうだった。ルインザムの箱を開けたのは俺だった。なんだよルインザムの箱ってラプ○スの箱かよ。いやパン○ラか。
「そう、ですね。確かに俺は自分の意思でここに来たようです。」
「理解したか。優秀じゃな。それでは転生の準備に入ろうかの」
「転生の準備?」
準備って何するんだ?一回死ぬとか?細サンタにやられんのは嫌だな。
「おぬしのステータスを決めるんじゃよ。容姿は変えられないからの。」
容姿は変えられないらしい。つまり西洋風イケメンに転生してモテモテライフは駄目らしい。
「変えられるのは転生特典のボーナススキルだけじゃ。ルインザムの世界にはスキルというのが三種類あっての。人が生まれ持っているスキル、先天性スキル。人が生まれおちた後に努力によって身につけられたスキル、後天性スキル。転生者のみが有するチート、ボーナススキルの三つじゃ。」
良かった。転生者にボーナスがあるらしい。これならきっと食いっぱぐれることもないだろう。
「ボーナススキルはどんなものがあるんです?」
細サンタが言うにはボーナススキルには以下の種類があるらしい。
アイテムドロップ率ブースト15%~50%
換金率ブースト10%~50%
ステータスブースト5%~25%
鍛冶成功率ブースト5%~20%
錬金成功率ブースト5%~20%
どうやらパーセンテージは転生後ランダムで決まるらしい。でも無いよりは圧倒的にましか。
「ボーナススキルは一度定めたら、変えることはできぬ。よく考えることじゃ。」
そういうと細サンタは机で何か書き物を始める。
うーん、どうするか。とりあえず腕っ節が強ければ職にも困らないだろう。鍛冶や錬金はどんなものかがはっきりとはわからないので却下。となるとアイテムドロップ率か換金率かはたまたステータスか……
ここは無難にステータスブーストにしておこう。
「決まりました。ステータスブーストにします。」
細サンタが顔を上げる。
「変更はできんが、本当にいいんじゃな?」
やめろよ、不安になるだろう。
「は、はい。これで行きます。」
力こそ正義!可愛いは作れる!ってね。関係ないけど。
「では、これを。このタグはルインザムでの身分証じゃ。」
細サンタがドッグタグみたいなのを渡してくる。だがドックタグとは違って手首につけるもののようだ。
「これにて準備は終わりじゃ。ユーマよ、ようこそルインザムへ。」
また目の前が真っ暗になる。
だがさっきと違って体の自由は聞くようだ。とはいっても動いたって仕方ない、俺は浮遊感に身を任せる。
目の前に光が戻ってくる。ついたようだ。
……ここがルインザム。終わらない剣と魔法の世界。
うん、ここがルインザムかー。立派な森だなー。木々が青々としている。
とりあえず町に行こう。っと、その前にスキルを確認しておくか。
俺は手首のタグを見る。
ユーマ 放浪者
先天性スキル 命名 騎乗
ボーナススキル 経験値ブースト ステータスブースト25%
後天性スキル 両手剣術LV10
ボーナススキルは25%か、幸先はいいようだ。それはいいんだけど先天性スキルの使い道がわからん。両手剣術はいいとしても、命名と騎乗がわからん。使ってみるか。
俺は頭の中で命名と念じる。
(対象の指定をしてください。)
こいつ脳に直接!って言ってる場合でもないか。細サンタも魔物は出るって言ってたしな。
俺は近くに落ちていた手頃な木の棒を拾い、再度命名と念じる。
(なんと名付けますか?)
こいつ脳に以下略。とりあえず武器代わりに使うから……エクスカリバー!
あれ、何も起こらない。あ、木の棒にエクスカリバーって書いてある。
えぇぇぇぇぇぇぇこれだけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
やっと異世界行きました。前置きが長すぎたかな。
プロローグで感想をいただきちょっと舞い上がっております。
うれしいね、感想!